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クナリさん

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美女とちんぴら薬

15/06/29 コンテスト(テーマ):第八十七回 時空モノガタリ文学賞 【 私は美女 】 コメント:5件 クナリ 閲覧数:1074

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「いい男いないかなー」
 お悩みですね、美しい妙齢のご婦人。
「誰あんた」
 薬売りです。この『ちんぴら薬』をいかがですか。
「それ飲むと何なの」
 ちんぴらになれます。
「…なれます、っていうほどのもんかしら」
 人生のハードルが下がりますよ。
 例えば真面目で黒髪で眼鏡の男の子がいるとして。そういう子って、ある朝近所のおばさんにたまたま一度挨拶を返し損ねただけでくそみそに言われるわけです。『最近調子に乗ってるのかしら』『真面目そうに見えて、ただの無愛想なんだわ』と。
「ああ、まあね」
 これが不良の場合、年に一回『ハヨッス』と返しただけで、もう評価が一変するわけですよ。『あの子、根は真面目なんだわ』『私今まで誤解していたみたい』と。
「そんなもんよねー」
 そんなわけで、どうです? 隙が増えて男も食い付き易くなりますし。
「私プライドが高いわけじゃないけど、そういうの気に食わないの」
 プライドは山より高く見えますけど。
「正直今の日本の制度では、結婚に価値を見いだせないしね」
 制度の問題ですかねえ…あ、いや。でもせっかく美女なんですし。
「私、コラムニストなの。顔で売ってないから」
 ちょっとググらせて頂きます。…ああブログこれか、『美人コラムニストとか言われて困ってます(笑)』…これ自分で書かれたんですか。しかしえらくマイナーみたいですね。
「プロによる、プロ向けの文章だからね。一般受けが難しくて」
 仕事より、ツイッターの方が遥かに更新してるんですね。しかも内容が、有名人との2S写真自慢、出版社の悪口、恋や人生のポエム…。
「私、両親からはほぼ男の子として育てられたから。やりたいことへ突っ走っちゃうの」
 むしろ超女々しい言い訳のような気もしますが。異性性を有していることに何のプレミアムな価値観を抱いているのか知りませんが、ジェンダーの問題ってそんな気軽なもんじゃないですよ。あなた今のところ男どころか、嫌な女全開ですし。
「ええ。異端者だから、いじめられたりもしたわ」
 あ、それは酷いですね。具体的には?
「とっておきのロングポエムを披露したら私に話しかけて来る人が誰もいなくなったり、私と遊んだ子は初回以降遊びに誘ってくれなくなったり」
 …それいじめって言うか単に避けられて、つか嫌わ…
「何でも自分でやろうとして、またデキちゃうもんだから、誰にも相談できなかったのよね」
 先生とかは?
「先生は、こんな私を特別扱いしちゃうのよね。仕方ないわ、特別だから。そうすると他の子達からは余計にいじめられるわけ」
 単に、先生の手間がかかる面倒臭い子供だっただけでは…。
「男子にはよく言い寄られて付き合ったけど、途中で皆私について来れなくなるのよ」
 男の方も顔目当てで付き合って、やがて文字通り、付き合ってらんなくなるわけですね。
「結婚だって、私以上に仕事ができる人とじゃなければ嫌だもの」
 あなたがなんぼのもんだか知りませんが、仕事ができようができまいが相手も嫌だと思います。
「それに、私勘が鋭過ぎるみたいで。付き合う前から別れるヴィジョンがピーンと浮かんだらその通りになるから、付き合っても無駄じゃない? あー自分の勘が邪魔だわ、鋭過ぎて」
 僕は勘は並みですが、あなたが男と破局する未来はまざまざと目に浮かびますねえ…。
「まあ、仕事してる限り結婚できないわね。私のプロな仕事ぶりは、男に劣等感を植え付けるから」
 一々プロ論を立ててプロプロ言うのがプロですかねえ…。少なくとも僕は今、劣等感とは別の感情を抱いていますが。てか働く女性って、結構モテますよ。
「私の仕事、他の女と違うから。ネタ探しから何から、私の仕事だからって全部私がやんなきゃだめなのかしらって感じ」
 まあ、それがあなたの仕事ならそりゃそうでしょうねえ。
「そう、ツイッターでもそんなことリプして来る人いるのよ生意気な。他にも私、表現活動として政治経済の諸問題にも純粋で根源的かつ正義的価値観の下に切り込むのね。与党撲滅、右翼は死刑よ、人権人権! そうすると、その発言はさすがにいかがかと思いますとか、あなたの知識には致命的に欠けている部分がありますとか、偉そうに言うわけ。速攻でブロックするけど」
 それはあなたのためだったんじゃ…。
「私、自分ほど不幸な人見たことないの。誰より歯を食いしばって、死に物狂いで生きてるのに。親元には親元の苦労があるしってあれ、どこ行ったの?」

 あ、もしもし課長。今、例の被害者意識レベル最高の自称不幸者の所行って来たんですが。
 いやそれが、あんなに幸せそうな人見たことないです。やはり女の人って、美人でさえあればそれなりに幸せになれるもんなのかも…なんて。
 下手に薬とかいらないですよ。
 今日は直帰しますんで、それじゃあ。


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このストーリーに関するコメント

15/06/29 クナリ

某芸人さんや後輩の男子達の話を聞いていて、「こんな女の人は好きになれない」という要素を羅列しただけのようなこの文章を、あたかも小説のような顔で投稿してしまうことに罪悪感がないわけではないのですが。
ともあれ、ご笑覧いただければ幸いです。

言うまでもありませんが、この話はフィクションであり、実在の人物で特定のモデルはおられません。
いた方が面白いかな、とは思いますが…こんな人。
いやどうかな…。
でも、いるところにはいるのかな…。

親元暮らしや孤高の自称プロを揶揄するつもりはないんですけど、不幸自慢のタネにした途端に、その人の全てが安っぽく見えてしまうのも不思議です。
最近、「もといじめられっ子エピソード」や「異なる性として育てられた話(圧倒的に、『男の子として育てられた女の人』の方がその逆よりも多い気が)」といったトラウマの種を得意げに語られることが増えた気がします。
本当かどうかもともかく、あまりにも揚々として手馴れた話しぶりに、本当にトラウマなんですか? と思ってしまうと言うか。
本当にトラウマとして抱えている人は、余計にカムアウトしづらくなりそうだなあ…なんて。

そして自分は、完全にコメント欄の使い方を間違えている…と。

15/07/26 霜月秋介

クナリ様、拝読しました。
なんかこういう女性、いそうですね(笑)自意識過剰といいますか…
やはり女性は外見は勿論のこと、中身も重要ですね(笑)

15/07/26 クナリ

霜月秋介さん>
このようなひどい話に、コメント有難うございます(^^;)。
美人をこじらせるというのも、なかなか大変なようです…いえ、特定のモデルさんなどはないのですが。
本当、人間の中身が外見ほど分かりやすければいいんですけどね。

15/07/28 三文享楽

自分の欠点はプラスに変換して生きていこう的な風潮の中で、聞いてもいないのにベラベラと不幸自慢をまくしたてる人間が世の中にいますが、そうした人種が上手く描き出されていますね。私はそういう風潮を否定しませんし、むしろ誰もが欠点を武器にして生きていける環境は素晴らしいことだと思いますが、どうもそうした現状に水を差したくなります。
たとえば、性同一性障害の苦労話を訴えていたおねえ芸人が、女らしさの演技から突如野太い声を出して笑いをとろうとする姿がまるで笑えません。「おまえ、それ嘆いていたことじゃねえの?全然笑えねえわ」って思います。
だから、この話が最後、裸の王様的な勘違い美女を笑いにしてる点が気に入りました。それなりの器量と勘違いできる力があれば、幸せになれるものですね、ははは。

15/08/01 クナリ

三文享さん>
好き放題に書いてしまいました(^^;)。
幸福になる方法はいくつもあるとは思うのですが、こうした精神的志向もそのひとつかな、とは思います(周りは大変ですが…)。
自分の過去を今の自分がどのように運用して行くのか、まったくもって人によりますが、価値観や個性の衝突は避けられないですよね。
コメント、ありがとうございました。

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