Aミさん

ど素人です。山と動物と草木が好きです。朝顔を愛しています。生き物好きをこじらせてバイオテクノロジーなど学んでいました。文鳥とメダカ飼ってます。この秋にネコを拾ったので飼いはじめました。

性別 女性
将来の夢 動物保護活動のスポンサーになれるくらいの金持ちになりたい。
座右の銘 技術は見て盗め(とあるバイオ技術者から教わった、受け身では何も身に付かないという教訓)

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優花

12/08/24 コンテスト(テーマ):【 猫 】 コメント:0件 Aミ 閲覧数:1231

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「なあ委員長、猫の飼い方ってわかる?」
一学期の終業式の日、普段はクールな中西翔太が、突然そんなことを言ったものだから、クラス委員の岸上友哉は彼のオハコの芝居がかった仕草で奇妙なものでも見つけたと言うようなリアクションをした。
「中西が猫を飼うって?」
「子猫を拾ったんだ。飼育書は読んだが自信がない」
「うーん、僕も猫は飼ったことないけど…あ、そうだ古林が猫好きだよ。おーい古林〜」

期末テストが終わった日曜日、夜更けに翔太はジョギングに出かけた。その日は法事で忙しかったのに、逆に目が冴えてしまって寝付けなかったのだ。ご院さんの説法を何とはなしに思い返しながら走っていると、雑木林で子供の声がした。あーん、あーん。ギクリとして足を止める。あーん。翔太の足元にすり寄ってきた声の主は三毛の子猫だった。

「で、拾っちゃったんだね」
「それは拾うだろう。良い事をしたな中西」
「サンキュ、古林」

その晩は翔太の父が呆れながらも面倒を見てくれたが、手を貸してくれたのは翌日に動物病院に預けるところまでだった。子猫は検査と栄養状態の回復のために数日間の入院を言い渡された。今日はその子猫を引き取る日だった。
三人は道すがら動物病院に寄って、預けてあった子猫を引き取って帰宅した。子猫は翔太が拾った時よりも健康そうになっている。

「こいつの名前、決めたのか?」
古林賢吾がごつい腕に子猫をだいて言う。子猫は気持ち良さそうにゴロゴロ言っている。
「優花にしようと思ってる」
「おっ、初恋のコだろ〜!」
岸上が勢いよく食いついたが、翔太は苦く笑って首を振る。
「いや、妹の名前なんだ」
「ん?どゆこと?ってか、妹いるの」
「ずっと前に、いたんだ」
唐突に重い沈黙が落ちる。
「わる…「わけがありそうだな。話してくれるのか」
変な話して悪かったと翔太が謝ろうとしたのを、古林の声が制した。
「いいのか?重いぞ」
「かまわんさ」
古林は鷹揚に促す。今なら話せそうな気がして、翔太は記憶を手繰り寄せた。
「12年前の夏の日、4歳の妹が猫の轢死体を拾ってきちゃって、しょうがないから俺と一緒に墓を作ったんだ。で、そのすぐ後、妹は高熱を出して意識を失って嘔吐して痙攣して、2日後に死んだ。病理解剖は母さんが反対したから出来なくて、何が原因だったのかはわからないままだ。悲しくて怖かったよ。優花は猫に魅入られたんだ、って母さんは心を壊して今もサナトリウムに入ってる。父さんは現実から逃げてワーカホリックになった。ほとんど帰ってこない。だから猫は嫌いなんだけど、この子猫を拾ったの、12年前に轢死体を葬った場所なんだよ。あの場所じゃなかったら無視したと思うんだけど、なんか声が妹にそっくりでさ。模様もあの時の猫によく似てるんだ。泥だらけで鳴いてたから思わず拾い上げたら、不思議と情が移っちゃって」
「キングのペットセメタリーを思い出した…」
話を聞いていた岸上が大げさに子猫から遠ざかってみせた。
「中西が友達を作らないのはそのせいか」
古林は別の所に気を取られたらしい。
「はは、古林にはバレてたか。うまく誤魔化してるつもりだったんだけど…そう俺、喪失がトラウマになってて他人と打ち解けられないんだ」
「なんとなくな。そうだ中西、これは12年前の猫の恩返しだと思え。死んだ猫と妹さんに免じて友達にならないか。言っとくが同情じゃないぞ。オレは子猫が目当てだ」
「えぇっ!これホラーじゃなくていい話なの?!ってか、僕は前から友達だと思ってたのに〜」
こんな急に重い話しとかして嫌わたな、と思っていた翔太は、二人の言葉に耳を疑った。じわっと涙が滲んでしまう。
「おまえら、いい奴だな。ありがとう。友達になってくれ」
「おう、手に入れる前から喪う心配なんかしてんじゃないぞ」
「そーだそーだ」
子猫の優花がニャーと鳴いた。

翔太は思う。もしかしたら、死んだ猫と妹が一緒になって帰ってきたのかもしれない。よく考えたら猫も妹も何も悪いことはしてないのに、俺の家族はバラバラになってしまって、心配させてたのだろうか。と。

ありがとう、俺はもう大丈夫だ。
今度は俺が、父さんと母さんを元気にしよう。


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