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雪代密華さん

何かにつけて自分をかわいがる文筆家(自称)

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幼馴染

15/11/16 コンテスト(テーマ):第六十八回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 雪代密華 閲覧数:544

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 茅野歩は俺の幼馴染である。
 唐突に目前のオトコオンナの説明を心中でしてみて、なんとなく気恥ずかしくなり、顔を伏せた。
「ロリババアになりたい」
「……何言ってんだお前」
 当然のように俺の部屋で俺の買ったスナック菓子を貪り、俺のゲームを俺のコントローラで遊ぶこの女。
 茅野歩、23歳、独身、コミュ障。何故俺がこいつのプロフィールを考えているのか、とやはり心中で叱咤した。
「こうさ、やっぱ女は小さくて胸がでかくないといけないと思うワケ」
「うるせーよオトコオンナ」
 直後、無言でコントローラが俺の顔面めがけて飛んでくる。ひょいとかわし、壁にぶつかる音を聞いた。
 モニタのアクションゲームでは、デッドエンドの文字が踊っている。人に八つ当たりするから、オトコオンナと言われるんだ。
「なあ、なんで私モテないんだろ」
 歩が言った直後、唐突に玄関の扉が大きな音をたてて開かれる。兄だ。兄が家にやってきたのだ。
 歩と同じ23歳の俺の、一個上の兄貴。
「おっあゆちゃん来てんじゃん」
「あっは、はいっこんにてぃは」
 変な噛み方をするもんだ。歩はなぜか、俺以外の人間にアレルギーでもあるのか、全くと言って良いほど会話が不能だ。
 兄貴はそんな様子も微笑ましい、といった様子で、俺にビニール袋と左手を突き出す。
 俺はビニール袋を受け取り、左手に1000円札を置いた。
「まいどありっ。じゃあね、あゆちゃん。今日もかわいいね」
「ひゃっ、いや、そそ、そんなことひゃ」
 顔を真赤にして手を顔の前でブンブン振る歩。こいつはなんだ、兄貴のことが好きなのか。
 早々に兄は部屋を去り、歩は大きなため息をひとつついた。
「なんで俺以外の人間とは喋れねえんだよ」
「お前を人間としてみていないからな。お前が私を女扱いしないように」
 むくれてそっぽを向いてしまう。そういったところが可愛いんだよな――と思い、ひとりで恥ずかしくなって、俺まで顔を背ける。
「……ごめんって」
 一歩にじり寄る。一歩引かれる。長い攻防戦の始まりだ。
 コントローラを拾いに行き、また歩に差し出す。
 勢い良くぶんどって、リトライボタンを押されてしまう。思いの外早く機嫌が直ったようだ。普段ならコントローラを差し出すと立ち上がって部屋を出ていき、廊下でむくれてしまうのに。
「そのビニール袋何」
「ああ、ビールだよ。兄貴が近くにいるって言うから、頼んだ」
「寄越せ」
 画面から目をそらさずに、左手をこちらに差し向ける。俺はその手に、冷えたビールを置いた。
「なあ、なんで私モテないんだろ」
「2回めだぞ、その質問」
「それだけ思い悩んでるってコト」
 銃声が部屋に響く。うまいことヘッドショットが決まったらしく、小さくガッツポーズするのが見えた。
「そんなに私ってダメかな」
 珍しく弱気だ。いつもならつんけんしていて、取り付く隙もないのに。
 ポニーテールにした長い髪を解いて、俺の方を向いた。思わずどきっとする。
「何顔赤くしてんだ、ばか」
「うるせーよオトコオンナ」
 コントローラが飛んできた。今度は顔面にクリーンヒットしてしまう。
 思わず髪を解いて振り向いたその姿にときめいたなんて、口が裂けても言えない。だが。
「……あゆは、かわいいよ」
「はあ」
 大声を出して俺を睨む。勢い余って立ち上がり、俺のいる机の方までやってきた。やっぱり背が高い。俺と大して変わらないじゃないか、なんて呑気に考えている隙に、目の前に歩は立ちはだかった。
「お、おまおま、お前に言われても、嬉しくなんかねーんだけど」
 顔を真赤にして、仁王立ちになる歩。可愛いやつである、これが彼女なりの愛情表現なのだ。俺は思わず笑みをこぼしてしまう。
「何ニヤニヤしてんだボケナス」
「あゆ、かわいいよ」
 真っ赤な顔が可愛くて、ついいじわるしてしまうのも、いつものことだった。


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