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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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戦争を知らない私達

15/09/07 コンテスト(テーマ):第九十二回 時空モノガタリ文学賞 【 沖縄 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:990

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 夏休み。私達一家は親戚の暮らす沖縄へ旅行に出かけた。沖縄に行くのはこれが初めての事だ。私はワクワクとしていた。
 ただ一つ、私は憂鬱に思っている事がある。小学校の夏休みの宿題。その中の一つに『お年寄りから戦争体験を聞く』という物があったのだ。
 戦争なんてよくわからないし、話を聞くのも面倒だ。でも小学校の宿題は絶対にやらないと先生とお母さん達に怒られる。私は渋々宿題をこなしていく事にした。

 沖縄一日目。この日はホテルに泊まり、私達は平和祈念資料館に戦争体験者の講演を聞きに行く事にした。
 レンタカーで平和祈念資料館まで向かい、講演が行われる会議室へと通される。着いてから五分としないでお爺さんが姿を表し、講演を始めた。
「戦場は地獄でした。こう、銃の音がババババ! と響いて、そうかと思ったら爆弾の音がドカーンって響いたんです!」
 お爺さんの講演はやたら擬音が多くて、わかりづらいものだった。声がうるさくて、耳障りだ。
 私は退屈さのあまり、何度もうつらうつらとした。しかしその度にお爺さんの「ババババ!」という声が響き、起こされる。
 結局この日、私は内容の半分も理解しないまま講演を聞き終えた。

「お前、講演中寝ていただろう」
「起きていたよ。途中眠りそうになったけど」
 ホテルに向かう車の中。お父さんにそう問われ、私は反射的にそう答えた。
「それなら聞いてないのと同じだな。そんな事で夏休みの宿題、大丈夫なのか?」
「それは……」
 お父さんの言葉に何も言い返せなくなる。
「まあまあ。うちのお爺ちゃんも戦争体験者だし、明日実家に行った時、話を聞けばいいんじゃない?」
 お母さんが助け舟を出してくれた。でも、
(また戦争体験聞かなくちゃいけないのか)
 私にとってお年寄りの語る戦争体験は、退屈なものであるという認識が頭の中で築かれつつあった。

 翌日。私達はお母さんの実家であるお爺ちゃん、おじいの家に来ていた。
「よく来たな。こんなに大きくなって」
 おじいが私の事をひょいっと軽く持ち上げる。おじいはもう七十歳を超える高齢なのに、それをまったく感じさせなかった。
「おじい、下ろして」
「おお、すまんのう」
 おじいが私の事を地面に下ろす。おじいの顔は満面の笑みだった。

 おじいの家はお婆が料理上手で、ゴーヤチャンプルからソーキそば、ラフテーなど沖縄名物を一式作って出してくれた。
「お婆のご飯、おいしい!」
「それは嬉しいわ」
 そう言ってお婆が嬉しそうに微笑む。
 さて、今日はこのままお風呂に入って寝てしまおうか。そう考えていると、お父さんが口を出してくる。
「ちゃんとお爺ちゃんから戦争体験を聞いてくるんだぞ」
「はーい」
 ここで言うことを聞かないとお父さんの雷が落ちるのは間違いない。私はおじいの居る縁側まで歩いて行った。
「ねぇ、おじい」
「なんだい?」
 おじいが陽気な笑みを浮かべ尋ねてくる。それに対し私は宿題を早く終わらせたい一心で質問をした。
「おじいって、戦争に行ったんだよね? 戦争ってどうだった?」
 私の直球の質問。すると突然おじいの表情が曇った。
「おじい?」
「……いいか、よく聞け」
 おじいが珍しく真面目な表情で語りかける。
「若者は、戦争の事なんて知らなくていい。知らなくていいんだ」
 おじいが口にした意外な言葉に私は何も言えなくなった。
 おじいの目は濁って見える。なんて悲しい目だろう。あの陽気なおじいからは想像もつかない目だ。
 戦争とはおじいにこんな目をさせてしまう物なのか。私は昨日聞いた講演より、おじいのつぶやいた一言の方が怖かった。



 あれから十年。私は今大学に通いながらある事について研究している。第二次世界大戦、それも沖縄戦に関する研究だ。
 おじいはあの時『若者は、戦争の事なんて知らなくていい』と断言した。
 でも、そう言われたからこそ戦争について私は学びたくなった。私があまのじゃくだという意味ではない。おじいの言葉に痛烈な何かを感じたのだ。
 今日、大学が終わったら私は国会議事堂前へと向かう。そこでデモに参加するのだ。

 20XX年、日本は憲法の改正をキッカケに少しずつ戦争へと向かいつつあった。

 戦争を知らない私達。でもだからこそ私達は戦争と戦わなければならない。おじいの言うとおり若者が戦争知る、つまりは体験する社会にしてはいけないのだ。
 私達は若者が戦争を知らなくて済むよう、今日もデモを続ける。


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このストーリーに関するコメント

15/09/07 ふぃろ

戦争は負けたけど終わってはいない

15/09/07 海見みみみ

ふぃろさん

ご覧いただきありがとうございます。
そうですね、戦争はまだ続いているのかもしれません。
この国だけでなく、他国では戦争や内戦もありますしね。
平和的な解決を祈りばかりです。
感想ありがとうございました!

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