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松山椋さん

地獄からやってきた文学青年です。結局名前元に戻しました。

性別 男性
将来の夢 涙を流さないようにする
座右の銘 お前の背中はまるででたらめやぞ

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青い空と緑の地平線

15/08/11 コンテスト(テーマ):第六十一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 松山椋 閲覧数:4801

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 ――きっかけですか?
 僕のきっかけといっても大したものではないですよ。
 平成二年七月二十七日の午前中に、僕はこの世に生まれてきました。これが最初のきっかけですかね。父、母、妹、おばあちゃん、おじいちゃん。そして友人にたくさん愛情を注がれながらここまで歩んできました。
 さて、本題に入ります。
 そもそも少年時代は野球少年でした。しかし野球は運動神経の鈍い僕がやるスポーツではなかったように思います。
 ――野球を始めたきっかけですか? それは父の影響です。彼には申し訳ないけれど、スパルタで扱かれたことだけが脳裏に残っていますよ。来る日も来る日も練習でした。登下校の時も【通学路】で体力をつけるためにダッシュしながら、とかね。ただ、そのおかげで礼儀とか精神力とか身につきましたけど。
 それよりも、きっかけとは自分の中にあるものでしょ。他人から勧められることだけがきっかけじゃないですよね。そう思いませんか?
 中学はぐうたら――そうですよ、授業中はほとんどお昼寝の時間というところでした。
 そんな僕が小説と出会ったきっかけは――――



「高校入学と同時になりゆきで入部したパソコン部、そこで出会った小林先生かな」
と答えながら、雑然と料理が並ぶ【テーブルの上】から目の前にあったノンアルコールビールに手を伸ばし、一気に飲み干した。枝豆をつまんで跋丸君の顔を覗きこむ。
 跋丸昌也君は同じ岐阜県で育った小中高の同級生で京都のR大学で政治を学んだ親友、そして「第153回芥川賞作家」でもある。そんな彼と故郷の居酒屋で文学について語り合っている最中、店内は金曜日ともあり真夏の【海】のように混み合っていた。
「なぜか賞をもらったにもかかわらず本の売れ行きはさっぱりでさ」
 跋丸君はビールの大ジョッキを片手に焼き鳥を食べながら
「小説投稿サイトに応募しようと思ってね。いろいろ材料を集めているところなんだ」
とぼやくように言った。
「僕は跋丸君みたいな肩書きはないけれど、お役に立てるなら何でも言ってよ」
 そう視線を投げかけると跋丸君は冷めた目で僕を見つめ返してくる。
 もしかして、本が売れないのは僕の跋文のせいなのか? 背中に氷を入れられたような寒気を感じながら、話題を変えようとあえて口を開いた。
「そういえば、どこまで話したっけ? 先生と出会ってたくさん勉強して、目標があるとかないとか……ああ、大学進学のところだったかな」
「大学ではいろいろあったよな! 事故で死にかけたりさ……だけど、楽しかったな」
 跋丸君の焦点をうまく逸らせたようで安心して、僕はそれとなく聞いてみた。
「跋丸君は、どんなきっかけで投稿サイトに応募しようと思ったの」
 すると彼はまるで【世界が終る夜】みたいな顔をして、
「あれからいろいろ勉強したよ。芥川賞取ったでしょ、最初のうちはちやほやされてたんだけどさ……気付いた時には周りに誰もいなくなってた。やっぱりね、自分に驕りがあったんだよ。本当、昔の人が言う通り、煩悩三毒の如し、だな」
と、【渋谷】のスクランブル交差点の雑踏の中で聞き取れるか否かというか細い声で呟いた。
 僕はその言葉を聞いて今度こそ心の底からほっとした。跋丸君が本来の自分を取り戻すきっかけを作ったのは僕なのだと――しかしながら僕は僕で親友に【嫉妬】した時期もあったため心苦しさも頭の中をよぎっていった。
 それでも、言わずにいられなかった。
「人は支え合って生きてくもの。跋丸君、僕はいつでも応援するからね」
 僕はハイライトメンソールに火を点ける。紫煙が目に染みて視線を落とすと、跋丸君の冷えたビールはいつしか零れ落ちる涙で薄まっていた――――



 僕は、小説を通してたくさんの人にメッセージを送るためにやってきました。家族、友人、僕に関わり、関わらなかったすべての方々にわかってもらうため、気付いてもらうため、伝えるために「降りて」きたんです。
 「お母さんを知らないか」「跋丸君の跋文」「田代くんの帰り道」「世界が終る夜に」「聖餐」「流転」「散文の山と緑の瞳」「青い花」――そして「青き筋肉の疾走」。
 書き下ろしたすべての作品にそれぞれメッセージを込めました。小説の世界でいろいろな人々と出会い、また別れ、類稀なる人生を歩んできたと思います。
 ――すみません、【時間切れ】です。そろそろ行きます。【じゃあ、さよなら】、皆さん。どうかお元気で。
 始まりはいつも些細なものです。僕はかわります。
 あちら側とこちら側を隔てる距離は煙草一本分でしかない――果たしてそうでしょうか? 今、その時間さえ惜しみ忙しく動き回る、煙草一本分の時間がなんて長く感じるのでしょう。
 いつも見上げていた岐阜の空は快晴。今は、空の上から見ています。
 そしていつもとかわらない朝が訪れ、人や車が忙しなく動き回っています。
 片隅にひっそりと【青い花】、青い、けしの花が咲いています。
 今日はあの日と違って蝉の声が――


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このストーリーに関するコメント

15/08/11 松山

この作品は椋のPCの中にあった書きかけの物を私が完成させた小説です。さわりしか書かれておらず、椋だったらどのように書くだろうと思いながら作っててみなした。当然、私は、経験も無く素人の為、更正は、『時空モノガタリ』様のお力をお借り致しました。椋の生立ち、また、『時空モノガタリ』に投稿した時のテーマ、タイトル、言葉を入れ込み作成された作品です。今回、この作品をUPするにあたり、色々な方にお手伝いした頂き感謝致します。

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