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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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女性専用車両

15/08/10 コンテスト(テーマ):第八十八回 時空モノガタリ文学賞【 罠 】 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:1454

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 朝一番に会議があるというのに、僕は寝坊してしまった。
 駅のホームで発車間際の電車に慌てて飛び込んだら、車内は女性ばかり乗っている。
 どうやら女性専用車両に乗り込んでしまったようだ。車両を移動したいが混雑していて動けない。急行なので次の駅まで十五分は停車しないだろう。周りの女性たちの非難がましい目が気になるが、ここは耐えるしかない。
 痴漢と間違えられないように、僕は両手で吊り革を握っている。
 その時だった、誰かが背後から抱きつくようにぶつかってきた。そして僕の足元に倒れ込んだ。見ると、セーラー服の女子高生で、スカートが捲れ上がり白い太ももが露わに……。僕の目はそこに釘付けになった。
 ひょっとして貧血かもしれないと思い「大丈夫ですか?」と手を差し伸べたら、突然「キャアー」と悲鳴をあげた。驚いた僕に、信じられない言葉が浴びせられた「痴漢! この男は痴漢よ!」女子高生が大声で叫んだのだ。
 嘘だ! 僕はどこも触ってない!

 その瞬間、車内の女性の目がいっせいに僕に向けられた。
「この変態野郎がぁー!」
 いきなり知らないおばさんに胸ぐらを掴まれた。
「ここは女性専用車両なのに、なんで男が乗ってんのよ!」
 眼鏡を掛けた痩せぎすの中年の女に抗議された。
「す、すいません。慌てて乗ったんで女性専用車両だと知らなかったんです」
「嘘おっしゃい! 周りが女性ばかりだし触ろうと思って乗ったんでしょう」
 絶対に触りたいと思わない超ブスにドヤ顔で言われた。
「違います。次の停車駅で車両移りますから勘弁してください」
「あんた逃げる気? この子に痴漢した落とし前はどうつける気さ」
 痩せぎすに凄まれた。
「痴漢野郎がぁー!」
 胸ぐらを掴んだ凶暴おばさんが今度は拳で肩を叩く。
「ぼ、僕は痴漢じゃないです」
「しらばっくれるな! この車両の女性全員がおまえを痴漢だと思ってる」
 超ブス、おまえは女の数に入っていない。
「だから、この子に触ってない」
「この男があたしの太ももと胸を触った―――!」
 女子高校生が大声で叫ぶ。
 ダメだ! 何を言っても信じてくれない、周りは女性ばかりで四面楚歌だ。ああー、このままだと痴漢容疑で逮捕されるかも知れない。そんなことになったら会社もクビになって、僕は社会的に葬られてしまう。

 女たちと押し問答している内に、次の停車駅に着いた。
 もう逃げるしかない。ドアが開いた途端、飛び出そうとした僕を凶暴おばさんが羽交い締めにした。
「この野郎逃がすもんかっ!」
 馬鹿力でグイグイ締めつける。
「離してください! 僕は何も悪いことやってません」
「女性専用車両と知って乗ってきた、男のくせに……」
「ちょっと待ってください!」
 超ブスの言葉を遮った。
「女性専用車両って書いてあっても、法律的には男性も乗車して大丈夫なんです。僕らは鉄道会社の趣旨に協力してやってるだけだ」
「黙れ! このチンカス野郎」
 もの凄く下品な言葉で罵られ、股間をおもっきり蹴り上げられた。あまり激痛に四つん這いになって悶絶する。
 女たちは僕の鞄を勝手に調べている。
「おっ、財布があるよ。おお、大金が入ってる」
「名刺と免許証も見つかった」
「トヨツ自動車営業企画部一課、ほぉーこいつエリートじゃん」
「この金は迷惑料ってことで貰っておこう」
 取引先の接待があるので、財布には現金で三十万は入っているはずだ。
「おまえが女性専用車両で痴漢したことは黙っててやるから、もっと金をよこしな。名前と住所は分かったから、また連絡するから」
「警察に言ったら、おまえの身の破滅だよ」
「あたしたちから逃げられないのさ。あははっ」
 もしかして恐喝されてる? 
 僕は痴漢の濡れ衣を着せられて……その上、金まで要求されている。しかし周りは女性ばかりで、誰も助けてはくれない。結局、男の僕が泣き寝入りするしかないのか?

「ハーイ! そこまで動くんじゃない!」
 女性専用車両の女性たちが五、六人、ずらりと恐喝犯たちを取り囲んで身柄を拘束した。
「あなた大丈夫ですか? 駅に救急車を待機させましょうか」
「あのう、貴女方は誰?」
「鉄道警察隊です。最近、女性専用車両内で男性に暴行や恐喝をする女性グループがいるという情報があり見張っていました。犯人グループに絡まれて恐喝される一部始終を隠しカメラで撮影しました。捜査にご協力ありがとうございます」
 リーダーと思われる女性から説明されたが、もっと早く助けて欲しかった。とりあえず痴漢の汚名だけは返上できて良かった。


 善良なる男性諸君! 間違っても女性専用車両に乗ってはいけない。そこには怖ろしい罠が待ち受けているかもしれないのだ。


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このストーリーに関するコメント

15/08/14 光石七

拝読しました。
女性としては痴漢は憎むべき犯罪ですが、男性が冤罪で一生を棒に振るようなことはあってはならないですね。ましてや無実の男性をでっちあげで恐喝するなど……
ハラハラしましたが、助けが入ってよかったです。
しかし、この主人公は金輪際女性専用車両には乗らないでしょうね。
面白かったです。

15/08/14 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

濡れ衣きせて暴行恐喝、今時の女性は怖いですから、男性専用車両もいるかも……、でも、そうなるとあの戦前にあった男女7歳席を同じゅうせずになってしまう。それに、電車での男女の出会いもなくなり、結婚率がさらに下がる可能性もでてくるかもしれませんね。
我が相方は東京勤務の折、やはり通勤の地下鉄内では両手を上げて新聞を読んでいたそうです。苦労しますよねえ、男はん。

15/08/14 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

痴漢の冤罪の話しではなくて、意外なオチでしたが、ありそうな罠ですね。
現行犯で捕まえるために、痛い目にあってしまった主人公に同情してしまいました。
面白かったです。

15/08/22 鮎風 遊

何回か乗ってしまったことがあります。
その時の居心地の悪さって半端じゃないです。
まったく異質な惑星に行ったような感じです。
この物語、充分ありますよ。
だけどこの男はホント幸運でしたね。

15/08/26 泡沫恋歌

光石七 様、コメントありがとうございます。

結構、痴漢の冤罪というのがあるみたいで・・・それで人生を棒にふった男性は気の毒としか言いようがありません。

女性専用車両では男は異端者、それだけで白眼視され兼ねません。



草藍やし美 様、コメントありがとうございます。

こういう凶暴な女性がいるなら、男性専用車両も絶対に必要です。
けれど・・・それ作ったら、絶対に女性サイドから「女性差別」と大批判されそう!

女は強い、怖い、口うるさいの三拍子ですよ(*≧m≦*)ププッ



そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

警察は現行犯逮捕したかったかもしれないけど・・・主人公の男性が気の毒過ぎる。

女性専用車両は魔界なので何が起きるか分からないのだ!

15/08/26 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

時々、女性専用車両に間違って乗ったと思われる男性がいるが、すごく動揺してそうで
可哀想だと思います。

そうゆう男性に対して敵愾心を抱くように、攻撃してくる女性はまるで般若の面みたいで心底怖ろしい。

15/08/29 田中 丸才

恐喝メンバーが個性的。それに男にとって、傷害罪や窃盗などとは比較にならないほどの恥ずかしい「ワイセツ罪」は身近な恐怖。なので、直ぐに主人公に共感(叫喚)できた。それに会話が自然でとても上手いなあと感心させられた。
ラスト三行が説明的でなければもっとスマートだったような気も。。
ただ、楽しく拝読させてもらいました。

15/08/29 田中 丸才

恐喝メンバーが個性的。それに男にとって、傷害罪や窃盗などとは比較にならないほどの恥ずかしい「ワイセツ罪」は身近な恐怖。なので、直ぐに主人公に共感(叫喚)できた。それに会話が自然でとても上手いなあと感心させられた。
ラスト三行が説明的でなければもっとスマートだったような気も。。
ただ、楽しく拝読させてもらいました。

15/09/08 泡沫恋歌

田中 丸才 様、コメントありがとうございます。

男性にとって、やってもいない痴漢の汚名を着せられるのは、耐えがたい屈辱だと思います。
とにかく、女性に「痴漢された!」といわれたらお終いですもの。

たしかに最後の行は、説明的かつ説教じみていたかもしれませんね。
これからは注意しましょう。

15/11/08 seika

あーおもしろかった、私も良く置換にあったけど、こういうこともあるのね。

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