轟 進さん

趣味で小説を書き始めようと思います。 インパクトがあり、心に残るような作品を書けたらと思っております。 右も左もわからない素人ですが、皆様どうぞよろしくお願い致します。

性別 男性
将来の夢 探し中
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君へ

15/08/26 コンテスト(テーマ):第六十二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 轟 進 閲覧数:775

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 何もないこの畦道を、いつも父と手を繋いで歩いていた。
幼かったわたしにはまだ理解しがたい話も父は沢山教えてくれた。
春に咲く花、夏の匂い、秋を知らせる冷たい風、辺り一面を白く染める冬。
そのすべてに名前や理由があった。
父との散歩はいつも胸がわくわくした。
 畦道の先には小川があり、橋の上を電車が通っている。 
家からこの小川までがわたし達の散歩のコースになっており、そこは二人の秘密の場所でもあった。
 電車が橋に差し掛かると、わたし達はいつものように叫び始めた。
父は家族のことや仕事のこと、わたしは好きな男の子の名前や友達と喧嘩したこと。
良いことも悪いことも、この場所へ来ては二人で吐き出していた。
恥ずかしさよりも、幼いわたしにとっては楽しい遊び場となっていた。
通り過ぎる電車はいつも、二人の言葉を受け止めてくれた。

 まだ蝉も鳴き止まぬ夏の夕暮れ、そんなことを思い返しながら今、私は父のお墓の前にいる。あの小川のすぐそばだ。
 大人になった私は、感謝の気持ちを伝える為にここへ来た。 
そろそろ来る頃。いつもの時間、いつもの電車が通り過ぎる。
大きく息を吸い込み一言叫ぶ。
父と私の言葉をいつも聞いてくれていた君への感謝の気持ちを。
 
 オレンジ色の空の下、蝉の声に包まれながら、私はその遊び場を後にした。


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