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ヤマザキさん

はじめまして、ヤマザキといいます。 新選組と週刊少年ジャンプを愛する妄想屋です。

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将来の夢 京都に移住する
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一宿折犯

16/03/02 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:6件 ヤマザキ 閲覧数:604

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 よお、どうした相棒。暗い顔して。
 分かってるって。何か言いにくいことがあるんだろ?
 他の連中に内緒で俺とサシで話すときはいつもそうだもんな。
 ほら、とっとと言っちまえよ。俺たちの間で隠し事なんて水臭え上に馬鹿馬鹿しいだろ。
 何!? また拾ってきただって?
 おいおい、つい先週新しいのを棲ませたばかりだってのに、そいつが落ち着かない内から次の奴か?
 行き場がなくて困ってた? 可哀想で見てられなかった? いつもそういってその辺をふらふらしてるのを引っ張ってくるが、もう何回目だよ?
 ああ、まあ分かっちゃいるぜ。相棒がそういう野郎だってことは。
 俺だって相棒に拾ってもらわなけりゃ未だにそのへんをふらふら漂って、場合によっちゃもうこの世にはいなかったかもしれねえ。
 そういう意味じゃあんまり強く言えたクチじゃねえし、そもそもこの宿の主はあんただ。そのあんたが決めた以上はそれに従う他ねえが。
 だけどな、これ以上はいくら相棒でも身が持たねえぞ。
 俺たちの面倒を見てくれることは感謝してもしつくせねえし、返せる恩も高が知れてるが、だからこそ少しは自分の体の心配ってのもして欲しいもんだ。
 相棒に倒れられたら、それこそ俺たち全員また路頭を彷徨うことになっちまうんだからよ。
 それともう一つ。これも俺が言えたことじゃないんだが、漂っているような奴はそうなるべくしてなった奴がほとんどだ。
 お人好しも結構だが、受け入れるなら受け入れるでしっかりと目を光らせとかねえと何するか分からねえぞ。新しい奴にここのルールをきちんと飲み込ませておけよ。
 ……分かったって? なら、いいけどよ。
 行っちまいやがった。本当に分かったのかね、ったく。
 まあ何度も言うように借りてる立場からじゃこれ以上はどうしようもできねえか。
 しかし相棒とは長い付き合いだがどれだけ経っても変わらねえな、ああいうところは。
 こっちにシワ寄せが来て……くれりゃまだ安心できるんだけどよ。全部背負い込まねえといいが……。

                 ◆

 だから言わんこっちゃねえ!!
 あの女には気を付けとけって散々言っといただろうが。
 あ〜あ〜、今更謝ったってどうしようもねえっての。
 稀代の天才霊能者だか何だかしらねえが、目についた浮遊霊を片っ端から取り込むなんて馬鹿げたことした報いだ、これが。
 借り賃も受け取らねえで体を貸してりゃ性質の悪い輩が寄ってくるなんてのは分かってたことだろうに。
 せっかくの才能もその性格の前じゃ毒以外の何物でもねえな。
 あの女が悪霊だってことは分かってた? 更生できると思ってたって? つくづく甘ちゃんだな。
 これからどうなるかって? 俺や他の霊魂たちのおかげで何とか未遂に終わったが、仕出かそうとした事が事だからな。実刑は免れんだろうよ。
 もっとも、体の主を俺たちに譲り渡して多重人格障害を装えばまだ無罪の芽はあるだろうが。
 俺たちをそんな風に利用したくはないって? はっ、相棒ならそう言うと思っていたよ。
 ……ん、だから今更謝ったってよ……ああ、俺のことでか。息子に会わせることができなくなって悪いって。
 別に気にすることねえよ。本来ならとっくの昔に見納めだった息子の成長を、嫁さんもらって孫ができるまで見させてもらえたんだから。
 俺としてはもう十分だ。守護霊の座はあのクソババアが一向に譲り渡す気配はねえしよ。
 もう未練がなくなったのなら体から出て成仏した方がいい?
 おいおい、おいおいおい、何を言ってんだ。俺が相棒をこのまま残して成仏なんてできるわけねえだろ。
 俺にとってあんたは相棒であると同時にもう第二の息子みたいなもんなんだ。
 一人前に育ったあいつと違って、こっちの息子はまだまだ心配で目が離せねえよ。
 俺だけじゃねえ。他の奴らも今更相棒を見放す気はないってよ。
 何だかんだ相棒のお人好しが体を通じて俺たちに伝染っちまったかな。
 そう考えれば、あの女も手のかかるじゃじゃ馬娘みてえなもんだ。
 相棒一人じゃ手に負えないだろ。あの女の更生とやらにもじっくり付き合ってやるよ。
 な〜に、一つの宿に一緒に棲む家族なんだ。この程度は何でもねえ。
 だから謝るなって。礼もいらないっての。
 家族の親切なんてもんはな、その場では悪態吐いて後になってから身に沁みておけばいいのさ。


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このストーリーに関するコメント

16/03/06 ヤマザキ

小狐丸さんへ
コメントいただきありがとうございます。
普通の同棲じゃつまらない&経験がないから他の人の描写に敵うはずがないと思い、少し変わった形の話にしてみました。
未練ある霊に体を貸して本懐を遂げさせる話は古今東西枚挙に暇がありませんが、そのまんま体の中に住まわせ続けるというのは少し斬新なんじゃないかなと我ながら思います。
一方でどこかでとっくに誰かやってるのかもと思いますが。
まあ彼らは何だかんだで和気あいあい楽しくやっていくと思いますよ。

16/03/08 宮下 倖

拝読いたしました!
語り手は果たして何者なんだろう。相棒って……? と想像するも結局自分の答えは的外れで、後半「なるほど!」と膝を叩きました。
最後まで読んで、もう一度最初から……と読み直しました。
語り手の霊の愛情があたたかくて、ほっこり和みました。
素敵な作品をありがとうございます!

16/03/09 ヤマザキ

宮下さんへ
コメントありがとうございます!
『相棒』という言葉の響きが何か好きです。一応、語り手は宿主の彼が一番最初に取り込んだ霊です。
なので結構付き合いが長く強い信頼関係を築いているわけですね。
今回は語り手の正体による意外性よりも仰られている通り彼らの間にある愛情を感じ取っていただきたかった面が強かったのですが、両方とも狙った以上の効果が出ているようでよかったです。

16/03/22 光石七

拝読しました。
なるほど、肉体という家(部屋、宿)に魂(霊)が同棲。
悪霊だったら大変ですが、語り手も他の霊も宿主の男性もみないい人のようで、なんだかほっこりしますね。
ラストの一文にじんわりきます。
面白かったです!

16/03/29 ヤマザキ

光石さんへ
コメントいただきありがとうございます。
お返事が大変遅れてしまいまして本当に申し訳ありません!(見てもらえるのかなこれ
この話は宿主という言葉から発想してできあがりましたね。仰る通りに肉体に魂たちが同棲ということです。
面白いと言っていただけてこちらこそ元気づけられました。ありがとうございました。

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