蓮水 燈さん

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

仮面

15/07/27 コンテスト(テーマ):第八十七回 時空モノガタリ文学賞 【 私は美女 】 コメント:0件 蓮水 燈 閲覧数:756

この作品を評価する

朝起きて真っ先にするのは、仮面をつけること。お母さんそっくりの仮面。誰かしらコンプレックスはあるもので、私の場合は顔だった。
君のお母さんは綺麗ね。美人だね。
どこを歩いてもお母さんはお母さんはお母さんは。
私は身長もそこそこ、顔なんて平凡すぎて。お母さんは二重のぱっちり目玉なのに私は一重のつり目。お母さんのように笑窪もないし、お母さんみたいに鼻筋も通っていない。口の形もお母さんみたいに口角は上がっていない、むしろ下がってへの字だ。顔のどのパーツをとってもお母さんにかなうものなんて一つもない。
「あの子は似てないね」
おばあちゃんが言った。私はあのお母さんの子どもなのに、何も似なかったんだから。
だから私は仮面を作った。お母さんにそっくりの仮面。朝起きてつけて、帰って、寝るときまで外さない。おばあちゃんは似てないね、とは言わなくなった。私はお母さんに似ている。すごく美人だ。鏡の中を見るとうっとりする。ため息が出るような美貌の持ち主。学校に行けばみんな美人だねって言ってくれる。
私は綺麗だ。綺麗なのだ。
「だから、仮面はとらないの?」
突然声をかけられて、振り返る。顔を隠して女の人が立っていた。
「そう。悪い?だってお母さんに一ミリも似てないのに。お母さんに似てれば、みんな綺麗だね、って言ってくれるのに」
「あなたはそれが目的で仮面をかぶるの?」
「そうだって言ってる」
「嘘ね」
「嘘じゃない」
「嘘よ」
「嘘じゃない」
「だって、あなたは男の子なのに、女の子の格好をしているでしょ?」
背筋が凍った。どうして、この人はそのことを知っているのだろう。私は本当は男の子だって。どうして?
「もういいのよ。あなたはまだ小さいのだから、そんなことしなくたって」
「あなたに関係ない」
「大有りだわ。だってあなたは私の息子なんだもの」
顔が見えた。私そっくりの美貌の持ち主。
「知ってるわよ。ボケてしまったおばあちゃんのためにそんな格好してるって。早くに死んじゃった私を、何回もおばあちゃんが呼ぶからあなたが代わりに私の格好してるって。馬鹿ね。いくらまだ変声期じゃないからって。おばあちゃんはとっくに知ってるわよ」
お母さんは近づいて、私の「頬」を撫でた。
「もう、いいのよ。マコト」
仮面が、ガコンと無機質な音を立てて外れた。
その日、おばあちゃんはお星様になった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン