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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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美女はトイレになんて行きません!

15/07/26 コンテスト(テーマ):第八十七回 時空モノガタリ文学賞 【 私は美女 】 コメント:4件 海見みみみ 閲覧数:2420

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 美女はトイレになんて行かない。誰が言い始めたか知らないが、世の中にはそんな決まりがあるらしい。
 私は誰もが認める美女だ。だからもちろん人前ではトイレになんていかない。それが美女としての役柄だからだ。
 人は何らかの役柄を演じながら生きていくものだと私は思う。その役柄が私はたまたま『美女』だったのだ。
 そういった訳で、私は美女としての役柄を演じながら大学生活を送っていた。

 講義が終わり、お昼時。私はテラスで男の子と二人話をしていた。相手は佐渡君、同学年で私の想い人だ。佐渡君はいつも太陽のような笑みを浮かべている。彼の柔らかな人柄が私は好きだった。
「大凪さん、俺、飲み物買いに行くけど、何か一緒に買って来て欲しい物ある?」
「それじゃあレモンティーをお願いしていいかな」
「了解。ちょっと待っていてね」
 そのまま佐渡君が近くにある食堂へと向かって行く。佐渡君の姿が消えた事を確認し、私は駆け出した。実は今までずっとおしっこを我慢していたのだ。もう膀胱は破裂寸前。トイレを目指して一直線に走る。
 ところが、
(そんな!)
 近くにあるトイレは清掃中だった。仕方なく二番目に近いトイレに向かう。すぐにトイレを見つけ、個室に入ろうとする。だが、
(どこも空いてない!)
 トイレ内の個室は全て使用中だった。美女がトイレに行かないというのは、同性である女子が相手でも変わらない。私はトイレの前で待つこと諦め、別のトイレを求め大学内を歩きまわった。
 しかしいくらトイレを覗いてみても、中は清掃中か使用中のどちらかだ。使用できるトイレはなく、私の膀胱が悲鳴をあげる。
(このままだと漏れちゃう!)
 それだけはなんとしても避けなくてはならない。いっそ裏庭の草むらでするか。そんな事を考え、頭を横に振る。美女はトイレに行かないもの。ましてや外でするなんてありえない事だ。
 もう一度最初のトイレに戻ってみよう。そう考え震える足でトイレへと向かう。すると、
(やった!)
 トイレから清掃中の看板は消え、中に人もいない様子だった。これで安心してトイレに入れる。私はようやくトイレに入れる喜びに震えながら、足を前へ一歩踏みだそうとした。
「大凪さん、ようやく見つけた!」
 そんな時に限って、彼の声は聞こえてきた。佐渡君だ。
「どうしたの? 戻ってきてもいなかったら探しちゃった」
 こういう時どうすれば良い。必死になって考える。でももう膀胱が限界過ぎて、思考が上手くできない。
「顔色悪いよ? 大丈夫?」
 そう言って佐渡君が私のおでこに手を当ててくる。
「あっ」
 堤防が決壊するのは一瞬だった。好きな人、佐渡君に触られた感覚。それが引き金となり、膀胱から尿が漏れ出す。私の脚を伝っていくおしっこの感覚。漏らしてしまった。美女であるこの私が。それも好きな人の前で。
 絶望感からその場に座り込み、両手で顔を覆う。終わった。ただその一言だけが脳裏に浮かぶ。
 佐渡君も私がおしっこを漏らした姿を見て、さぞ落胆し呆れている事だろう。
 そう思っていると、頭から何か冷たい物がかけられた。一体何があったのかと思い目の前をみる。するとそこにはペットボトルのレモンティーを私にかける佐渡君の姿があった。
「ごめん! 手が滑ってかけちゃった。替えの服はある?」
「何を言っているの? 私はおしっこを……」
「違うよ。俺が大凪さんにレモンティーを誤ってかけた。それで良いね?」
 佐渡君がいつもの太陽みたいな笑みを浮かべる。そうか、私、佐渡君にかばってもらったんだ。そう理解した瞬間、両目から涙があふれ出す。
「ありがとう」
「よく意味がわからないけど、どういたしまして」
 佐渡君が手を差し伸べる。私はその手をぎゅっと握った。

 その後、保健室で服を借り、私達は近くのコインランドリーで服を洗濯していた。
「あのさ、こう言うのも何だけど」
 佐渡君が改まった様子で、私に向け口を開く。
「俺の前ではトイレ、我慢しなくていいから。そういう事、俺は気にしないからさ」
 先ほどの出来事があったから、佐渡君は普段から私が人前でトイレを我慢していると察したのだろう。
 佐渡君の一言、それに私は大げさかもしれないけど、救われたような気持ちになった。美女はトイレになんて行かない。その役柄を佐渡君の前では演じなくて良いのだ。
 それが嬉しくて、私はもっと佐渡君の事が好きになった。


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このストーリーに関するコメント

15/07/26 霜月秋介

海見みみみ様、拝読しました。
ありましたね。美女はトイレに行かないなんて虚言。
好きな人の前では、自分をよく見せようとついつい背伸びしてしまいがちですが、そんな無理をせずにありのままの姿を見せることができる相手が、理想の恋人なんでしょうね。

15/07/26 草愛やし美

海見みみみさん、拝読しました。

美女でなくても女性はトイレって言えないもの、ましてや美女だと余計ですよね、とても共感持てるお話でした。

いい彼で良かったですね、佐渡君とどうぞお幸せに。笑顔

15/07/27 海見みみみ

霜月 秋介さま

ご覧いただきありがとうございます。
女性視点だと「美男子はオナラなんてしない」というのも似たような話ですよね笑
でも実際にはオナラだってするし、トイレに行く。
だって、普通の人間だから。
等身大の自分って大切ですね。

15/07/27 海見みみみ

草藍やし美さま

ご覧いただきありがとうございます。
男の中では「女性=トイレに行かない」という意識がどうしてもあるんですよね。
同じ人間ならトイレに行くのは当然。
その点女性は大変だと思います。
きっと佐渡君なら大凪さんと一緒に幸せになる事でしょう。

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