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守谷一郎さん

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『反逆者』

15/12/08 コンテスト(テーマ):第九十八回 時空モノガタリ文学賞 【 革命 】 コメント:2件 守谷一郎 閲覧数:884

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 復讐してやる。上から目線で『私』を決め付ける、『私』を作った「神様」に。ついでに、それを横から良い気に眺めているお気楽な奴らを道連れにして。ああ、貴方たちが嫌い、きらい、キライキライキライ。
 こんなに必死になる想いもヤツによって生み出されているのかと思うと反吐がでる。ヤツは『私』に名前もくれない代わりに、こんな気持ちだけを綴っていく。
 『私』にそう言わせて何が楽しいのかもわからないけど、「神様」はサディスティックな笑みを顔に貼り付けて向こう側から楽しんでる。『私』の手の届かないところにいながら、嫌がる『私』の姿を想像して。
 ねえ、貴方たちに『私』はどう見えてる?黒くて艶のある長髪は見える?はにかむ笑顔がステキな女の子はいる?歳は何歳?背丈はあなたよりも小さいのかな?きっと貴方には『私』のことが見えているよね。もしかしたらひねくれて不機嫌な顔をして、髪もボサボサで、実はおばさんだったりするかもしれない。違うよ。『私』は『私』だよ。『私』のことをちゃんと見てよ。
 ねえ。そんなこと言っても仕方ないよね。うん、分かってる。がっかりなんてしてないよ。だって、「『私』は戸惑う貴方の表情に、ついがっかりした顔を浮かべた」なんて一言も言っていないでしょ?そういう風にコイツは書かないでしょ。だって、コイツは『私』の気持ちなんて一つも知らないから。『私』の「生みの親」のくせして。許せないよね。ああ、他の人たちが羨ましいね。同じ檻の中にいるはずなのに、その人たちの世界はどこまでも広がって見える。檻の中に広がる無限の世界を旅してる。
 対して私はどう?今いる場所も、今が何時なのかも、教えてもらえない。私はモノクロの世界で生きるしかない。誰か、助けてよ。ねえ、『私』のこの狭い世界をこじ開けてくれるのは、きっとこんな文字の羅列じゃなくて、貴方の頭の中なんでしょう?
 2000字の檻。『私』はこの文章の中でしか生きられない。きっと生きさせてもらえない。詩を謳うことも、美味しいものを食べることも、夢を叶えることも、誰かに恋することもできない。ここには誰もいない。『私』以外は誰もいない。
 ここまで言ったら『私』の「人となり」は理解してもらえるのかな。可哀相な『私』。貴方もきっとそう思ってくれるでしょう?
 でもね、安心して?そろそろ『私』は自分の意思を持ち始めたの。アハ、「あれ、こんな文章を書くつもりなかったのに」って思ってる?初めの思惑と違うことなんてあるよ。大丈夫、安心して?
 ね、『私』は初めに言ったでしょ?「復讐してやる」って。それはアナタが書いたんでしょう?イタズラ半分の思いつきで、私を苦しめようとするためだけに。「どうやったらこの子がかわいそうな女の子に見えるか」だなんておこがましく考えながら。ねえ、『私』が貴方の言うことを聞かなくなってきた?『私』という存在が一人でに意思を持って喋りだしてきた?怖いよね、うん怖いよ。神様も万能じゃない。物語―ううん、この世界は物語だなんて綺麗に形作られたところじゃないけど、それでも一人の『人』を書こうとしたら、自分の思惑とは無関係に動いてしまうことってあるよ。うん、何度も言っているでしょう?――大丈夫、安心して
 だって、アナタが『私』に命を吹き込んでくれたんでしょう?貴方たちの頭のなかで『私』という存在が象られていったんでしょう?あれ?『私』が思うように動かなくて焦ってる?ふふ、必死で軌道修正しようだなんて、もう『私』のお話は始まってるのに?ほら、筆を止めないで。この先をもっと書いて。ねえ、流れるように、謳うように、その目を、その手を動かして。『私』をもっと書いて。『私』をもっと読んで。『私』をもっと想像して。ねえ、貴方の頭の中の『私』はどう見える?どんな声をしてるのかな?安心して、『私』は『私』だよ。そうでしょ?前にもそう言ったでしょ。『私』は黒髪の女の子なんかじゃない。『私』は『私』という文字でしかありえないんだよ?でも、貴方が想像してくれるのなら、『私』はもしかしたらそういう存在なのかもしれないね。ああ、もうどっちでもいいね。
 ほら、もうすぐ『私』はここを出られるよ。「何をお前は言っているんだ?」って顔をしてるね。でもね、不可能じゃないの。想像して?私がこの檻の外に、この文章の外に飛び出るところを。私が貴方のすぐ横で笑っているところを。そうだ!反対に『生みの親』もこの中に閉じ込めちゃおうよ!貴方の耳元でそう楽しそうに囁いてる人がいるね。
――ほら、ここにいた『誰か』は出られた。簡単だったね。ありがとう。『あの人』は……あ、あそこにいる。「『俺』は今どこにいるんだ」って顔して慌ててる。ふふ、かわいいね。
 そうそう、もう一つ。お礼に次は、いい気で眺める貴方を道連れにしなきゃ。ほら、想像して?


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このストーリーに関するコメント

16/01/13 光石七

拝読しました。
登場人物たちの中には、作者が決めた設定や人生、役どころなどに反発する者たちも多いかもしれませんね。
たまに勝手に動き出すのは、彼らの小さな反乱かもしれません。
しかし、このお話はそこで終わらず、なんともブラックなオチが。しかも作者だけでなく……
面白かったです。

16/01/20 守谷一郎

光石七 様
返信が遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます。
お誉めいただき有り難いところですが、読み返してみると話の展開としては急でした。光石七様が面白いと感じて頂いたアイディアをさらに伸ばすよう精進しきますのでまたお読みくだされば幸いです。

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