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デーオさん

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戦国野球(縮小版)

12/08/30 コンテスト(テーマ):第十三回 時空モノガタリ文学賞【 格闘技 】 コメント:0件 デーオ 閲覧数:1479

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先攻【伊達】チーム、後攻【織田】チームの試合が始まった。1回は両チーム三者凡退。2回はチームの顔といえる4番から始まる。伊達チームの片倉は体力気力ともリーグを代表する打者だ。滝川が力を込めて投げた球は片倉の顔面に向かって行った。ああっと固唾を飲む観客、しかし片倉は少しだけ頭を後ろに移動させ、目の前ギリギリに過ぎて行く球を何事もなかったように見送った。片倉は狙った球をじっと待つ。スリーボールツーストライク。さあ勝負球は…… インコースギリギリの球が来た。片倉はすっと後ろに下がりながらその球を叩いた。まるでど真ん中の球を打ったフォームで打ち返した球は投手滝川の顔面目がけて飛んで行く。

咄嗟に顔の前にグローブ出した滝川だったが、衝撃を顎に感じたあとのけぞるように倒れてしまった。球はそのまま二塁手の頭を越えていった。ヒットだ。投手滝川が一塁上にいる片倉をにらみつけながら立ち上がった。観客が拍手を送った。どうやら大丈夫のようだ。

5番の白石が空振り三振。6番原田の叩いた打球は三遊間転がって行く。蒲生三塁手が横っ飛びで捕らえゲッツー狙いで二塁に投げた。片倉がガチャガチャと甲冑の音をさせながら二塁に走って行く。そしてものすごい勢いでヘッドスライディングを見せた。捕球した二塁手が恐怖を感じてよけながら一塁に投げた。一塁アウト。しかし二塁は塁上で捕球していないのでセーフだった。怪我をしたくないと思えば賢明な判断だったろうが、観客が「臆病者!」とやじった。そのあと、伊達のルーキー支倉に三塁の頭を越すヒットを打たれて1点を失ったので、やはり逃げたのは痛かった。

3回裏になって柴田がスリーボールツーストライクからの外角低めの真っ直ぐを思いっきり叩いた。打球は低い弾道ながらホームランとなり、1対1の振り出しに戻った。
    *           *
1対1のまま試合は7回表である。普通のプロ野球は後半の始まりだが、戦国野球は最終回である。打順はチーム唯一の打点をあげた支倉からだ。

アンダースローの九鬼の球は浮き上がってくるように見え、さすがの支倉も空振りをする。ツーストライク。九鬼はどんどん真っ直ぐで攻めてくる。支倉は邪道ともいえる追い込まれてのセーフティバントを敢行し、1塁にヘッドスライディングした。カバーに入った2塁手の柴田の具足をつけた足に支倉の兜がぶつかるガツンという音がした。微妙なタイミングだったが審判はアウト!のコール。

8番茂庭がしぶとくライト前にヒット。観客が沸いた。場内アナウンスの「9番ピッチャー桑折に代わりまして伊達」という声に観客がおおいに沸いた。伊達チームの伊達は代打専門といえる選手だ。

九鬼の投ずる初球を伊達はフルスイング、空振り。捕手がその振りをみて長打を警戒しボール球が多くなった。結局四球、観客が失望の溜息を出す。伊達に代走が送られ1死1・2塁で1番バッター後藤がしぶとく選んで満塁になった。2番バッター小梁川が打った打球はセンターフライだった。犠牲フライにはどうかという浅い当たりだったが、茂庭はタッチアップ。ずんぐり体型が転がるようにホームに向かった。センターからの返球がワンバウンドでキャッチャーに返った。茂庭が突進してきた。もう狙いはホームベースではなくキャッチャーであった。甲冑同志がぶつかって火花が散った。捕手の前田は巨漢であるが、それでもぶつかられる方が弱い。前田は横倒しに倒れ、さらに一回転して止まった。キャッチャーミットにはボールがしっかり補給され収まっていた。審判がコールする。
「アウトォ!」。全観客総立ちのなか、伊達は無得点に終わった。

試合の流れというか心理的余裕が織田にいっている。伊達の抑え投手宍戸は6番蒲生にヒットを打たれた。7番稲葉に死球。8番バッターに打たれたくない思いが強すぎたのか球は微妙に外れて満塁になった。無死満塁絶体絶命のピンチである。しかし無得点に終わることも結構あるものなのだ。

もう投手は開き直って投げるしかない。細かいコントロールよりも気力だ。織田の代打が告げられた。
「ピッチャー九鬼にかわりまして織田」
1塁側の観客のどよめきが最高潮に達した。やはりチームの代打の切り札である織田だ。かなりの確率でサヨナラ勝ちの目がでる。
伊達のピッチャー宍戸も腹をくくったか、その表情は苦笑いのようにも見えた。
第一球からど真ん中のストレートだった。強振した織田のバットから打ち出された打球は三塁手の頭上だった。すぐさまジャンプして捕球し降りた所は三塁ベースの上だった、三塁ランナー戻れずそれでツーアウト。ボールは遊撃手に送られ慌てて二塁に戻ろうとしたランナーにタッチ、スリーアウト。あっという間に試合が終わってしまった。

観客は満足感を胸に少しずつ球場をあとにした。


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