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ヒナタさん

まだまだ青春したいお年頃。 僕自身のお話や、私自身のお話があります。

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将来の夢 温泉めぐり。
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夏祭りと華

15/09/05 コンテスト(テーマ):第九十回 時空モノガタリ文学賞【 祭り 】 コメント:0件 ヒナタ 閲覧数:706

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広告に大きな赤字で書かれた文字。
「姫妃町!花火大会!!」
今年は、上がる数が多く、5000発はあがるようだ。
だからか、隣町からも、人が大勢来て、会場は大盛り上がり。
屋台には、何十人にも及ぶ行列ができ、物ひとつ買うのに何分もかかる。
このことを見通ししていた幼馴染は、コンビニに立ち寄り、飲み物を買ってきていた。

場所も2人座れる場所などなく、僕たちは呆然としていたけれど、”秘密の場所”へやってきた。
そこは、古ぼけた社。
この町を守る神様など居ないだろう。
きっと、出て行ったかもしれない、なんて思い笑ってしまう。

「大丈夫かい?」
「平気、ちょっと浴衣がしんどいけれど。」

山の頂点にあるこの社は、幼馴染にとって過酷だろうか。
けれど、ここから見える景色は町全体がよく見えて、会場も見える。
腐っていない板のところへ誘導し、花火をいまかいまかと待っていた。

「この花火も、今年で最後なのね。」

ペットボトルキャップを開け、ごく、と一口飲んだ。
幼馴染は、来年、東京の大学へ通うそうだ。
幼馴染の僕としても、嬉しい出来事だが、その分少し寂しかったりもする。
_まだいえてない。

”好きだ”という3文字がなかなか口に出せなかった。
この17年間、一度も。
きっと、言ったって、僕のことを”幼馴染”としか思えてないのだから、意味もないだろう?
笑って、うそをついて、流すだけだ。

どうして、このポジションについてしまったのだろうか。
ついてなかったら、今頃、笑っていられて、ずっと一緒に居れたというのに。
そんなことを思っていると、アナウンスが流れる。

『本日はありがとうございます。打ち上げ本数は、5000発。最後の一発は素敵な花火ですので______。』

素敵な、花火、か。
幼馴染は、「楽しみだね。」と白い歯を見せた。

ヒュードーン


色鮮やかな円形が夜空へ打ち上げられる。
ピンク、黄色、青、赤・・・。

”雪を降らせる”というアナウンスの言葉とおり、銀色の花火が振り落ちてきた。
芸の細かい花火に釘付けになっていると、いつの間にか最後の花火となっていた。

『それでは、お待ちかねの、”素敵な花火”です。』

高い音を立て、打ち上げられた。
色とりどりの大きな大輪。
そして、最後の。








「好きだ。」






という3文字。
僕がなかなかいえなかった言葉だ。
すると、幼馴染が口を開いた。


「頼んだの、知り合いの花火師さんに。」

「いつまでたっても素直にならないよね。」

そういって笑う君。
僕の心を見透かしたようだ。
笑うのをやめると、「何か言うことは?」と意地悪っぽく言う。

いえるかな?
そんな心配も胸にしまい、僕は震える声で言った。



「好きだ___。」

「ん、よくいえました。けど、ごめんね。」

「_彼氏、できたの。」



夜空にまだ残る花火に向かって、そう告げると、涙を流す。
_やっぱり、言わなければ良かった。
でも、言ってなかったら、まだずっとこの思いを留めていたかもしれない。


「そうか。_良かったよ。」




この夏祭りは、君の最後でもあり、僕の最後の恋の終わりでもある。
この夏祭りは、君が僕に告げる最後でもあり、君への思いを終わらせるものでもあった。


_好きだ。
なんていう3文字にかけたこの思いは、
まだ君を忘れられなかったかもしれない_________。


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