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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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向けられた銃口

15/09/03 コンテスト(テーマ):第九十回 時空モノガタリ文学賞【 祭り 】 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1421

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 私の尻は今、とても危険な状態にある。そう。私の尻は、背後から狙われているのだ。

 私は私の愛する小学三年生の娘・マナミと妻を連れて、夏祭りに来ている。わたあめやババヘラアイス、金魚すくい、射的など、いろんな店が並んでいた。最初は三人で行動していたのだが、人ごみにまぎれてしまい、私ひとり、妻子とはぐれてしまった。しばらくしてから、ようやく私は妻子と合流できたのだが、そのときマナミはあるものを持っていた。

「マナミ、どうしたんだいそれは?」
「ママに買ってもらったの」

 マナミが手に持っていたのは、黒いエアガンだった。おもちゃ売り場で妻が買い与えたものらしい。男の子ならともかく、なぜ妻はマナミにそんなものを買い与えたのだろうか。

「パパ、金魚すくいやりたい!」

 マナミの要望に答え、私は金魚すくいの店番の者に百円を渡した。しかしマナミは残念ながら、金魚をすくえなかった。

「パパ、もう一回!」

 何事も挑戦させることは、教育上いいことだ。私は喜んでもう百円差し出した。しかしまたしても金魚はすくえなかった。それから五回ぐらい挑戦させたが、いずれもだめだった。

「パパ、お願いもう一回!」

「マナミ、そろそろ諦めなさ…痛っ!」

 私は目を疑った。なんとマナミは、さっき妻に買ってもらったエアガンの銃口を私に向けているのだ。しかも一発、私の太ももを撃った。激痛が走った。

「あなた、いいじゃないの!やらせてあげなさいよ可哀想に」

 そういう妻は、一銭も出す気はまるでないらしい。私は、娘に銃口を向けられている恐怖と妻の説得に、もう一度百円を出した。

 それから四十回ぐらいはやっただろうか。ようやく金魚を一匹すくえたところで、金魚すくいを終えた。

「パパ!射的やりたい!」

 もうやってるようなものじゃないか!と言いたい。マナミはエアガンの銃口を私の尻に向けながら、満面の笑みでもう一度言った。

「パパ、射的!」

 それから射的五十発にアイスやわたあめ、焼き鳥、チョコバナナ…。こないだパチンコで勝った一万円は、すでに財布から旅立った。マナミの要求をのまないと、エアガンから発射されるビービー弾が、私の尻を容赦なく襲うからだ。ただでさえ痔だというのに。しかも妻の分の食べ物まで買わされる始末。どうして祭りには、エアガンなんて恐ろしい玩具が売っているのだろうか。危ないだろうあれは!

 その祭りの日以降、私はマナミの要求をなんでものみ続けてきた。いつも満面の笑みで私の尻に銃口を向けてくるマナミが、日に日に恐ろしくなってきた。それを利用して、私の給料日になると、妻はマナミを利用して、私の給料を五千円だけ残して、残りを奪っていった。

 日々の苦痛に耐えかね、私は強引にマナミからエアガンを取り上げた。わんわん泣き叫ぶマナミをみると、胸が痛む。しかしそうしないと、尻が痛むことになる。

 しかし取り上げたエアガンには、弾が入っていなかった。というより、祭りの次の日から既に、弾など入っていなかったらしい。


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このストーリーに関するコメント

15/09/08 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、拝読しました。

この話はジワリと怖い話ですね。
家庭の中で銃に脅されながら暮らしていくって、恐怖というよりも・・・
家庭崩壊一歩手前じゃないですか?

子どもの暴挙を止めないで、それを利用してる奥さんがもっと怖いよ。

15/09/08 霜月秋介

恋歌様、コメント有り難うございます。

たしかに怖いですよね(笑)娘が思春期になったら家庭はどうなってしまうのでしょうね。
幼い頃に祭でエアガンを購入したものの、危ないからと親に弾を隠されたのを思い出して書きました(笑)

15/09/16 そらの珊瑚

霜月 秋介さん、拝読しました。

いや〜パパはつらいよ、ですね。
エアガン欲しかったのは実は娘ではなくて、妻だったのでは?

15/09/16 霜月秋介

そらの様、コメント有り難うございます。

たしかにエアガンは妻が娘に買い与えたもの。はじめから旦那を支配するためにそうしたのかもしれません(笑)

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