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好きなものを好きなときに。
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15/10/01 コンテスト(テーマ):第六十五回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 三条杏樹 閲覧数:764
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晴天。どこからどう見てもいい天気だ。今日しかないだろう。重い盾を無理やり背負った。腰が痛い。これを持ちながら旅とか、無理だ。とりあえず、母に挨拶をしなければ。「おはよう」にこにこ。いつもと変わらぬ笑顔を見せる母。ぼくは胸を張って言った。「ぼく、きょうから たびにでるよ。まおう を たおすんだ」母は少し驚いて、それから食料を持たせてくれた。いつか、この日が来ると覚悟していたらしい。正直、できれば引き止めてほしかった。一体どうすれば、自分の子どもが魔王を倒すために旅に出るだろうことを予期する親がいるんだ。ただでさえ剣に盾で荷物が重いのに、食べ物まで。いや、ありがたいけど、大事だけども。ぼくの、この、渋々行くんだぜ、という顔が見えないのか。本当は家の中でだらだらとゲームをして、たまには幼馴染の女の子と遊んで、テキトーに畑でも耕す生活がしたいんだ。たまには鳥や犬を愛でて、寒い日は家に引きこもってぬくぬく。暑い日は思い切り水浴びして。しかしそうもいかないらしい。というか、魔王ってどこにいるの?「じゃあ、いってきます」「まって」お母さん!やっと止めてくれた。そうだよね。一人息子が旅に出るとなっちゃ、寂しいものね。お母さんがそういうなら、旅に行くのもやめてあげてないこともないなあ。「なかま を みつけてね」きっと、その仲間たちがお前を支えてくれるわ。そう言った母の顔は、やはり笑顔。なんだ、引き止めてくれるんじゃないのか。落胆したまま家を出ようとすると、後ろから母の声が再びかかった。「わたしから さっても いいけど ひとりではいかないでね」振り返る。しかし、扉が閉まったあとだった。空は晴天。太陽が燦々と輝く。母の姿も、声もなくなった。進むべきは、どうやら目の前の道しかないらしい。ところが、あっちこっちに分かれている。一体どれを進めばいいものやら。剣は重いし、腕は痛い。盾のせいで腰も軋む。雨の日はどうしよう。いや、嵐の日は?雪で凍えそうな日もあるだろうし、もしかしたら森で迷子になるかも?たくさん怪我をするんだろうなあ。嫌だなあ。でも、仲間を、探そう。一緒に泣いて笑って大切なことを学べる仲間を。仲間がいれば、乗り越えられるような気が、する。そして、一緒に魔王を倒すんだ。だってぼくは、勇者だから。
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晴天。
どこからどう見てもいい天気だ。今日しかないだろう。
重い盾を無理やり背負った。腰が痛い。これを持ちながら旅とか、無理だ。
とりあえず、母に挨拶をしなければ。
「おはよう」
にこにこ。いつもと変わらぬ笑顔を見せる母。ぼくは胸を張って言った。
「ぼく、きょうから たびにでるよ。まおう を たおすんだ」
母は少し驚いて、それから食料を持たせてくれた。いつか、この日が来ると覚悟していたらしい。
正直、できれば引き止めてほしかった。一体どうすれば、自分の子どもが魔王を倒すために旅に出るだろうことを予期する親がいるんだ。ただでさえ剣に盾で荷物が重いのに、食べ物まで。いや、ありがたいけど、大事だけども。
ぼくの、この、渋々行くんだぜ、という顔が見えないのか。本当は家の中でだらだらとゲームをして、たまには幼馴染の女の子と遊んで、テキトーに畑でも耕す生活がしたいんだ。たまには鳥や犬を愛でて、寒い日は家に引きこもってぬくぬく。暑い日は思い切り水浴びして。
しかしそうもいかないらしい。
というか、魔王ってどこにいるの?
「じゃあ、いってきます」
「まって」
お母さん!やっと止めてくれた。そうだよね。一人息子が旅に出るとなっちゃ、寂しいものね。お母さんがそういうなら、旅に行くのもやめてあげてないこともないなあ。
「なかま を みつけてね」
きっと、その仲間たちがお前を支えてくれるわ。そう言った母の顔は、やはり笑顔。
なんだ、引き止めてくれるんじゃないのか。
落胆したまま家を出ようとすると、後ろから母の声が再びかかった。
「わたしから さっても いいけど ひとりではいかないでね」
振り返る。しかし、扉が閉まったあとだった。
空は晴天。太陽が燦々と輝く。母の姿も、声もなくなった。
進むべきは、どうやら目の前の道しかないらしい。ところが、あっちこっちに分かれている。一体どれを進めばいいものやら。
剣は重いし、腕は痛い。盾のせいで腰も軋む。雨の日はどうしよう。いや、嵐の日は?雪で凍えそうな日もあるだろうし、もしかしたら森で迷子になるかも?たくさん怪我をするんだろうなあ。嫌だなあ。
でも、仲間を、探そう。一緒に泣いて笑って大切なことを学べる仲間を。仲間がいれば、乗り越えられるような気が、する。そして、一緒に魔王を倒すんだ。
だってぼくは、勇者だから。