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百々桃さん

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ようこそ劇場“水族館”へ

16/03/23 コンテスト(テーマ):第105回 時空モノガタリ文学賞 【 水族館 】 コメント:0件 百々桃 閲覧数:508

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時刻は夜の10時。閉館した水族館のバックヤードは、昼と変わらずポンプの動作音が低く響いていた。そこでは作業着姿の男が誰かと話をしているようだった。

「水族館の主役といえば、巨大水槽を悠々と泳ぐサメだ。あんたもそのサメと共に、他の魚が同じ水槽で飼育されているのを見たんじゃねえか? そして疑問に思っただろう、何故食べられないのかって。そりゃあ、血みどろのホラーを見せるわけにはいけないからな。劇場“水族館”の演目は全てファミリー、カップル向けだ。これにはちょっとした秘密があるんだ 」

男は一区切り打つと、上に着ていた作業着を脱いだ。あらかじめ下にウエットスーツを身につけていたようだ。

「魚ってのは案外賢くて、人間のように論理的思考ができると論文でも発表されている。実を言うと発表されたのはごく最近で、俺はずっと前から知っていたんだけどな。まあいい、話を戻そう。この場合の論理的思考というのを簡単に説明すると、“A>BかつB>CならA>C”といった判断ができるということだ。ここでAをサメ以外の魚、Cをサメだとしてみよう。A>C、つまりサメ以外の魚はサメより強いということをサメに理解させることで、サメは自然と他の魚を攻撃しなくなるんだ。もちろん、実際はC>Aなのだから直接戦わせたらダメだ。そう、そこで俺ことBが……、おっと時間だ。せっかくだから俺の仕事っぷりを見ていきな 」

そう言って向かった先の巨大水槽に、彼は飛び込んだ。そこにはサメをぶん殴り、アカエイにビンタされ、イワシの大群にどつき回される男の姿があった。

これも劇場“水族館”の日常である。彼こそが水槽内の全ての出演者を映えさせる、真の立役者なのだ。


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