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三角形の中の沖縄

15/10/05 コンテスト(テーマ):第九十二回 時空モノガタリ文学賞 【 沖縄 】 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:889

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 昨年の秋まで、僕には3年ほどの付き合いになる彼女がいた。その子は、「沖縄のタイ式マッサージスクールに行くことにしたの」と僕から離れた。たまに電話やメールで連絡を取り合うものの、それぞれ仲間に囲まれた生活をしているせいか、「支えあう」といった感情は全くもってなかった。お互いに相手を必要としていなかったことは明らかであった。
 そういう状況の中、僕は決断した。僕は彼女に手紙を出した。「別れよう」と。電話やメールという方法もあったが、手紙の方が正式っぽいのでそれを選んだ。別れたい本当の理由も、うその理由も特に書かなかった。
 何日か後、「わかった」と沖縄から冷たいメールが届いた。「なんかスッキリした」と文末に。強がりで言っていないことはすぐに分かったので、僕もなんだかスッキリした。が、まだ本戦のスタートラインに立っただけである。
 
 話はさかのぼるが、僕はその子が沖縄へ発った一か月後、北海道へ向かった。僕は北海道でジャガイモ収穫のバイトをすることにしたのだ。沖縄で働くという選択肢もあったが、その子はその子なりに沖縄での生活を楽しんでいるようだったので少し嫉妬して、「沖縄から一番離れた場所で働いて、嫉妬させてやる」という力みから北海道を選んだような気もする。
 北海道では、僕はプレハブではあるが6畳ほどの個室に住んでいた。そのプレハブは、雇用主である農家宅の敷地内にある。隣にあと2つプレハブが並んでいて、同僚の和夫と聡がそれぞれ住んでいた。母屋の2階には、同僚の喜美江と佳子が住んでいた。我々は、同世代ということもあり、仕事後、プレハブの前にあるピクニックテーブルを囲んで、くだらないおしゃべりをしていた。過去の話、これからの話、職場の愚痴、人生とは、等々オープンに話し合える仲になっていった。
 僕は時とともに佳子に好意を持ち始める。佳子は沖縄出身で、北海道の秋は、沖縄の真冬より寒いといつも嘆いていた。佳子もこちらに好意を持ち始めていると無根拠に信じていた。そう信じた方が圧倒的に一日が楽しくなるし。ジャガイモの収穫が永遠に続けばいいのに、とひそかに願った。従って、沖縄にいる彼女との「ほう・れん・そう」はいつの間にか、義務化していった。

 沖縄からの冷たいメールが届いた次の日の朝、僕は休みだというのに朝早くに目が覚めた。母屋のキッチンでコーヒーを入れ、プレハブの前にあるピクニックベンチに腰を落ち着け、タバコに火をつけた。その時、和夫のプレハブのドアが開いた。「和夫も普段通り目が覚めちゃったんだな」と思った。が、中から出てきたのは和夫ではなく佳子だった。僕と一瞬目があったが、すぐに下を向いた。そして、何も言わず母屋の方へ小走りに向かっていった。
 僕も、和夫にばれぬようソーっと自室へ向かった。

 ジャガイモの収穫早く終わんないかな


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