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ウはうどんのウさん

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理由がないから

15/08/21 コンテスト(テーマ):第八十九回 時空モノガタリ文学賞【きっかけ】〜松山椋君の足跡 コメント:3件 ウはうどんのウ 閲覧数:764

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 泣いていた。胸を刺すような
 痛みが、とめどなく溢れ出ていた。
 その
 涙に理由はなかった。ただ
 風鈴の掻き立てる音と、雷の
 落ちる
 音を聞いていると、自然と目頭が
 真夏日のようにあつくなった。

 泣いていた。優しく撫ぜるような
 温もりが、休むことなく包んでいた。
 その
 涙に理由はなかった。ただ
 布団の角っこの冷たさと、水撒きの水が
 落ちる
 冷たさを感じていると、自然と頬を
 伝うものがあった。

 でも前を向かなくちゃ。
 涙は拭かなくていいから。
 この痛みと温もりに理由はないけど。
 理由がないから、誰にでもあることなんだ。

 真夏日の風は胸を刺すように
 あつく、優しく撫ぜるように
 涙のあとを包み込んでくれた。
 私たちは前を向いて進んでいく。
 この
 理由のない涙をきっかけにして。
 私たちは前を向いて進んでいく。
 この
 理由のない涙をきっかけにして。
 私たちは足跡を生み出していく。


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このストーリーに関するコメント

15/08/22 松山

素敵な作品ですね。短い言葉の中に暖かさを感じます。
この言葉だけで人を癒し、包み込む力が有るんですね。

15/08/22 ウはうどんのウ

松山さま
 今回の賞をきっかけに、椋さまを知るようになったのですが、「跋丸くんの跋文」のように嫉妬の感情をユーモラスを交えつつ書き切る筆の力に、魅了されるばかりでした。とても貴重な才能でしたのに、残念でなりません。
 拙作は涙や暴力など様々な人生背景が窺える感情の機微を、複雑すぎるがためにあえて「理由がない」と表現した「青木筋肉の疾走」にインスパイアされて、書かせていただいたものです。
 今回の賞を通じて、創作者として刺激を受け、ここに足跡を残しておきたいと考えた者は私だけではないはず。大変な時期でしょうに、このように賞を開催する決断をしてくだり、感謝しています。
 書き込みありがとうございました。

15/08/28 光石七

拝読しました。
素晴らしい詩だと思います。
理由なく(といっても、本当は理由があるのでしょう。あまりに辛く複雑なので説明できないだけで)流す涙に胸を締め付けられますが、それでも前へ進んでいくという決意が力強くて…… うまく言えませんが、心臓をドンと打たれたような衝撃と共に勇気を与えられたような気持ちになりました。

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