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みやさん

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たこ焼きルーレット‼

16/02/01 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:4件 みや 閲覧数:903

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「今日も行くやろ?」「当たり前やん」小学校の終わりの会の間中、男子たちはひそひそと楽しそうにしている。先生さよなら、皆さんさよなら、の合図と共に男子たちは一斉に教室から駆け出した。
「翔、16時に”てっちゃん”の前で集合やからな!」健太が上履きを履き替えながら叫んだ。
「わかってる!」翔は一目散に家に向かう。

家に着くなり翔はお母さんお小遣い!と言って、手も洗わずに母親に右手を差し出す。手ぐらい洗いや、あんた宿題は?と母親はぶつぶつ言いながら翔に100円玉を握らせた。小学三年生の翔の一日分のお小遣いだ。宿題は帰ってからちゃんとやるから、行ってきまーす!と元気に叫んで翔は”てっちゃん”へ向かって走り出した。

近所の駄菓子屋”てっちゃん”がたこ焼きを始めてから約一カ月。子供たちはこの六個入り100円のたこ焼きに夢中になっていた。美味しい、というのが理由ではない。駄菓子屋”てっちゃん”の店主の60歳位のおっちゃんが作る素人のたこ焼きがめちゃくちゃ美味しいはずもなく、子供たちの心を虜にしているのは、このたこ焼きには当たりがある、という理由からだった。”てっちゃん”のたこ焼きには基本、たこは疎かネギや紅生姜や天カスなども一切入っていない、言うなれば「ただのメリケン粉の塊」なのである。しかし当たりには”伝説の大ダコ”が入っている、という当てもん好きの子供たちの心を擽る魅力がこの”てっちゃん”のたこ焼きにはあった。

「今日もハズレや〜」「俺も〜」集まった男子たちの間に落胆の声が上がる。その声を尻目に女子たちは当てもん、などという非合理的な買い物はせずに、堅実に可愛いカラフルな駄菓子を買っている。実に合理的である。当てもん、博打、ギャンブルが好きなのは大抵男と相場が決まっているのかもしれない。

”てっちゃん”からの帰り道、今日もハズレた…とガックリと肩を落とす翔に同じクラスの女子の咲が禁断の言葉を投げかけた。
「あのたこ焼きって、当たり、入ってないん違うん」
「え…」
嘘や、と翔は思ったけれど、この一カ月”てっちゃん”に通い詰めた子供たちの誰一人として”伝説の大ダコ”の当たりを引き当てた者はいなかった。唯一当たった事があると言っている健太も、皆んなで放課後に集まって食べている時ではなく、たまたま健太の母親が買って来た”てっちゃん”のたこ焼きに当たりが入っていたと言っていただけなので、信憑性に今ひとつ欠けるものがあった。けれど翔は健太が嘘をついていると思いたくなかったし、”てっちゃん”のおっちゃんが子供たち相手に詐欺紛いの事をしているとも思いたくなかった。しかしそれが嘘ではない事を証明してみせる証拠が翔には無かった。

咲が言った様に、翔の友人達は徐々に”てっちゃん”のたこ焼きには当たりなんか入ってへん、嘘っぱちや、と思い始め、一人、また一人、と”てっちゃん”に通う者は減っていった。当たりが入っていた事があると言っていた健太の事も皆んな疑い始め、友人達の間でギクシャクした音が響き始めた。そして”てっちゃん”に通う仲間が誰一人として居なくなっても、それでも翔は相も変わらず”てっちゃん”に毎日通い詰めていた。雨の日も風の日も、お小遣いの100円玉を握りしめて。

「お前はアホと違うか」
たった一人ぼっちになっても毎日”てっちゃん”に通う翔に、ある日おっちゃんがポツリと呟いた。そんなおっちゃんに翔はたこ焼きちょうだい、と100円玉を差し出す。
「たこ焼きはもうやめたんや、誰も買わんようになったからな」
そう言っておっちゃんはガハハ、と笑った。
「…なんでや、おっちゃんなんでたこ焼きやめるんや、俺絶対毎日買いに来るから、せやからたこ焼きやめんといて。おっちゃんが嘘つきと違うこと、健太が嘘つきと違うことを皆んなに証明させてや」
泣き出しそうになりながら手の平の100円玉を差し出して、翔は”てっちゃん”のおっちゃんに訴えた。おっちゃんはしゃあないな…とブツブツ言いながらたこ焼きを焼き始めた。今日こそは絶対に当たりを引いたる!と翔は意気込んでいたのだけれど、今日のたこ焼きも結局メリケン粉だけの塊で、当たりは入っていなかった。ガックリと肩を落とし落ち込む翔におっちゃんは声を掛けた。

「明日は…なんか当たりが出そうな予感がするわ。なんちゅうか…当てもんもむやみやたらに買うててもあかんのや。流れを読むんも大事な事やからな」
「…おっちゃん、ほんまか?ほんまに明日は当たり出るんか?」
「ま、当てもんなんか運試しみたいなもんやからな。当たるか当たらんかは…神様の言う通りや。明日は友達ようさん誘って来てみ」
そう言われて翔の胸は躍った。
「ま、絶対に当たる保証は無いけどな」
おっちゃんはそう楽しそうに言ってガハハ、とまた笑った。


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このストーリーに関するコメント

16/02/06 クナリ

一人の子供の思いを通して商人としての矜持と人情とが錯綜する、印象的なお話でした。
少年の一人称で語られながら、おっちゃん様がもう一人の主人公として、物語を深くしていますね。

16/02/07 みや

クナリ 様

コメントありがとうございます☺

”てっちゃん”のおっちゃんが明日は当たりを出してくれるといいなぁと思います。

16/02/11 てんとう虫

おはようごさいます。だがしやのあたりが大タコ入りの話は子供心くすぐられます。100円は今の子なら大したことないけど消費税ない頃の100円てこどもには大きいですね。信じて買い続けた男の子のせつなさとおじさんの様子が丁寧でなんかすきです。熱中してたこと相手の事情でやめさせられたみたいでつまらないですね。友達との話題なり楽しめるし。その後別の100円おやつ出しそうな楽しい話でした。

16/03/01 みや

てんとう虫 様
コメントありがとうございます。

本当!”てっちゃん”のおっちゃんならまた別のおやつを考えそうですね!

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