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アシタバさん

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ある星の革命

15/12/23 コンテスト(テーマ):第九十八回 時空モノガタリ文学賞 【 革命 】 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:655

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 故郷の惑星から遠く離れて広大な宇宙を探索する日々が続いていた。
 重要な任務とはいえ狭い宇宙船にずっと一人きりだったのでいい加減気が滅入り、家族に会いたいと考えていた。そんな時、不意に警報音が鳴った。慌てて状況を確認するとエンジンになんらかの故障があるようだった。本来はあまり未知の星には降りたたないようにしているのだが、エンジンが完全に動かなくなる前に手近な星に着陸して修理することを決めた。間もなく船のレーダーが空気のある星を探り当てたので、これ幸いとエンジンが動くうちに全速力でその星へと向かった。

 何てことない草原に無事着陸したが、その星はどうやら空気があるだけではなかった。空から見ていて気がついたのだが海や川などの水資源が豊富で森林などの緑も豊かだった。この地点の近くには驚いたことに街も確認していたので、宇宙船の修理を後回しにして、先にそちらを探索してみることにした。

 久しぶりの陸地に興奮しながら野原を歩き続けていたのだがどうにも気になる点があった。生き物の姿が発見できないのだ。鳥一羽、ネズミ一匹、昆虫すらも目にしない。おかしい、これだけ豊かな自然環境でなぜ生き物が見当たらないのだ? そう疑問に思っていると目線の先に建物が密集している地域が確認できた。空から見たあの街だ。高い建物も多くなかなか立派そうだった。この星の人間に出会うことに少し不安はあるが何がともあれこのまま歩みを進めることにした。

 街につくと予想外に愕然とさせられた。
 遠くから見れば立派だった高いビルはガラスというガラスが割れて、コンクリートの外壁は崩れかけていた。街の目抜き通りと思しい場所も、舗装道のいたるところにヒビ割れが入り、女性のヒールのような靴ではとても歩けそうになかった。あちらこちらに植物が根をおろしていて、いずれは街を飲み込むのではと思うくらい活発に自生をしていた。車のような乗り物がいたるところに転がっていたが、汚れや錆、変形が酷くて走れるわけなどなかった。周りの風景はそんなものばかりで人の気配などはみじんもなかった。荒廃してからの年月の長さだけを感じさせた。一体ここで何があったのか? この星はどうなっているのか? この星はどこもこんな状態なのか? 疑問は尽きず、真実を知りたくて、悩んだあげく宇宙船には戻らずにここで探索を続けることにした。しかし、手がかりを探すのはいいものの、紙媒体の資料は残っておらず、電気を使う機器は見つけても母星に持ち帰らなければ直せるかどうかもわからなかったので、なかなか思うようにはいかなかった。

 散々街中を歩きまわっていると美術館のような趣の建物を見つけた。壊れた扉から中に入ってみると館内のひときわ大きな広場には巨大な石碑があり、それはこの世界の墓石のように不気味に存在していた。だいぶ埃をかぶっていたが黒く艶やかな石の表面に文字がびっしりと彫ってあったで手持ちの翻訳機で解読をしてみることにした。時間がかかったわりに翻訳はほとんど成功しておらず、ほぼ単語の状態だったが、それにはこうあった。

人間、この星の生態系の頂点、文明の発達、その他の生き物たちを支配、資源として利用、栽培と養殖、飽食、生物実験、遺伝子操作、大気と水の汚染、自然環境破壊、国家間戦争による荒廃……、
 言葉をつないでみるとこの星の歴史が記録しているようだった。続きを読んでみる。
人は傲慢、生き物の反逆、大型生物から微生物まで、進化、大型生物の集団襲撃、食用の動物と植物から未知の毒素、新型ウイルスによる難病、文明の敗北、生態系から人間の追放、生き物たちの革命、ここに記す。

 ……やはり、この星の人類は滅んだのだ、自らの過ちを後悔しながら、きっと、この星全ての生き物の怒りを買い、人間は排除されてしまったのだ。

 気づけばもう日が暮れる。なんとなく嫌な予感がしてきたので急いで宇宙船に戻ろうと考えた。すると突然に咳が出た。とっさに口を抑えたが手が血で赤く染まっている。
 どうしたことだと怯えていると声が聞こえた。人ではなく獣の唸り声のようで建物の外側から聞こえてきており声の主がどんどん増えていくようだった。逃げようとしたが、いつの間にか身体がだるくなって身動きができなくなっていった。

 故郷の星に帰り石碑の話を伝えたかったが、もう無理かもしれないと私の本能が告げていた。


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このストーリーに関するコメント

16/01/15 光石七

拝読しました。
起こりうる未来ですね……
立ち寄っただけの異星人まで攻撃対象になるとは、生き物たちの人間への像の強さがうかがえます。
もしかして、主人公の母星も地球と同じ道を辿ろうとしているのでしょうか。
面白かったです。

16/01/16 アシタバ

光石七様
コメントありがとうございます。
そうですね。主人公の母星も何らかの過ちから目を背けているといずれは…。そして、圧力に反感を持つのは何も人間だけではないかもしれません。私たちの星の未来はこんなことにならないよう祈るばかりです。

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