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空乃星丸さん

私がこの時空に現れて、地球は太陽の回りを60周しました

性別 男性
将来の夢 ピンピンコロリ
座右の銘 われ思う、x”&%

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スペースウーマン

15/11/23 コンテスト(テーマ):第六十九回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 空乃星丸 閲覧数:730

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「なぜ私がヒロインになれないわけ」
憤慨した様子でスペースウーマンは声を荒げた。
「まあまあ、落ち着いてください」
スペース星の派遣会社の担当者がなだめた。
「だって、隣の星の彼らはあんなに地球とかで怪獣倒して活躍して、結構お給料もいいのに。私だって光線出せます。地球の滞在時間は10分ですから、彼らより性能も良いのに。私はこの星のパートでやっとの生活。あなただって彼らのうわまえはねて生活しているくせに」
スペースウーマンはこの一帯の星々に拠点を構える派遣会社の担当者をなじった。
「そう言われましても、需要と供給のバランスでして、オファーが無いことには。この星もさびれて、大した産業もありませんし。今のあなたのパートのお仕事だって、やっと探してきたんですよ」
担当者は言った。彼女のパートのお仕事は、手から出るセシウム光線で缶詰のふたを溶接する仕事であった。時給、950円。特殊技能と言うことで、通常800円のところ
950円。しかし、地球のテレビで有名になった宇宙のヒーロー兄弟とは全くギャラが違う。彼女のふくれっ面を見て、担当者が、
「だから、需要が……」
「分かったわ!需要作ればいいんでしょ!」
と言って自宅に帰った。

 自宅に帰ったは良いが、どうしたものかと長い間考えた。
やっとスペースウーマンは思いついた。
……そうか。私がヒロインのお話を書けば良いんだ……
気が付くとすぐに、鉛筆と紙を、と言っても裏の白い広告を持ってきて、書き始めた。
が、なかなか良いアイデアが浮かばない。どんな作文もそうであるが、SF小説も、あらすじを考え、起承転結、プロットを考え、登場人物を考え、オチも必要である。テレビのあのヒーローの物語は結末は決まっているからこの点かなり楽である。が、スペースウーマンとなると、光線で怪獣倒して、スワッチョと言って宇宙に帰って行くのはもう使えない。差別化が要求される。というように、いろいろ考えた挙句、結構な時間を費やし、広告のうらに第一話の下書きが完成した。少なくとも原稿用紙に書かなくてはだれも読んでくれないだろう。仕方なく、地球まで原稿用紙を買いに行くことにした。

やっぱり、飛ぶときはなんか掛け声が欲しい。
「行くざます」
と言って地球に向かった。光速の数倍で飛べる。一直線にスペースウーマンの星から5分そこらで地球の、日本の、名古屋の外れの、ビルにある文房具屋に向かい、店に入る時身長を165センチにした。そのままの大きさだとビルを壊す。中に入ると
「わーいテレビの怪獣倒すヒーローだあ」
何人か子供がじゃれついたりするのを、
「ちゃうわい、うちはスペースウーマンじゃ。ヒーローじゃねえ。目下溶接工じゃ」
むげに子供らを払い飛ばし、邪険にされた子供らはビービー泣き、その親達が悪態をつくのも顧みず、店長らしき人の、
「今日はヒーローのイベントないはずですが」
などと言う、むかつく言葉を聞き飛ばし、目的の原稿用紙をつかむと、レジに行った。
レジで、はたと困った。
「ああ、お財布」
と言うや否や、驚く人々をしり目に、
「行くざます」
ビルの窓のガラスを突き破り、一直線に宇宙の向こうの星の我が家に帰った。1DKの部屋の窓に、ハンガーで吊るした作業服のポケットから財布を取り出すと、再び、
「行くざます」
と言って超光速で、地球の文房具屋の、自分が破った窓から入った。
……原稿用紙を危うく万引きするところだった……

 165センチの体のまま、超光速で来たので1分かからずに店のレジにいた。手で持っていたはずの原稿用紙は大気圏に突入した際、空気との摩擦で燃えてしまっていた。手を開くと燃えカスがレジの机にぱらぱらと落ちた。
「この燃えカスのお代頂戴します。じゃないと万引きです」
と店員が無機質に言い放った。スペースウーマンは切れた。
「なによ、その言い方。それって、お客に向かって言う態度。店長を呼びなさいよ」
「はあ、店長の鈴木ですが、先ほどお帰りなる時壊した窓ガラスの弁償も……」
店長はさっきからそこにいた。レジ係がつっけどんになるのも当然である。ガラスをぶち破ってとんずらしたように見える。万引きして逃げた、としか思えない行動である。
「帰ったわけじゃないわよ、遠い星までお財布を取りに行って戻ってきたのよ。ちゃんとここにいるじゃないの。あったまにくるわね。いくら」
「原稿用紙は150円と消費税で157円です。それと窓の……」
スペースウーマンは160円を置き、
「窓は直すわよ。おつり」
と言ってガラスの破片を集め、床に並べてセシウム光線で器用につなぎ始めた。ガラスの板の形が出来始めたが、ジグゾウパズルの一部が足りない。壊れた窓から下を見ると、頭にパズルのピース、じゃなくガラスの一部が頭に刺さったまま立っている男が見えた。
回りに人が集まっている。
「あそこにあるじゃん。行くざます」
と言って窓の破れたところから降りた。男があたまから血を出しヒーヒー言っている。回りの人もどうしたものか迷っている。スペースウーマンは男の頭からガラスを抜き、ヒーヒー言っている男の傷口をセシウム光線でふさいだ。多少の髪の毛は燃えたが、見事に傷口は治った。男はヒーヒー言わなくなった。

「行くざます」
ガラスを抱えたスペースウーマンは売り場に戻った。そして、男の頭から持ってきたジグゾウパズルの最後のピースを、直したガラス板に当てるとピタリとはまり、完璧な長方形のガラス板になった。つなぎ目をセシウム光線でつなぐと、周りから歓声が上がった。
スペースウーマンはガラス板を窓枠にはめようとした。若干窓枠が壊れたのか、はまらない。ここは力づくで押し込み、落ちないように窓枠の金属をセシウム光線で微妙に溶かしガラス板を固定した。見事に窓は直った。
また、歓声と拍手がなった。スペースウーマンは歓声にこたえるかのように手を挙げ、集まったお客たちに挨拶した。レジにおつりの3円を取りに行った。おつりとレシートを受け取ると、こんどはレシートが燃えないよう、胸のおおきな蓋を開け、この中にレシートなどを入れ、蓋を閉めた。やがて胸のタイマーがピコピコ鳴った。
「行くざます」
と言って、また窓をぶち壊して、自分の星のIDKの部屋に戻った。

「あーあ、今日はつかれたわ。地球に何往復したかしら。レシート大丈夫かしら」
胸から燃えていないレシートを出した。
「あれ、原稿用紙がない。まっ、いいっか。今日はもう寝よ」
と言って睡眠カプセルの中に入ると、量子発光電灯の電源をリモコンで切った。


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