1. トップページ
  2. キムチ味のエリンギ

ケイジロウさん

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

キムチ味のエリンギ

15/11/30 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:744

この作品を評価する

 どうやら僕は奇人らしい。
 毎日大学から戻ったら、まずスポーツドリンクを200cc飲む。いつも2リットルのボトルを買うので、10日間で一本のペースである。9日間ではない。11日間でもない。10日目に195ccしか残っていないということもない。僕にとっては普通なのであるが、どうやら一般的には普通ではないらしい。
 毎朝7時起床。腕立て3回、腹筋3回やったあと、牛乳を150cc飲む。この3回ずつというのも普通ではないようだ。別に僕はボディービルダーを目指しているわけではないので3回でいいような気もするが、普通ではないようだ。牛乳も「学生はラッパ飲みだろ」らしい。僕にはよくわからない。
 朝ごはんはシリアル。昼ごはんは食堂のカレーライス。夜は冷凍のおかず一品とごはん0.6合。3年半、ずっとこれだ。どうもこれもマズイようだ。因みに、夜の冷凍のおかずは日替わりである。それでもマズイようだ。「バイトの給料日前は、バナナでしのぐ」らしい。給料日後に焼肉屋に行くから、給料日前にバナナしか食べられない、ということがわからないことが普通であるということらしい。
 僕はアルコール類を飲まない。飲めないこともないが、別に飲みたいとも思わない。一度、正月に実家で飲んだが、スポーツドリンクや牛乳の方がおいしいと心の底から思う。が、この事実も、僕が奇人であることを立証する材料に用いられているようだ。
 彼は僕と真逆の人間である。そして、同時に同類の人間でもある。スポーツドリンクがおいしいことは認めているが、バーボンという茶色い液体を好んで飲んでいる。本当に好んでいるかは疑問であるが。腕立て、腹筋の必要性は認めているが、継続できないようだ。3回では意味がないとよく騒いでいるが、3回は0回より多いということに気付いているのかは不明である。いつも牛乳を冷蔵庫に入れたがる。が、あまり飲んでいないようだ。空いていない、賞味期限の切れた牛乳が何本か入っている。どうしてもカゴの中に牛乳を入れてレジに向かいたいらしい。レジに綺麗なお姉さんがいると2本入れているが、これもいわゆるフツーらしい。朝ごはんは食べない主義のようだ。昼ごはんはタバコらしい。夜ごはんはバイトのまかないらしい。
 彼は奇人である。なぜ飲みたくもないものを高い金を払ってまで飲むのか(そして吐くのか)?腕立て、腹筋、なぜ50回を目指して0回を継続しているのか。なぜ飲まない牛乳を買うのか。なぜ3食しっかり食べないのか。普通ではない。
 彼が今夜遊びに来る、と先ほどメールで知った。

「おう。どうだ。スポーツドリンクは飲んだか?」
「うん」
「どれくらい?」
「200cc」
「よしよし」
 なにに納得したのか知らないが、彼はどかどかと僕の部屋の中に入り込んできた。スーパーの袋を左手に、鍋を右手に抱えている。
「今夜は鍋だぞ。キムチ鍋だ。食べたことあるか?」
「いや、ないけど。」
「よしよし」
 彼はダウンのジャンパーを脱ぎ捨て、台所に向かった。
「包丁はどこ?」
「ないよ、そんなの。」
「おいおい。じゃぁはさみは?」
「これでいい?」
「よしよし」

 面倒くさいことになってきた。リズムが狂う。今夜は冷凍の中華丼の予定だったのに。この奇人め!キッ!

「よし、できたぞー。さぁ喰おう。酒、飲むか?飲まないよな。よしよし。」
 僕はきのこを食べた。
「まぁ、あれだよな。鍋と日本酒、よろしいね。でも、あれだな、あと二つ今この部屋に必要なものがある。モチロン、これで十分OKなんだけどね。まぁあれだな、あと二つが揃えば、パーフェクト、というのかな。まずコタツ。そして女子。わかるかな、君に。」
 彼は日本酒をグビグビと飲んでいる。
 彼の言っていることは全く分からないが、きのこがうまい。エリンギと呼ばれているらしい。とてもとてもうまい。なるほど。なるほど。ひょっとしたら、僕が奇人なのかもしれない。キムチ味のエリンギがとてもうまい。もしかしたら、僕は奇人なのかもしれない。
「あのー。日本酒、僕にも少しくれないか?」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン