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浅月庵さん

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心変わり

15/07/07 コンテスト(テーマ):第八十七回 時空モノガタリ文学賞 【 私は美女 】 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:889

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 亜由美ちゃんはわたしのことが大好きで、服も靴もピンク色の可愛いヘアブラシも金色の装飾が施されたティーセットも買ってくれる。
 お家まで買ってくれようとしたときにはさすがのわたしも焦ったけど、そのくらい亜由美ちゃんはわたしの可愛さ、綺麗さに夢中だ。亜由美ちゃんだって充分可愛いのに、お金の持っていないわたしの美貌をさらに充実させることに必死で、照れくさいやら嬉しいやら申し訳ないやら。
 亜由美ちゃんと同じくお金持ちの健一くんがわたしに手を出そうとしたときはその身を挺して庇ってくれたし、いつも可愛いね大好きだよって愛情を注いでくれる。女の子同士だし、その気持ちに応えきれないのは残念だけど、わたしも亜由美ちゃんのことが愛おしい。

 だけど、そんな幸せも束の間で、わたしたちの前にセナと呼ばれる女が現れて、亜由美ちゃんの愛情はすべてセナに注がれ始める。

 亜由美ちゃん、あんなにわたしのことを愛してくれていたのに、そんな簡単に心が移り変わってしまうの? わたしの方がセナより何十倍も可愛いし綺麗でしょ? セナは鼻が低いし、田舎者みたいな顔してるし、体型だって貧弱で、見ようによっては不細工だ。そんなやつのどこに魅力を感じるっていうの。

「姉ちゃん、こいつもういいのー?」健一くんがわたしのことを指差してセナに夢中な亜由美ちゃんに尋ねる。
 わたしはすこし前まで亜由美ちゃんの心の隅々までを虜にしていたのよ。そんなわたしをこいつ呼ばわりするなんてどれだけ失礼な男なの。亜由美ちゃん、いつもみたいにわたしのことを守って!
「うん。健一にあげる〜」亜由美ちゃんの気の抜けた声が耳に届く。え? 嘘でしょ。いまなんて言った?
 わたしは健一くんに腕を掴まれ、別の部屋へ連れて行かれる。扉が閉められる最後に見た亜由美ちゃんは、間違いなくわたしを見るときと同じ表情をしていた。心の底からわたしを大切に思ってくれている柔らかな視線。いまその視線の先にはセナがいる。わたしのために買ってくれた服も靴もヘアブラシもティーセットも、すべてセナのものになってしまった。

「よーし、遊ぶぞー!」と健一くんが嬉しそうな表情を浮かべる。釣り上がるその口角は亜由美ちゃんのときとは違い、どこか野蛮で品性の無さを感じる。わたしはこれからどんな目にあうのだろう。考えただけでも消えたくなる。

 すると、健一くんはベッドの下にある青い箱の中をゴソゴソ漁り、なにかを取り出す。「正義のヒーロー、優等戦機ガリベリオン発進!」健一くんの右手には、銀色のゴツゴツしたロボットが握られている。ちょっと待って。やめてよ、なんか嫌な予感がする。「悪を倒せ! ガリベリオン!!」健一くんはノリノリでわたしを掴み、頭にロボットの右パンチをゴンゴン当てる。非道い! 非道すぎるよ。せっかく亜由美ちゃんに整えてもらったわたしの金色で上品な髪の毛がグチャグチャになっちゃう。「くらえ! 真面目パーンチッッッ!!」ガリベリオンとかいう男の子の心をくすぐるヒーローは、わたしを悪役と見立て、強烈な一撃をお見舞いしてくる。
 頬にパンチを受けたわたしは首が捩じ切れ、そのまま体ごと部屋の隅に吹っ飛ばされた。「正義はいつだって勝つのだ!」

 ......わたしは綺麗な女の子。ニューヨーク生まれのブロンド美女。
 どうかわたしを忘れないで。ヘアブラッシングも優雅な午後のティータイムもお家だっていらないから、どうかわたしにあなたなりの愛情を注いで。亜由美ちゃんじゃなくて健一くんでいいから。

 でも、わたしの瞳に映るのは違う対象にもう心変わりする健一くんの楽しそうな表情。殴ってもぶん投げても引き千切ってもいいから、どうかわたしを忘れないで。このままじゃわたしは......。

 ーーわたしは美しい、みんなに愛される女の子。いまは埃かぶって誰に見向きもされないけど、どうかすこしでも気にかけて。すこしでもわたしのことを思い出して。美人は3日で飽きるなんて嘘だと言って。


 そしてまたわたしは、いつかあなたと、あなたたちとーー。


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