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ウはうどんのウさん

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図書室

15/06/10 コンテスト(テーマ):第八十四回 時空モノガタリ文学賞 【 江戸時代 】 コメント:0件 ウはうどんのウ 閲覧数:772

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 恵子ちゃんはいつも図書室の古典文学コーナーにいる。昼休みの間、ずっとだ。恵子ちゃんは運動が苦手だ。だから古典文学のコーナーにいる。「性根競姉川頭巾」という本を読んでいる。なんと読むのかさえ僕にはわからない。恵子ちゃんは本を読む。江戸時代の文学を読んでいる。僕は椅子に座ってなにもしない。ただ恵子ちゃんの真剣な顔だけを眺めている。そうしている間に予鈴が鳴る。あと五分で昼休みが終わる。恵子ちゃんは本を閉じる。恵子ちゃんは本を本棚に戻し、「戻ろっか」そう言って笑った。僕も笑った。図書室を出る。

 恵子ちゃんは今日も図書室の古典文学コーナーにいる。今度は「容競出入湊」というタイトルだった。「なんて読むの」僕はそう聞いた。「すがたくらべでいりのみなと」恵子ちゃんはスラスラと読んでみせた。言った後恵子ちゃんはまた本とにらめっこ。僕はいつもの通りその顔を眺めて過ごした。そうしている間にまた予鈴が鳴った。昼休み終了の五分前。恵子ちゃんが本を閉じて、「帰ろう」と言うからぼくは椅子から立ち上がる。図書室を出る。

 恵子ちゃんは図書室の古典文学コーナーにいる。「陽台遺編」という作品を読んでいる。恵子ちゃんはいつも通り本に集中している。僕は今日は自分の制服のボタンをいじったり本棚を眺めてみたりした。恵子ちゃんは、古典文学の中でもマイナーなものばかりを読んでいる。そんな気がした。それに古典文学のコーナーの中でも、江戸時代の列の本しか手に取らない。予鈴が鳴る。「御帰りなはるか」本に書いてあった言葉だろうか。恵子ちゃんが悪戯したときみたいに笑って言う。「江戸時代が好きなの?」ぼくはそう聞いた。「違うよ」そう返ってくる。「私はきみが好きなの」僕らは図書室を出る。


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