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seikaさん

かつては女子中学生でした。

性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
座右の銘 朝、一杯のコーヒー

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田舎学者の夢、暴走の末

16/01/08 コンテスト(テーマ):第100回 時空モノガタリ文学賞 【 純文学 】 コメント:0件 seika 閲覧数:769

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 田舎学者、廣策にとって戸舞賛歌は中央の出版界に輝く巨星だった。戸舞家は大きな門扉と広々とした庭がある。門を入るとすでにクラシック音楽が流れている。そして戸舞賛歌の書斎に入る。中央の文壇で燦然と輝く戸舞賛歌が艶のある声で
「やぁ。」
と迎え入れてくれる・・・。廣策にとって戸舞賛歌は憧れの人であり、また自分よりもはるか雲の上に存在している輝く星だった。廣策はいつかは自分も戸舞賛歌と同じところに行き、そして戸舞賛歌のように燦然と輝きたいと思っていた。
 そんな戸舞賛歌が逝去した。その報せを受けて廣策は真っ先に戸舞邸へと駆けつけた。
「いよいよボクの時代が来た。これからはボクが戸舞賛歌に代わってこの場所を占めることになる。」
そう決意した。自分の人生を大きく変えるまたとないチャンスだ。多少の不法行為があったとしてもこのチャンスを手放したくなかった。
「これからはボクの指示に従ってください。」
廣策はその場の人たちにそう宣言した。 この非常事態、自分が暫定指揮官になるというわけだ。
 そんな時、戸舞家に一人の細身で長身の女性がヒールの音を響かせて入ってきた。
「・・・なんだあの女・・・。」
 廣策はこの彼女に自分の「計画」が邪魔されるように感じられて不快感を感じた。彼女、戸舞家の長女麗奈だった。
「・・・なんだあいつはここで東京にいったんだろう。何を今更のこのこと身内ヅラして戻ってきやがってっ。」
そう感じむっとして彼女を睨んだ。
 首元にエルメスのスカーフを巻いた麗奈は事務的にてテキパキとした女だった。
「こんな女にボクの夢が邪魔されてたまるかっ、あの女をここから追い出さなければ・・・。」
そう焦る廣策だった。
 ・・・やがてその場の空気の流れで戸舞賛歌の偲ぶ会というものを開催することになった。するとなんと麗奈は廣策に「無断」で会場を予約し、しかも何人かと話を進めていた。
「・・・なんだとっ・・・。」
廣策は怒りで目の前が真っ暗になった。そして焦るように戸舞家へと向かった。すると麗奈が居間の座っているのが目に入った。
「おい、おまえそこで何している、一体いつまでここに居るつもりだ。」
いらだった廣策はその場に居た麗奈を怒鳴りつけた。が麗奈はひるむことなく平然として
「父の偲ぶ会はアカデミックな雰囲気でやりたいと思います。」
何ぞといっていた。
「・・なんだとっ。この・・・おまえっ!」
「戸舞さんは君にとってお父さんかもしれないが、これから戸舞さんとここのことはボクに任せて君はここから見を轢いてくれないか・・・。」
と諭すように行ったがしかし苛立ちは抑えきれない。
「どこかから君のところにアクセスがあったら、次のように自分の身の程を相手に説明しなさい。私は単なるツカイパシリに過ぎません。私の遺族としての権限はすべて湊廣策先生に譲り渡してありますから・・・と、わかったね。」
そう怒鳴り飛ばすと彼女をその場から追い出してしまった。そしてその後は麗菜をツカイバシリとして利用し、すべて廣策に都合いい戸舞賛歌の偲ぶ会を開催できた。

 その偲ぶ会が終わり、いよいよ戸舞家を自分のものにしようと廣策が戸舞家に出向くと、家の中から数人の女性の声が摩る。
「なにあの湊廣策っていう男、戸舞さんの家乗っ取ろうとしているんでしょ。」
「・・・」
廣策は踵を返して自分の家に戻るしかなかった。
「・・・何か雲行きが怪しい・・・」
そう感じた。その後廣策邸に頻繁に無言電話がかかってくるようになった。また廣策邸の前で
「この泥棒学者。」
という声が聞こえる・・・。
「・・・。」
廣策はとんでもないトラブルに巻き込まれてしまったことをあらためて感じた。
「あんたはウチラ戸舞家の運命の中に入ってきたのよ。だから戸舞賛歌が私たち家族に担っていた責任というものを今度はあんたが担うことになるのよ。アンタは私たち家族を幸せにしなくちゃならないのよ。あの時私たちの家に来てズカズカとえらそうに仕切ったんだから・・・。」
という麗菜の声が道から聞こえてきた。すると廣策は
「おいおい、おまえだけの家?か。戸舞さんの家は戸舞さんの文学と学問を理解する我々全員の共有財産だ。おまえはツカイパシリに過ぎない。」
と反論してやった。すると今度は麗菜は廣策の家に乗り込んできた。
「アンタがあたしの生まれ育った家を乗っ取ってあたしとを追い出そうとしたから同じことをしてやったのよ。目に目をだから・・・。過去を償って!!」
そう麗菜にいわれると廣策はなにも言うことは出来なかった。
そして戸舞賛歌死去からほぼ二年後、廣策は誰にも報せることなく永く住み続けた雪脳市からひっそりと去った。

 

 

 

 


 


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