山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

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約束

15/05/27 コンテスト(テーマ):第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】 コメント:1件 山盛りポテト 閲覧数:1043

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私は傍若無人で人を信じられぬ王様から、友人の命を守るために三日後の日没までに村へ戻り、妹の結婚式を挙げさせねればならぬことになった。
「しかし参った、思わず啖呵を切ったはいいもののいざとなると命が惜しくてたまらない、なにより死が恐ろしい」
そうは思いながらも私が戻らねば最愛の友人が殺されてしまう。
私は重い足に精一杯力を込めて走り村へ戻った。
妹の結婚式を済ませ、眠りについた。
「いっそこのまま帰らないというのはどうだろうか?友人は私をひどく恨むに違いない、しかし死んだ人間が恨むというのもおかしな話ではないか、この世にいなくなるのだから」
目を覚ますのが億劫だった。
無理やりに目をこじあけている時によいことを思いついたのだ。
「そうだ私は日没まで必死で走った、必死で走ったのだがあと一歩のところで間に合わなかったために友人が死ぬことになった、これであれば良心の呵責に苦しむこともない、最愛の友人を失うことは悲しいことだが、自らの命には代えられない」
私は必死でわざと遠回りをしながら走った、息を切らせ身をボロボロにさせ、あと一歩で間に合わないということが重要なのだ。
途中目の前に山賊があらわれた。
「待て!」
「どうした、私は急いでいるように見えるが実はそうでもない、かと言ってあまりに遅れると私が薄情者になってしまうかもしれぬのだ、お前たちにかまうほどの時間の余裕もない」
「何をごちゃごちゃ言っているんだ、お前の命をもらうぞ」
山賊は私に殴りかかってきた。
「もっと気合を入れて殴ってくれ、なるべくひどく痛めつけるのだ、私の姿が哀れであればあるほど、ああ一生懸命頑張ったのだからしょうがないだろうという観衆の気持ちにつながるではないか」
「な、なんなんだこいつは」
山賊は勢いをつけ再度殴りかかってきた。
「よしそんなものでいいだろう、それ以上であれば私は死んでしまう」
山賊を殴り倒し再び歩みを進めた。
「ん?まだ日没ではないというのにもう着いてしまったではないか、これでは私は殺されしまう」
日没まで遠くから待つことにした、そうして次第に時間がすぎ、丁度日が沈んだ頃だ。
私は山賊に襲われ、昼夜走り回りボロボロになった体をひきずりながら友人のもとへ戻った。
しかし私が到着したのは、今、まさに友人が殺されようとする瞬間であったのだ。
「まずいこのままでは私が殺されることになるではないか!身を隠さねば」
そこで観衆の一人で私の姿に気付いた。
「戻ったぞ!男が戻って来た!」
たちまち辺りが騒ぎ出し、王様も私の存在に気付いた。
「本当に戻ったというのか、自らの命がなくなるのかもしれぬというのに」
「しかし王様、既に日没の時間が・・・・」
「そんなことはどうでもよい!今すぐ処刑を中止にするのだ、私は今、確かにこの目で真の友情というものを見た、私もその仲間に加えてはくれぬか」
「ええ、それはかまいませんが・・・・」
「よくぞ戻ってきてくれた」
友人が私の元へ近づいてきた。
「あ、ああ!当然ではないか私の最愛の友人なのだから」
「ここでお前と抱擁したいところだが、それはできぬのだ、抱擁する前に私を殴ってくれ、一度でもお前を疑ってしまったのだ、もし殴ってくれねば私は抱擁などとてもできない」
私は戸惑いながらも力一杯殴った。
私など何発殴られるかわからぬことをしていたというのに、しかしこの状況では言えまい。
私と友人は熱い抱擁を交わした。
そこへ少女がひとりマントを持って近寄ってきた。
私は訳が分からぬまま立ちすくむと友人がこう言った。
「この少女はお前の裸体を見られるのがひどく恥ずかしいのだ」
友人はこのように言っているが
私が隠したかったのは裸などではないのだ。


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このストーリーに関するコメント

15/06/04 光石七

拝読しました。
『走れメロス』のパロディ、こんなメロスでは友情の美しさへの感動が薄れますね(笑)
でも、保身を考えたり自分の良心の痛みが少なくて済むよう計算したりするのはある意味人間らしくて、親しみを感じます。
主人公はこのまま友人に真実を告げなそうですね。
面白かったです。

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