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りわ子さん

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性別 女性
将来の夢 旅三昧
座右の銘 浮世は夢よただ狂え

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眠り男

16/03/25 コンテスト(テーマ):第104回 時空モノガタリ文学賞 【 映画 】 コメント:0件 りわ子 閲覧数:705

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こんなはずではなかった。
初デートなのに・・映画館の椅子に座った途端、彼はずっと眠っている。
私の肩に頭を乗せて。
スヤスヤスースー寝息が聞こえて来る。
気をつかって、若い男が好きそうな洋画のアクションものを選んだのに・・

 整髪料の鼻をつくような人工的な柑橘の匂いに、頭がクラクラする。
服も髪もおしゃれに決めてきてくれたのに、なぜここで爆睡する?
初デートなのに緊張感ゼロ?
私のこと、あんまりに興味ないのね。
 
 そりゃ、ハンバーグランチはボリューム満点でおなか一杯になった。
おごってくれて嬉しかったけど、この映画代は私が二人分払ったよね。
ハンバーグランチより、映画代のほうが高いんだけど。
きっとバイトで疲れてるのよね。
私との初デートで緊張しすぎて疲れたとか?

 スクリーンの中ではマッチョでイケメンの主人公が、凶悪な敵と戦ってヒロインを守っていてカッコイイ。
いいな、あんな強い男の人に私も守られたい。
 
 肩が重くて、もう限界。
激しく肩を揺らすと、さすがに頭を移動させて、真っ直ぐ椅子の背もたれに頭を載せて、再び寝息をたて始めた。
イビキをかいていないのが、せめてもの救いか。
 
 こいつはきっと私が隣で襲われてたとしても、殺されてても気づかないで眠っているにちがいない。
それにしても長いまつ毛だな。
丸顔でカワイイな。
私より顔小さいじゃん。
観察していると、何だかこっちまで眠くなってきた。
 
 そうだいいことがある。
化粧ポーチの中にリキットタイプの黒のアイライナーが入っている。
これ細い筆になっていて描きやすいんだ。

 映画の途中、一人の女性が席を立ち出て行った。
映画が終わり館内の照明がつくと、眠っていた男性は座ったまま、思いっきり背骨を伸ばしたり丸めたりしながら、パチリと目を開けた。
周囲に誰もいないことに気づき、驚いて立ち上がり一人映画館を出た。

 ラインの着信を見ると<眠り猫さん、先に帰るね。今日はありがとう楽しかった>とさっきまで一緒にいたはずの女性からの書き込みがある。
「なんだよ、起こしてくれればいいのに。あいつ、先に帰っちまったのか・・」
もやもやした気持ちで繁華街を歩いていたが、何故かいつになく、すれ違う女の子たちが微笑みかけてくれているようで気分が晴れてきた。
 
 電車に乗ってバスを乗り継ぎ自宅へ帰る。
日曜日の夕方は空いていて座れるから好きだ。
男性は眠っていた。


 「お帰り〜早かったのね」母親の明るい声がする。
次に息子の顔を見た瞬間、プッと吹き出した。
「やだーどうしたの、ヒゲ描かれてる。キャッツのコスプレでもしてきたの?」
男性はあわてて洗面所へ行くと、鏡に映る猫そっくりにメイクされた自分の顔を見て愕然とした。
「チクショーやられたー」そうつぶやくと、慌てて猫を思わせるようなしぐさでゴシゴシと顔をこすり、フェイスソープで丁寧に顔を洗うと、ジャージに着替えてリビングのソファーに丸まり深い眠りに落ちたのだった。


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