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つつい つつさん

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同居人の鈴木君

16/03/02 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:578

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 今日も飲み会は盛り上がっている。俺が所属している大学のサークルの集まりで大勢で飲んで騒いでいる。
「清人君、なんか企画考えてよ。どっか遊びに行きたい」
「奈南ちゃん、カメラ好きだったよね。じゃあ、旅行行かない? フォト旅行。みんなで写真撮って見せ合うの」
「おっ、清人いいじゃん。俺も行く」
 俺は自分で言うのもなんだけど、社交的で明るく人気者だ。LINEはいくつものグループに入ってるしSNSで旅行やBBQの様子をアップすると、すぐに「いいね」の嵐だ。初対面や、俺をあまり知らない人にはチャラいって言われてるみたいだけど、そんなことはどうでもいい。俺は今の自分が好きだし、気に入っている。
 深夜までカラオケで遊んで帰るとシャワーも浴びずにそのまま寝てしまった。ほんとは昼まで寝てたかったけど、授業とバイトがあったから九時には起きた。二日酔いの頭でよろよろとリビングにたどり着くと、鈴木君がトーストを食べていた。
「おはよう。なんだか、顔見るの久々だな」
「あ、えっ、ちょっと研究がひと段落したので」
 鈴木君は理工系の大学に通っていて研究やら論文やらで大学に泊まり込むことが多く、十日以上見かけないなんてこともざらにあった。
「こっ、濃いめでいいですか?」
 鈴木君がコーヒーを入れてくれた。鈴木君はおとなしくて寡黙だけど、気が利くいい人だ。
「そういえば、ピアノのCDすごく良かったよ。クラッシックとか聞いたことあるけど、あんな弾むような軽やかなの、初めてだよ」
「は、はい。あのアルバムはすごいです。名盤です」
 前に鈴木君の部屋から流れてる音楽がすごく気になって何か聞いたら、おすすめの音楽や映画をリビングの棚に置いてくれるようになった。俺は流行の音楽や映画には詳しいけど、鈴木君が好きなマイナーなのはあまり知らなくて、でも、びっくりするくらい良いのがたくさんあって喜んで貸してもらってる。他の人に話しても誰も知らないから自分だけで楽しんでるけど、基本みんなで盛り上がれるものが一番と思ってる俺も最近ではそういうのも楽しむようになった。
 鈴木君とは一緒に住んでいるけど、元々知り合いでも友達でもなんでもなかった。大学に入った頃に一番仲良かった貴史とルームシェアしようってことになって、貴史の高校時代の同級生だった鈴木君も一緒に三人で住むことになった。だけど、かんじんの貴史は一ヶ月も経つと彼女が出来たって出て行ってしまった。それから三年、なんとなくそのまま一緒に暮らしている。だけど、そんなに仲良くはなっていない。最初の一年くらいはほとんどしゃべらなかったし、今でも普段は顔を合わさないし、たまに一緒にお酒を飲みながら映画を観るくらいで、話した時間なんて俺の友達の中でも一番少ないんじゃないかって思う。だけどお互い出て行こうとは言わないから、これはこれでうまくいってるのかななんて思う。鈴木君みたいな関係は他にいないから、本当はどう思ってるかなんてわからないけど。
 大学近くのサークルの溜まり場になっているカフェに行くと、なんだか揉めていた。
「今度の幹事は俺って、代表が言ってただろ?」
「そうだよ。雄大君と私でどこにしようかって、ずっと考えてたんだよ」
「いやいや、順番から考えて俺だろ。みんなだって次の幹事は俺って思ってたんじゃないの」
 後輩の雄大と厚志で次の飲み会の幹事が誰かってことで言い争っていた。いやいやいや、そんなに幹事やりたきゃ俺が抱えてる企画どれでもやるよって言いたいけど、そういうことじゃないらしい。ようするに主導権争い、サル山の次のボス争い。端から見てるとそんなことで争ったって仕方ないだろうって思うけど本人達にとっちゃそうもいかない。まあ、俺も今では冷静に俯瞰してるけど、もともとそういうことに敏感だった。中学や高校時代は自分はクラスや部活でどのポジションにいるか人一倍気を使っていた。常に一番か二番、何をやるにしても中心メンバーにいないと不安だったし、どうでもいい存在って思われるのが何より怖かった。いつからだろう、そんなこと気にしなくなったのは。そういえば去年、サークルの代表決める選挙に立候補しなかった時、周りはすごく驚いていた。みんなに代表を狙ってると思っていたと言われた。実際、なりたかったんだけど、なぜか張り合うのが嫌になった。結局、副代表として忙しくかけずり回っているから代表になるのとそんなに変わらないんだけど。
 俺は充実している。みんなと騒いで盛り上がって目一杯楽しんでる。だけど、お互い社会に出たら、つながりなんていつ切れるかわからないあやふやなものだ。だけど、それでいいと思う。でも、なぜだか鈴木君とだけはお互い歳をとっても、二人で静かに飲んでいそうな気がする。


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