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プロポーズ

16/02/15 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:0件 窓際 閲覧数:650

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彼女と同棲を始めてから3年の月日が経とうとしていた。
5年前僕らは出会いすぐに意気投合した。互いに惹かれあい、すぐに恋に落ちた。
二人で過ごす日は何事にも代えられないもので、毎日がまるで今までの毎日が荒んで見えるかのように輝いていた。
幸せな日々を過ごし、僕は彼女との運命を確信していたし、彼女も自分を選んでくれると信じていた。
事実、彼女は僕を選んでくれた。その後しばらくして僕たちは同棲を始めた。
「ただいま」 
「おはよう」
こんな些細なあいさつの一つ一つが僕の心を満たしていくのを日々感じていた。
家に帰ると彼女が待っていてくれる
たったこれだけのことがどれだけ僕に力を与えてくれたか。

付き合い始めて3年程たったある日、
彼女は「友達に会いに行ってくる。」と言って家を出て行った。
僕が「外は大雪だし、怪我には気を付けるんだよ。よく転ぶんだから」と冗談っぽく言うと
彼女は「そんなドジじゃないよ!」と少し照れたような拗ねたような顔で笑っていた。
今思えばこのときもう少し真面目に注意を促しておけばよかったのかもしれない。

その日、彼女はスリップした軽自動車とぶつかってしまった。
軽自動車との接触自体はそんなに大きなものだはなかったのだが、その際、倒れた拍子に頭をコンクリートに強打してしまっていた。
一応検査は受けたが、外傷はそんなに酷くはなく、レントゲンも異常はなかったので2週間ほどで退院することができた。
「大事に至らなくて本当に良かった」と僕が言ったとき彼女は「プロポーズが聞けるまで死ねないよ!」と少し僕に寄りかかりながら恥ずかしそうに言った。

退院してからも彼女はこれまでと同じように、いやもしかしたら事故に会う前より元気に過ごしていたかもしれない。
だから、僕も彼女に何もなくてよかったと安堵してしまっていた。

だが、退院して3週間が経って彼女に異変が徐々に訪れた。
僕が仕事から帰ると彼女が少し怒って僕に
「これ誰からもらったの!」と昨日彼女と買いに行った値札付きのセーターを見せてきた。
「昨日一緒に買いに行ったじゃん」と笑いながら言うと彼女は昨日のレシートを取り出し、少し頬を赤らめてセーターをタンスにしまった。
次の日も同じように「誰からもらったの!」と聞いてくる彼女に少し戸惑いを感じながらも説明をするとまた同じようにタンスにしまっていた。
それからというもの彼女は極端に物忘れがひどくなり、傘を持って行って持って帰ってこないなんてしょっちゅうのことで、それまでは彼女はもともとドジな女性だったので後遺症のせいかなーなんて思っていたが流石に酷すぎると思い医者に診てもらうことにした。

医者に診てもらうと医者は少し言いにくそうに口を開いて
「彼女は事故の後遺症で脳が損傷し今修復段階で新しい記憶が入りにくい状態になってしまっています。時間がたてばまた元通りになるでしょうが、その時、今の彼女の記憶がそのまま残っている可能性は低いでしょう。」と言った。
それは簡単には信じられないことだったが彼女が「可能性は0じゃないよ!」と明るく言うので僕もその場は半ば無理やりながら収めることにした。
病院からの帰り道彼女が「ごめんね」と泣き出しそうな顔で言った。
当然のことだ、彼女自身が一番不安で苦しいに決まっている。

僕たちはそれから彼女が「無くなるにしても今の記憶は幸せでいっぱいにしたい。」というのでたくさん遊びに行ったし、旅行にも行った。
だが、医者の言った通り彼女の記憶はどんどん消えていき漢字などはもう書けなくなっていたし計算も幼稚園児程度にしかできなくなっていた。
ただ、幸か不幸か僕への気持ちだけは最後まで残っていたようでデートの時はそんなことも忘れて楽しめた。
だが徐々に僕のことも忘れて行ってしまう。彼女もそれが怖いようで毎晩のように泣いていた。
そんな彼女に僕ができることは出来るだけ傍に居てやることしかなかった。
自分の無力さを恨みつつどうしようもない現実にただ祈ることだけしかできない。
そんな僕を嘲笑うかのように運命は彼女の記憶を奪っていった。
そしてついに僕のことが分からなくなってしまう時が来てしまった。
「誰ですか?」と冗談でもなく本当にただ疑問と少しの恐怖が入り混じった顔は今でも忘れられない。

そして同棲して3年の月日がたった、彼女とは毎日一緒に過ごしているがこれまでのような愛情はない、他人行儀な彼女に少し寂しさを感じるときはあるが僕はこの運命に抗う事を決めたのだ。
忘れ去られたというならもう一度彼女の記憶に僕を刻みつけてやろう。
彼女も為なら何を捨てたってかまわない。
それに僕はまだ彼女に言えてない言葉がある。
いつかまたあの頃のように愛し合えた時に言おう。
彼女は多分泣きながら喜んでくれるんだろうな。


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