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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

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開闢!どれでも鑑定屋

15/11/11 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:787

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 運送業に務め十年。今日、僕は今までで一番の大役を任された。
『開闢! どれでも鑑定屋』という番組がある。お宝を鑑定して金額を発表するという番組だ。
 その番組に出演するお宝を僕が運ぶ事になったのだ。運ぶものは古代王国の秘宝とされるツボ。本物なら数千万円はするだろうと言われている。
 そのツボを依頼者のいる大阪から、テレビスタジオのある東京まで運ぶ手はずになっている。もちろんツボは壊れ物。下手な運転をして壊す訳にはいかない。僕は緊張していた。

 そして番組収録当日。僕は梱包されたツボをトラックの荷台に積んでいた。
「ごほっ、ごほっ」
「おい、そんなので大丈夫かよ」
 僕が咳き込むと、同僚が茶化すようにそう口にする。少し風邪気味ではあったが、風邪程度でこの大役を降りる訳にはいかない。僕はトラックに乗り走り始めた。
 トラックを走らせて一時間。僕は薄っすらと汗をかいていた。今僕は何千万円とするツボを載せてトラックを運転している。間違っても事故なんて起こす訳にはいかない。少しでも車が揺れる度に僕は肝を冷やした。

 高速道路に入り、僕はようやく落ち着いて走れるようになってきた。しかし気を抜くような真似はせずトラックを走らせる。
 するとETCレーンで渋滞が発生していた。
(カードでも入れ忘れたのかな?)
 そう心の中でつぶやきながらレーンの渋滞に並ぶ。
 それと同時に、後ろから強い衝撃が走った。
 一体なんだ。慌てて後ろを見る。するとそこにはこのトラックの荷台に突っ込んできている乗用車の姿があった。
 高速道路で急に止まったものだからオカマを掘られたのだ。僕は慌ててトラックを飛び降りた。
(ツボは? ツボは!)
 僕が外に出ると突っ込んできた乗用車はバックし始めた。どうやらそこまで速度が出ていなかったおかげで、車自体は壊れていなかったらしい。それじゃあもしかしたらツボも。そう期待を込め荷台を開ける。
 そこには無事に梱包材に包まれたままのツボの姿があった。
「よ、よかった……」
 思わず力が抜けその場に座り込む。すると突っ込んできた乗用車のドライバーが車から出てきた。
「あの、大丈夫ですか? 警察呼んだ方がいいですよね?」
 おどおどと若者風のドライバーが問いかけてくる。だがとんでもない。警察なんて呼ばれたら番組の収録に間に合わなくなる。僕は彼の肩を思い切り強く掴んだ。
「事故はなかった。良いね?」
「え、でも」
「事故はなかった。OK?」
「は、はい」
 僕は無理やりドライバーを納得させると、再びトラックに乗り高速道路を走りだした。

 そうこうして、なんとか収録の時間までにトラックは東京のテレビスタジオまで到着した。これでようやく一安心だ。僕は肩の荷が下りた気分でトラックから降りた。
「なんだか荷台が潰れているように見えるが」
「気のせいですよ」
 テレビ局スタッフの疑問を無視し、僕は荷台から依頼されたツボを取り出した。
「こちらがご依頼の品で、はっ、はっ……」

 はっくしょん!

 勢い良く飛び出たくしゃみと共にツボが手から滑り落ちる。そのままツボは宙を舞い、引力に導かれていく。そして地面に激突。ツボは見事に割れた。
「あ、ああ」
 言葉を失う。するとその光景を眺めていた人物がいた。
「なんて事をしてくれるんだ!」
 声を荒げたのは、大阪からやって来た依頼主だった。依頼主は顔を真っ赤にして僕に詰め寄る。
「このツボがいくらするかわかっているのか! この責任は取ってもらうからな!」
 依頼主の言葉に目の前が真っ暗になる。終わった、何もかも。
 そう絶望しかけたその時、後ろから声をかけられた。
「どうされました?」
 声をかけてきたのは『開闢! どれでも鑑定屋』の鑑定士だった。
「どうされたも何も、この男が秘宝のツボを割ってしまったんです!」
 依頼主が今度は鑑定士に詰め寄る。すると鑑定士は割れたツボの破片を見て、こうつぶやいた。
「こりゃニセモノだね。それも悪質な」
 その一言に場の空気が変わる。
「え? ニセモノって……」
「言葉のままです。せいぜい千円がいいところのツボですね」
 鑑定士の言葉に依頼人の顔が今度は真っ青になる。こうしてこの場は一端幕引きとなった。

 依頼人が意気消沈しながら帰って行った後、僕は鑑定士に声をかけた。
「助かりましたよ。まさかあのツボが千円のガラクタだったとは」
 そう言ってわははと笑う。本当に良かったと僕は心から安堵していた。
「バカもの!」
 だから鑑定士が突然声を荒げた時、僕は心底驚いた。
「あれは貴方をかばうための芝居に決っているじゃないですか! 本当はあのお宝は数千万円以上する本物の秘宝。それをあなたは割ったんです!」
 鑑定士の予想外の言葉。僕の背中に冷たい嫌な汗が流れた。


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