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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで3年目に入りました。これからも勉強を重ね、たくさんの作品を書いていけるよう頑張りたいと思います。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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掟破りなロマンサー

15/11/16 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:6件 冬垣ひなた 閲覧数:920

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 遥か昔、僕らの星は戦争でなくなり、生き残った民は宇宙に活路を求めた。
 惑星ガーヴ。危険生物が多く気温差の激しいここでは、農作物を育てるような生活は望めず、祖先は地下に街を築き上げ、飢えをしのぐようになった。


 ガーヴ歴9438年、かつて天翔けた文明は都市戦争を繰り返し衰退、僕らは原始的な狩りをしながらその日暮らしを続けている。
 地下都市レネティアは今、食糧危機に陥っていた。うん。そんな事は毎年だ、何を今更感はあった。けれど、放っておくわけにもいかない。仮にも次期女王だしさ。
 そこで僕はガーヴ研究の第一人者である、カイ博士に相談した。
「西の都に、ルッカの涙があると聞きました。それを分けてもらいましょう」
 ガーヴの秘宝とされるそれは、輝くような不思議な色の岩石らしいが、何と食する事も出来て、1つあれば子の代までレネティアの民の食糧が賄えるという位に貴重なものだ。カイが地図を手に始めた説明は、行く前から死亡届が受理されそうなルートだ。
 とんでもなく無謀。
 さもなくば、阿呆だ。
「仕方ありません。メル様には、阿呆になって行っていただくしか」
「ぼ、僕が行くの?」
「こういう場合王族が行くのが筋というものです」
 どういう訳か、とんとん拍子に話は進み、3日後には、僕とカイは砂漠のど真ん中で砂まみれになっていた。


「暑くなくて良かったですね」
 どこまでも広がる大きな影にカイは言うが、僕の足取りはおっかなびっくりで仕方がない。
 クリッツァ……雲まで届くほどの巨人の巣窟を、今まさに僕らは横断している。幸い彼らは大きすぎて僕たちを気に留めはしないが、いつ踏み潰されるかも知れないのだ。
 彼らが雷鳴にも似た声を上げる。会話しているのか?
「やばいよ、やばいってっ!」、僕は半狂乱でうろたえるがカイは平然としていた。彼女の神経どうなっているんだ?
「ほら、あれをごらんなさい」
 空を見るとプーンと耳に残る羽音を立て、妖精が飛んでいるのだった。妖精はクリッツァに友好的だとおとぎ話にも残っていたが本当だったんだ。
「彼らに手伝ってもらいましょう」
 カイは妖精語を習得していたらしい。話し合いの後、その長く細い脚に捕まって、ようやく砂漠を遠ざかることが出来た。

 その日僕たちは空の旅を楽しみ、次の日は果てしない草原を渡った。河を渡り山を越え、巨大生物に遭遇しながらも難を逃れ、僕が人生の運を全て使い果たし西の都に辿りついたのは5日後の事だった。幸い丁寧なもてなしを受け、僕が事情を説明すると、皆の顔に困惑が浮かんだ。
 駄目……か。
 諦めかけた時、僕らは都からほど近い森へ案内された。
「うわぁぁぁっ!」
 木々が開けたその広場には、目を覆いたくなるほどキラキラとした球体が連なって並んでいるのだった。色は青、赤、透明など様々で、背丈の何倍、いや何十倍もの高さがある。
「こ、これがルッカの涙?」
 秘宝というか、遺跡……?。
「古代の民の礼拝所、みたいですね」
 草原の上に色づいた輝きを落とす秘宝は、今の僕らでは不可能な研磨で作られている。
「うわっ、硬い。食べられないよ、これ」
「メル様、かじらないでください」
「いや、だって」
 僕らはこのために危険を冒してはるばる来たんじゃないか!
 言いかけてやめたのは、秘宝に向かいひれ伏す民の姿を見たからだった。
 民は言う。
「争いばかりの地に突然この秘宝が現れました。飢えは相変わらずですが、こうしていると心が洗われ穏やかな気持ちになれるのです」
 その言葉に、僕は余計に、秘宝を下さいとは言えなくなった。
 飢えがやめば、争いはなくなると思っていた。
 でも多分、そうはならない。
 美しさに惑う前に、僕らは西の都を去ることにした。
 僕らの愛はレネティアの民の為に、それが掟だ。
 けれど秘宝の事は、僕らの記憶の奥底に深く、深く沈めた。
「僕は、腹の飢えより、心の飢えの方が恐ろしい気がしてならないんだよ。腹が減ってる間はさ、忘れていられるんだろうけど」
 でもこの旅は悪いことばかりじゃなかった、運はまだ残ってたんだ。

  ◆
 プーン。バシッ!いやだわ、女は残り蚊を追い払いながら泣いてる娘の手を引く。
 アスファルトの上はお気に入りのチョコ菓子「きのこの山里」がばらまかれていた。
「きのこ、きのこちゃん!」
「ばっちいでしょ、諦めなさい」
 この子はもうっ!砂場に遊びにきたは良いけど、誰かの置いてったビー玉をキャンディーと間違えて食べようとするし。
「あ、アリさんだ」
「ほら。もうアリさんにあげちゃいなよ」
 娘は名残惜しげに2匹のアリに手を振った。
  ◆

 そうそう。僕らは、溶岩石地帯で「幻キノコ」という新たな秘宝を発見したんだ。これで今年の冬は無事に越せそうだよ!


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このストーリーに関するコメント

15/11/16 冬垣ひなた

≪補足説明≫

左の写真は「Pixabay」からお借りしました。
右の画像の背景は「写真AC」からお借りしました。

15/11/17 草愛やし美

面白いですねえ、拝読しました、冬垣ひなたさま。

なるほど、どんな星の秘宝なのかとわくわく感と不思議感いっぱいで読み進みまして、オチで苦笑?なのかな、頷きました。なるほど、そうなのねえ、そうですよね、彼らにとって秘宝そのものに違いない物質のはず……。
創作上、私的にいろいろあって気持ちが落ち込んでましたが、とても楽しめました、ありがとうございました。

15/11/17 冬垣ひなた

草藍やし美さん、コメントありがとうございます。

最初普通にアリさんの擬人化を書こうとしたのですが、
「小さくて化石があまりないから進化が解明されていない」というのを読み、やる気スイッチが入って、
書き直しもしましたが、作っていて私も一番楽しかった作品です。
草藍さんのお役に立てて良かったです、読む方が元気になれるものをこれからも作りたいと思います。

15/11/23 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、拝読しました。

こういうファンタジーもいいですね。
とりあえず「秘宝」を探しにいくお話はわくわくさせてくれます。
最後のオチも効いてました、きっと「きのこの山里」は彼らに気に入ってもらえることでしょう。

楽しいお話ありがとうございます(=´▽`=)ノ

15/12/01 そらの珊瑚

冬垣ひなたさん、拝読しました。

途中、ガリバー旅行記みたいだなあと思っていたら
最後のおちに納得しました。
>腹の飢えより、心の飢えの方が恐ろしい
深い言葉だと思います。飢えなくなっても、争いはなくならない。悲しいことですが。

15/12/02 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

冒険ファンタジーは読むのも書くのも楽しいですね。
これか書いた後に偶然「きのこの里」というきのこ料理店を発見し、
彼女たちの気持ちになって今度食べに行こうかと思います。
修正含めいつもの2.5倍は書いたヽ(‘ ∇‘ )ノ 、なので楽しんでいただけて良かったです。


そらの珊瑚さん、コメントありがとうございます。

あんまり唐突なオチでもいけないなと思い、整合性は出るように心がけました。
台詞については最近いろいろあって、それが反映したのだと思います。
欲は数えはじめたらきりがありません。
こういうことを分かっている分、メルはいい女王になるんじゃないかと期待します。

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