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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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目指せ!クイズ王〜相談屋ケイジロウ 新宿編〜

15/06/13 コンテスト(テーマ):リレー小説 【 相談屋ケイジロウ 〜新宿編 A】 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:1037

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大広間にずらりと机が離れて並ぶ、その数は100を越えるだろう。学校で使うようなパイプを使った華奢で小ぢんまりした作りだ。
その椅子に正装姿の男が大勢、身を縮めるよう座り一心不乱に何か書きつづっている。
『お嬢様争奪杯 1000問クイズ』。
辞書のように分厚い問題集の表紙にはそう書かれている。
そしてけたたましいベルが鳴り響くと同時に、男たちは紙の束をアシスタントの女に渡す。
ケイジロウは命の次に大事なゼブラのボールペンを机の上に置き、同じようにすると、一人机から立ち上がり思いっきり伸びをした。
「ケイジロウ。まだベルが終わってないわ、着席なさい」
そう言って睨みつけるのは、このゲームのためにしつらえたであろう玉座に座る、豪奢なドレスの少女だった。
王冠を被り、まだあどけない天使のような容貌は見る者を魅了するが、残念ながらケイジロウはロリコンではないので、そんなお叱りはご褒美とは思わない。
「そんなこと言われてもな。俺の雇い主はあんたじゃない、あんたの祖父だ」
「何を言ってるの、グランパなんて私の傀儡よ」
宝蔵寺コーポレーション会長の孫娘であり、1クリックで世界を動かす天才投資家たる宝蔵寺亜梨子(アリス)の名は、今や世界的にも有名だ。
その彼女の婿選びの話に、会長たっての願いでボディカードに雇われたのがケイジロウだった。街の隅でうらぶれた相談屋に何のために……と、最初は首を傾げていたが、この有様を見て成程と得心いった。
「あー、肩こった。もういいだろう、お嬢様」
「良くないわ!」
「じゃあな」
「どこに行くの?」
「大人の場所」
亜梨子がまだ何かを言っていたが、ケイジロウは聞く耳を持たず、45階のスカイラウンジに向かう。


あれは1カ月前の事だった。
「つまり……お嬢様の考案した婿選びクイズ大会で優勝しろ、その上でこっぴどく振ってくれ、と」
「そんなひどい。不届きな成り上がり者を排除したうえ、優勝賞品を辞退して頂ければ、それでいい」
相談屋の事務所で、会長は笑いもせず言った。
「しかしお嬢様、自分を賞品にするとは……」
15歳といえば、いれば自分の娘ほどの歳だ、呆れてものが言えない。断わろうと思っていた。
「問題は孫娘自身が作っておる、我々には太刀打ちできない。これはケイジロウさん、いや『十勝(とかち)ゼブラ』にしかできない仕事なんじゃ」
そう言われて、ケイジロウはまなじりを上げた。
「無論知っておる。かつて世界各地のクイズ大会を荒らしまわり、優勝を総なめにしたクイズ王……。解答に鉛筆を使わず、あえてボールペンで書くその不退転のスタイルを、出身地の北海道になぞらえて、ついた二つ名が常勝不敗の『十勝ゼブラ』。ケイジロウさん、あんたの事じゃな」
「よせやい、そんな古い話」
「ここは、ある一人の乙女を更生させると思って」
手を合わせ拝まれたのは、ケイジロウとて初めてだ。しかし更正……するのだろうか、あのお嬢様。


ラウンジでビールを飲みながら、ケイジロウは新宿バッハを思う。
あれが本当に奴だとすると……必ずこのゲームに参加して、どんな手を使ってでもこの俺を妨害するはずだ。
奴は先程の会場にはいなかった。しかしシード権を持つ奴らもいるから、油断はならない。今後必ず現れる。
まいったな……。
「俺も、本気出さなきゃな」
傾けた空のグラスを、ケイジロウは素早く投げた。
歩いて来た男がナイフを出そうとしたその手に直撃して、ガラスが砕ける!
「お代は宝蔵寺コーポレーションにつけといてくれ!」
ケイジロウは確かな足取りで逃げ出した男を追いかけた。
隙を作るために飲んだのは、ノンアルコールビールだ。
45階だが男は階段を厭わず駆け降りた。望むところだ。フルマラソンクイズでの優勝経験もあるケイジロウは2段飛ばしに降りてゆく。
「お待たせしました、お嬢様争奪杯第一ステージ合格者を発表します。試験番号、1番、2番、5番、7番……」
次々と発表される合格者の中に、ケイジロウは自分の番号を確認する。
男の背中が見えてきた。
手にボールペンを握りしめたその時。


「……149番、152番、以上です。なお、第二ステージは、ここ京王プラザホテル屋上よりのばら撒きクイズとなります」
何だと?ケイジロウは思わず足を止めた。
「問題は全部で1000個、1000枚の紙にご用意しました。先程の大広間にて5問正解で勝ち抜け、合格枠は先着80名となっています。風に舞い散り夜空から降る問題、素敵ですね。開始は深夜0:00より、各自ウォーミングアップをお願いいたします」
……ケイジロウは、男を追うのをやめた。
来るなら来やがれ新宿バッハ。
俺は逃げも隠れもしないぞ。
しかし今は、風向きが西でないことを祈る。
そこは東京都議会議事堂と、都庁がある。
まずいぞ、さすがにそれは。


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このストーリーに関するコメント

15/06/13 冬垣ひなた

<補足説明>

・右の写真は無料写真素材 写真ACからお借りしました
(http://www.photo-ac.com/)

・左のイラストはシルエットACからお借りして使いました
(http://www.silhouette-ac.com/)

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