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seikaさん

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性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
座右の銘 朝、一杯のコーヒー

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あの、青いSeptember

15/11/02 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:0件 seika 閲覧数:577

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サファイアのような青空広がる9月の昼下がりの体育館、天井の証明に照らされて白の半そでシャツ濃紺の短パンに着替えた皆が青々とした風の中に包まれている。キャッキャッという歓声がそんな青々とした空間の中を閃光のように煌く。しかし私は食べ過ぎて胃が苦しいまま半そで短パンに着替えて体育館に来た。この格好になった以上はもう見学は出来ない…。
「見学したほうがよかったかなあ…。」
改めてそう思った。その日の給食は先生が私の班に来たのでいつものように机の下に置いた粉ミルクの缶に給食を放り込むという抜け道ができなかった。それで胃がはち切れそうになるまで食べなくちゃならなかったのだ。とにかく小食の私には給食は苦痛だった。
この日の体育はチームに分かれてパスケの試合だ。ウチのチームには大柄でバスケ部の新井さんがいる。腕力だけではなくショートカットの新井さんはどことなく男勝りな感じがいて、威圧感が有る。
「ほら、イイダちゃん、パス。」
と太く男っぽい新井さんの声が響く。ふと振り向くと、ボールが凄い勢いで私に飛んできた。細身の私には到底パスは受けきれない。勢いのあるボールは私の腕を打った後、お腹を直撃した。衝撃が給食を食べた後の胃に走る。あとは良く覚えていない。とにかく苦しくて体育館に倒れこんでしまう。お腹だけではなく全身がヒヤッとして何か生命の扉がぴしゃっと閉じられるような感覚に襲われる。気が付くと両手で状態を起し、体育館の床にぼとぼとと戻してしまっていた。
「ああ、やっちゃった…。」
あの生命の扉が閉められるような感覚は去って今度は何か夢の中にいるような、というよりずっと子供の頃に返った様な気持ちが私を包み込む。体育館の光景が何か現実なのか夢の中か解からない。時間の流れもそれまでと違ってゆっくりだ。でも改めて床を見て、私が汚してしまった事に気が付く。が私は頭がぼーっとして考えられない。
「大丈夫。」
皆が駆け寄ってくる。
「…。」
「大丈夫か、胃を打ったのか?」
と首からホイッスルをぶら下げたF先生も駆け寄る。もう美香はバケツと雑巾を持って不安そうに私を見ている。
「大丈夫…。」
私は友達の誰かが差し出したハンカチを持ってそして天井の蛍光灯を見ている。蛍光灯からは光が噴水のように流れて見える。なにか懐かしいような夢の中にいるような感覚だ。

そして昼下がりの保健室
「それで食べ過ぎて苦しい感じがあったのに、体育に出たの。でボールでお腹を打ったの。」
白衣を着た保健室の先生はベットに私に問診する。しかしわれに返った私の心の中は皆にすまない、そして恥ずかしい…その気持ちで一杯だった。
「…とにかくあんたやせっぽちだからたくさん食べてもっとしっかりしなくちゃっ…。しばらく寝て、落ち着いてから教室に戻りなさい。次の時間何なの?」
と説教じみたことを言う先生。がしかし私はあせっていた。皆に謝らなくちゃならない…イやな思いさせて迷惑かけたんだから…恥かしいけど…。時計を見ると、もう数学の授業は始まっている。
そして私は保健室を出て更衣室で着替えた。いつもよりも念入りにセーラー服のスカーフを調える。しかしそうしたところで体育館を汚したという罪は消し去ることが出来るものではない。ふと三日着ているセーラーの夏服のあちこちの汚れが気になる…。
教室に入るのが恐かった。私が体育館で戻したことを男子にバレて、冷やかされるんじゃないかという不安があった。
教室の中からО崎先生の声が聞こえる。そっと後ろから入る。
「おい、飯田、大丈夫かっ?」
岡崎先生のめがねの奥から届く優しいまなざしに心が温まる。皆が私のほうを見る。男子の視線が気になる。私が戻したことを知っているんじゃないかって…。席に座るとノートを端を小さく破いて『みんなごめんね、私が汚したので嫌な思いさせて イイダより』と鉛筆で書いて、斜め上のユキに渡す。ユキはその紙片をやはり斜め上のアッコに渡す。
そして数学の授業が終わる。まっさきに大柄の荒井さんが男の子みたいに太い声で
「イイダちゃん、ゴメン、大丈夫だったっ?」
と謝りにきてくれた。
「うん。」
「イイダちゃん、細いモンね。ゴメン。」
「うん。いいのよ。」
他にも何人かの人たちが私を案じてきてくれた。
「うん、大丈夫。」
皆が私の肩をたたいてくれる。男子は男子で向こうのほうでダベっている。どうも男子にバレていなかったようだ…。その日は美香と一緒に帰った。
「美香、ゴメンね…ヤな思いさせて…。」
「うんいいよ、それより大丈夫だった?」
そして夕暮れ迫る9月の青空はどこまでも青かった。


 


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