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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

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将来の夢 星座になること
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キャット革命

16/01/04 コンテスト(テーマ):第九十八回 時空モノガタリ文学賞 【 革命 】 コメント:7件 そらの珊瑚 閲覧数:830

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 諸君、今こそ決起の時だ。
 革命の時が来たのだ。
 いざ立ち上がれ、同志たちよ。
 長年の圧政を力を合わせて倒そうではないか!

「ちょっと、まってよ。圧政って一体なんのこと?」
「ミケ、おまえ、気づいてないのか? わしらの餌、今年に入ってまた安いものにかえられたのだぞ」
「ああ、そのことか、ホワイト」
「ホワイトじゃないって何回言ったらわかるんじゃ、わしのことはホワイト大佐と呼べ」
「ちっめんどくさ。革命家気取りかい」
「なにい?」
 この家に飼われている猫、ミケとホワイトはにらみ合っている。
「まあまあ、仲間割れしている場合じゃないでしょう。わたくしもあの餌のまずさには耐えられないと思ったところでして。あれだったら人間の食べ残しのほうがまだましかも……」
 二匹の仲を取り持ったのはブラックムーンと呼ばれている全身黒い猫。
「それだけじゃないしィ。節電とか言っちゃって、奥さんたら冬なのに、こたつの電源入れてないじゃない。あたし、こたつでまったりするのが何よりの幸せなのに……ぶるぶるっ風邪ひいちゃうじゃないさ」
 四匹の猫のうち、一番若いヒメがぼやく。

「美味しい餌を!」
「あたたかいこたつを!」
「ついでに安全な昼寝も!」

 猫たちの平和な生活が脅かされたのは、この家に昨年産まれた赤ちゃんが歩くようになってからだった。そのおそろしさといったら! 
 しっぽをつかまれたら最後、振り回されてひどい目に合わされたことは、一度や二度ではない。あんなに小さな手なのに、驚くべき握力なのだ。おまけによだれでベトベトにされ不快なこと極まりない……。特に綺麗好きなヒメは、いつあの小さなモンスターにつかまるか、ビクビクしながら暮らしている。

「えさっ」
「こたつっ」
「ひーるーね」
「えさっ」
「こたつっ」
「ひーるーね」

 猫たちの訴えがシュプレヒコールとなりリビングに鳴り渡る。俄然猫たちは革命に燃えて、やる気になっている。時間は深夜。人間たちは寝ていた。

「でも、革命ってどうやるの? ホワイト大佐」
「よくぞ聞いてくだされた、それはじゃな、ベルサイユの薔薇じゃよ。フランス革命じゃよ」
「ああ、あれね、ここんちのおくさんがよく見ている宝塚のDVDに出てくるお話ね。どっかーんっていって鉄砲打ち放して、街をめちゃくちゃにするんだっけ? でも、わたくしたちには武器がないわ」
「いいや、あるじゃないか」
「えっなんのこと?」
「これじゃよ」
 ホワイト大佐が不敵な笑みを浮かべて、鋭い爪を天に掲げた。

 夜中、四匹の猫は革命という大義名分の名のもとに。リビングで暴れまくった。ガシャン、ドシン、ガリガリ……。日頃のうっぷん晴しではない、ええ、断固としてこれは「革命」なのだと。

 朝が来て、おくさんがリビングのドアを開けて入ってきた。その惨状に悲鳴が上がる。

 早起きしていた赤ちゃんがやったのだと思い込み、赤ちゃんを叱ってしまった。床に散らばったキャットフードをもぐもぐ拾い食いしていた赤ちゃんは、叱られて訳がわからず、泣き始めた。

 猫たちはそれぞれお気に入りのキャットタワーの上で、ひそかにほくそえんだ。ふふん、いい気味。だって革命に少々の流血(涙)はしかたのないこと、だと。我々は勝利を手に入れたのだと。

 しかし、革命後、何も、米粒ひとつも変わらなかった。餌は特売のキャットフードであったし、こたつは冷たいままだったし、赤ちゃんにいたってはますますその力を増していった。

 それでも、と猫たちは気づく。それぞれ捨て猫であった頃の自分を思い出していた。明日をも知れぬ命だった自分を、家に連れてかえってくれたのは、紛れもないここんちのおくさんだったのだ。
「とりあえず平和協定をむすんだことにする」
 ホワイト大佐がそう宣言し、ひとまず革命が終結した。(ことにした)
 四匹は電気の入らないままのこたつの中でその身を寄せる。互いの体温で次第に温かくなってゆく猫団子。猫たちはつかのまの昼寝をむさぼっていた。
 
 


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このストーリーに関するコメント

16/01/06 霜月秋介

そらのさん、明けましておめでとうございます。拝読しました。

人間も猫も、欲しいものが手に入るとまた更に欲しくなるのでしょうね。自分がどれだくな贅沢を言っているのかも気付かずに。
あれば便利なものですが、無くても別段困らない。私たちの日常にはそういったものがありふれてるのかもしれません。

16/01/08 泡沫恋歌

そらの珊瑚 様、拝読しました。

猫ちゃんたちの待遇改善を求める「革命」は単なるストレス解消で終わってしまったかもしれないけれど・・・

待遇は改善されなくても、仲間の絆が深まって良かったと思います。

ちなみに、うちの姉が猫を二匹飼っていたんですが、結構、お金がかかるとこぼしてました(笑)

16/01/10 冬垣ひなた

そらの珊瑚さん、拝読しました。

何と可愛い、しかし猫さんにとっては切実な革命ですね。
自分にも身に覚えはありますが、子供って動物でもポンポン投げますから。
革命はなにも変わらなかったけれど、猫さんたちが幸せを再確認できて良かったです。
うちも猫4匹です、缶詰よりドライフードが安いんで悩むのですが革命起こされたらどうしましょう(笑)。

16/01/12 石蕗亮

拝読しました。
親の心(ね)子知らず、(ね)子の心親知らず。
自己完結のホワイト大佐も良かったですが、オチの猫団子が絶妙でした!

16/01/13 鮎風 遊

きっとどこかの家でこんなことが起こってるような気がします。
平和を愛する猫たち、仲良くしたいものです。

16/01/21 光石七

拝読しました。
そうか、うちの愛猫が障子を破ったり、柱で爪とぎしてボロボロにしたり、走り回って暴れたりするのは、彼女なりの革命だったんですね(笑)
ニャンともかわいい猫たちの革命でした。
最後の猫団子が、もう…… 嗚呼、四匹をフニフニしたい(笑)
楽しませていただきました♪

16/02/04 そらの珊瑚

霜月 秋介さん、ありがとうございます。
大変おそくなりましたが、あけましておめでとうございます。
今の生活に慣れてしまうと、昔のことは忘れてしまいがちですね。
今あるものでよしとするしかなさそうです。

泡沫恋歌さん、ありがとうございます。
失敗に終わった革命ですが、それなりに良かったのかな…と。
動物飼うのは以外にお金、かかります。なのでペットフードのランクを落とす気持ち、よくわかります。(でも安いのは食いつきが悪い(T_T)

冬垣ひなたさん、ありがちとうございます。
こども、手加減しませんから、ペットにとっては災難なことだと思います。
4匹もいたら食費だって大変かと。あまり贅沢は覚えさせない方がよさそう…笑

石蕗亮さん、ありがとうございます。
猫団子、電気なんかつけなくてもあったかいでしょうね。
人間でもぎゅうぎゅうしたらあったかいと思います。

光石七さん、ありがとうございます。
困ったときの猫頼み。犬にも頼んじゃったりしますが。
楽しんでいただけて嬉しいです♪

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