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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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7 Green Days

15/07/04 コンテスト(テーマ):第八十六回 時空モノガタリ文学賞 【 掃除 】 コメント:2件 みや 閲覧数:1187

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日曜日

朝の早い時間からヘリコプターがバタバタと空を旋回している。窓を閉めて下さい、しばらくの間絶対に外へ出ないで下さい、と微かに拡声器の声が聞こえる。ああ、今日から始まるんだったな…と晴翔はまだ眠りの海を漂いながらぼんやりと考えていた。そういえば子供の頃、夏になると朝早くに害虫駆除の為の薬剤を散布する車が来ていたな。母さんが汚染されない様に慌てて洗濯物を取り込んでいた。今回散布される薬剤は言わばそれのかなり強力なタイプと言う事だ。その殺傷力は虫も植物も人間さえも殺してしまうかもしれない…しばらくの間絶対に外へ出ないで下さい、何度もその声を聞きながら晴翔は再度眠りに落ちた。慌て洗濯物を取り込んでいる母の夢を見ながら。

月曜日

昨日あのまま眠り続けていた晴翔が空腹で目覚めると既に月曜日の朝になっていた。籠城の為に冷蔵庫にたっぷり保存している冷凍食品からパスタを取り出し、電子レンジで温めている間にテレビのスイッチを付けた。画面には定点カメラのリアルタイムな全国各地の映像が流れている。薬剤の効果で、やつらの勢力はピタリと収まっている様だ。温まった保存料まみれの冷凍食品のパスタを食べながら、晴翔は普段ならもう会社に着いて仕事が始まっている頃だな、と思う。既に交通機関はやつらに侵食されているのでもう会社に行く必要は無いのだけれど。テレビの画面をDVDに切り替え晴翔はお気に入りの映画を観る事にしたが、すぐに眠りに落ちてしまった。

火曜日

晴翔が目を覚ますと既に火曜日の夜だった。テーブルには昨日の食べかけの冷凍食品のパスタが乾燥し、鎮座していた。テレビはDVDのチャプター画面で停止していて、チャンネルを切り替えると、アナウンサーや科学者や生物学者達の討論番組が放送されていた。こんな時にテレビ番組が放送されているのか、と晴翔は驚いた。薬剤散布の為に外出は禁止されているのだから、彼等はきっとテレビ局に寝泊まりしているのだろう。ご苦労な事だな…晴翔は皮肉交じりに思う。彼等は激しく討論している。薬剤散布によりやつらの増殖を抑える事が出来たと喜ぶアナウンサー。油断は許されないと襟を正す科学者。そもそも何故この様な事態に陥ったのかと問題提起する生物学者。何故この様な事態に陥ったのか?

水曜日

三ヶ月前に起きた晴翔の実家の町の原子力発電所の放射能漏れ。近隣住民はすぐに安全な場所に避難した。晴翔の母は大丈夫だから、と電話で気丈に振舞っていた。晴翔は直ぐに駆け付けたかったが、町は立ち入り禁止であり、何より母は晴翔が来る事を拒んだ。人体には影響が無いと政府は発表したが、放射能漏れが起きてから異変が起きた。人間に異変が起きたのではなく、木や葉の自然植物の異常なまでの増殖が始まった。その増殖は凄まじいもので、ビルや建物や人までをも飲み込み、町はあっという間に森と化し、自然植物たちは猛スピードで全てのものを侵食して行った。晴翔が今いる街も既に自然植物たちは侵食を始めている。昨夜も晴翔はテレビの討論番組を見ながら睡魔に襲われ、眠りに落ちる前に科学者が言っていた、散布される薬剤の安全性の事が頭にこびり付き離れなかった。

木曜日

晴翔が目覚めると木曜日で、丸一日以上眠っていた事に不安を感じた。空腹なのでカップラーメンにお湯を注ぎ食べたが、余りの不味さに驚く。パソコンの電源を入れて、自然植物の異常増殖、散布薬剤、色々な情報を見て回った。散布されている薬剤はドアや窓の隙間から入ってくるのではないか?植物植物の増殖を止めるには焼き尽くすしかないのか?皆疑心暗鬼になっている人々の書き込みばかりだった。薬剤の副作用としては味覚障害等の身体への影響や、だからこんなに食べ物を不味く感じるのか?麻薬の様な成分も含まれている様で、だからこんなに眠いのか?パソコンの画面を見ながら晴翔は無意識に眠ってしまっていた。

金曜日

付けっ放しだったテレビの定点撮影の映像に変化が訪れた。ピタリと動きを止めていた自然植物たちが再び増殖を始めた。どうやら散布された薬剤に対し免疫力を付けた様で以前より更に増殖のスピードが早まっている。凄まじい抵抗力であり生命力…テレビ局の討論番組ももう放送されていなかった。テレビ局も最早侵食されてしまった様だ。晴翔は朦朧とする意識の中でその画面を眺めていた。

土曜日

晴翔の部屋の玄関や窓の隙間からメリメリと音を立てながら侵入し、やつらが晴翔の部屋を侵食し始めた。晴翔には既に意識は無かったのだがやつらがすぐそこまで近づいて来ている事を本能的に察知していた。不思議と恐怖は感じなかった。やつらに包み込まれ侵食されるその瞬間でさえ、何故か安心感を覚えた。母も恐怖を感じずにやつらに侵食されたのだと思うと晴翔は安堵し、意識は無いのに何故か頬を涙が伝った。


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このストーリーに関するコメント

15/07/24 泉 鳴巳

世界も自分もすべてが“やつら”に呑み込まれてしまえば、ある意味喪った母親とも一体となれるのかも知れない…などと考えてしまいます。
この作品が「掃除」をテーマとして投稿されているところに皮肉が利いているなあと感じました。

15/08/02 みや

泉 鳴巳 様

コメントありがとうございます☺︎
やつらに侵食されて全てが一つになるー
正にその通りですね。地球の大規模な掃除なのかもしれません。

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