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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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幻想祭り

15/08/15 コンテスト(テーマ):第九十回 時空モノガタリ文学賞【 祭り 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:952

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 死者が蘇る祭りが俺の住む村にはある。幻想祭り、その祭りはそう呼ばれていた。
 十年に一度訪れる幻想祭りの日。それを俺は待ちわびていた。全ては、彼女に会うために。

 幻想祭りの日は村が霧に包まれる。その日もまさに村は霧に包まれていた。幻想祭りの始まりだ。
「あんたもこれ、ちゃんと付けておきなさい」
 早朝、母が俺の腕にビーズのブレスレットをつけてくれた。このブレスレットが無いと、幻想祭りの日、生者は黒い化け物にあの世へと連れて行かれてしまうのだ。
 すると玄関のチャイムが鳴る。母が玄関を開けると「まあ、久しぶり」という明るい声が聞こえてきた。俺も服を着替えて玄関へと向かう。
「久しぶり、元気にしてた?」
 そこにいたのは亜麻色の髪がよく似合う少女だった。彼女の下半身には足が無い。
 彼女は今から五年前、病で亡くなった幼なじみだった。

 それから幻想祭りが本格的に始まる。母が特製のチェリーパイを作ってテーブルに運んできた。さらにデキャンタの赤ワインも用意される。これで祭りの用意は万端だ。
「さあ、死者の皆様のご帰還を祝いして、乾杯!」
 ワイングラスを片手に、父が乾杯の音頭をとる。
 我が家には幼なじみの他にも、早くに亡くなった祖母や叔父、その他親戚の姿があった。皆久しぶりにこの世に帰ってこられた事を喜び、おいしそうにチェリーパイを頬張ってはワインを飲んでいる。
 幼なじみもまた嬉しそうにチェリーパイを口にしていた。しかし食べるのが下手で、パイ生地をボロボロこぼしている。
「お前は相変わらずなんでも不器用だな」
「うるさいわね」
 幼なじみが不服そうにチェリーパイを口にする。そんな姿を見ていて、俺の胸はキツく締め付けられた。

 夜の十一時。十二時になると死者達はあの世へと帰っていく。既に両親は床に就き、親戚の幽霊達も家を出て帰り支度を始めていた。残されたのは俺と幼なじみの二人だけ。
 幼なじみは何もせず、ただ窓から外の景色を眺めていた。久しぶりのこの世が懐かしいのだろう。
 もうすぐ幼なじみはあの世へと帰る。次に会えるのは十年後。俺の中で一つの決意が固まる。
「なあ、ちょっと良いか」
「なによ、急に改まって」
 幼なじみが不思議そうな表情を浮かべる。
「俺、実はお前の事好きなんだわ」
「知ってた」
「だろうな」
 思わず苦笑する。それから俺はビーズのブレスレットに指をかける。
「だから俺も、お前とあの世に行く」
「! 馬鹿、やめなさい!」
 全力でブレスレットを引きちぎる。すると床にビーズが転がっていった。
「馬鹿、それじゃあアンタまであの世に連れて行かれるのよ」
「構わない、お前と一緒に行けるなら」
「馬鹿、本当に馬鹿」
 幼なじみが涙をこぼす。
 それと同時に異変が起きた。幼なじみの姿が滲んだかと思うと、急に真っ黒な何かに姿を変えたのだ。化け物。真っ黒な化け物だ。
「えっ?」
「オマエハ、ホントウニ、バカダ。ソノママ、クッテ、ヤル」
 黒い化け物と化した幼なじみが、俺に襲いかかってくる。
「ウソだろ」
 問いかけるが、幼なじみは答えない。
「イタダキマス」
「やめろよ、やめてくれぇ!」
 あまりの恐怖に俺の意識が薄れていく。
 気を失う直前、俺は幼なじみの泣き声を聞いた気がした。

 次に目覚めると、俺は床の上で横になっていた。見慣れた景色。自宅である事に間違いない。
 俺は黒い化け物になった幼なじみに食われて、死んだはずだ。それがなぜ生きている。
 ふと右手を見る。そこにはヨレヨレになったビーズのブレスレットがあった。この下手くそな仕上がり。これを作ったのは、
「あいつ、なのか」
 そこでようやく気づく。
 幼なじみは最初から俺を食う気なんて無かったのだ。ただ俺を気絶させ、壊れたビーズのブレスレットを修復して付け直しただけ。全ては俺をあの世に連れて行かせないために。
「本当に不器用なんだから」
 俺はヨレヨレの下手くそなブレスレットを見て、一人涙した。


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