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くにさきたすくさん

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夢の精

15/09/19 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:2件 くにさきたすく 閲覧数:767

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 夢の中で、ミサキはテレビを見ていた。
 日曜早朝のアニメだ。
 夢の力で構築されたのは、どこかで見たことがあるような無いような美少女戦士たちのアニメ。
 ミサキ自身も幼少の頃、彼女たちの様な戦士に憧れを抱いていた。大人になったらああなりたいと本気で考えていた。
 テレビの中でカラフルな装束をまとった勇気あふれる美少女たちが、ヘイトス国の王子ゾウオージ率いる悪の軍団と戦っていた。召喚された怪物、ウラーミとツラーミが彼女らに襲い掛かる。と同時に「直接的すぎやしないか」と思わず突っ込みたくなる言葉遊びがミサキに襲い掛かる。
 彼女たちは手を取り合い、「友情」と「愛」と『圧倒的な必殺技の力』で勝利した。
 彼女らはいつも妖精を従えている。可愛らしい小動物の様な風体に小さな羽が生えている。
 色は薄い水色。
 世間一般の妖精の認識とは幾分か違う。妖精という割には少しぽっちゃりとしていて、さらに言うと肉眼ではっきりと見えすぎる。
 その妖精が突然テレビから飛び出してきた。
 床に尻餅をついた小さな妖精は、
「あ〜。しんど〜」
 その姿に似つかわしくない少年の様な声だ。
 ミサキは妖精に声をかけた。
「どうしたの? いきなり飛び出してきて」
 すこし大袈裟な演技で。こういうのは結構得意なのだ。
 妖精は尻をさすりながら立ち上がる。
 何故かミサキは彼の名前も知っていた。
「大丈夫? パステル」
 夢の中で声を出すのは不思議な感じだ。ミサキには自分の姿が正面から見えていたりする。自分自身に声を当てているような感覚。現実と夢とは一つ次元が違うようだ。ただ夢の中のミサキはそんな違和感を認識できない。
「ちょい手伝ってくれへんやろか。妖精の仕事の負担が多すぎまんねん」
 関西弁を話す妖精。夢の中であってもアニメの関西弁は少しくどい。
 ここでも夢の中のミサキは素直だ。
「分かった。まかしといて!」
 ここぞとばかりに腕まくりをする。
「じゃあ行きまひょか」
 妖精に手を引かれて、いつの間にか森の中。
「ここで妖精になるための訓練をしてもらいまっせ」
「何? ここはどこ?」
 二人の周りは木が無く、まるい広場になっている。
「ここは『妖精所』つまり妖精の養成所でんがな」
 森の中にはたまにこのような実用的なスペースが存在するのだ。
「なるほどね〜」
 ミサキは思った――もしかするとダジャレの養成所ではなかろうか。
「そのとおりやで」夢の中は口に出さずとも会話は成り立つものだ。「この世界は言葉遊びで成り立っとんのや。ウラーミもツラーミも、言葉遊びから生まれたモンスターやねん」
「じゃあ彼女たちも?」
 ミサキはまだあの少女戦士たちの名前を知らない。
「そう。今回のテーマは色やからな。みんな色の名前がついとんのや。みんな赤とか青とか緑とかの別名やで」
「レッドとかブルーとか?」
 パステルは結局その名前をミサキには教えなかった。ミサキも色にあまり詳しくないので聞いても理解できたかどうかはわからない。――というこの解釈は夢の中だけのもの。実際はこうだ。『ミサキが詳しくないから教えられなかった』のだ。自分の夢の中だから。
 それから何をどうしたのかはおぼろげだ。夢のストーリーはあって無いような物だ。
 とにかくミサキは妖精と友達になったのだ。
「わしとおまえは友達や。妖精の友達。精友や」
 夢の中だから、無理やりな当て字もすんなりと頭に入った。
 そしてミサキは大きな幸福感に満たされていた。
 ――そうか。私はセイユウになれたんだ。


 そこで目が覚めた。
 ある意味、正夢だった。
 現実はいとも簡単に夢になる。
 ミサキは『声優』を目指して『養成所』に通っている。幼少のころの夢が少し形を変えて今になっても続いていた。
 日々アニメや声優のことを考えて過ごしているからこんな夢を見たのだろう。
 思えば声優というのは、姿を見せず声だけで人々を魅惑するものだ。確かにミサキ自身が妖精らしきものを目指していることも間違いない。
 ミサキはあらためて思った。
 ――この夢を現実に。
 それは簡単なことではないだろうけれど。


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このストーリーに関するコメント

15/09/20 くにさきたすく

> 篠川晶 様

ありがとうございます。m(_ _)m
『妖精の養成所』というくだらないダジャレをメモったものの書きあぐねていたのですが、テーマ『アニメ』と相まって、くだらなくもちゃんとまとまったので良かったです。(笑)

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