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塩漬けイワシさん

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時過ぎてから

15/05/25 コンテスト(テーマ):第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】 コメント:2件 塩漬けイワシ 閲覧数:783

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大丈夫です。私は小鳥のままでいられます。

私はあの時まで、生きるために精一杯、耐え忍んでいました。
気付いていないでしょうが、
あなたは宇宙人でも見るかのように、未知への恐怖を顔に貼り付けていましたね。

あなたはあなたが生んだ私を、自分の複製だと。
きっと、そう思って期待していたのでしょう?
自分の信念はへその緒を通じて分け与えられたと思っていたのでしょう。確認もせずに。

命令して、着せ替えて。穴をあけて、色を抜いて。
私を連れ歩く自分が、どう見られているか。いつも気にしていましたね。
そうして生きていくことしか、知らなかったのでしょう。

血が繋がっていようが、無条件の信頼は寄せられません。
言葉を交わさず相手を理解できるでしょうか。
包丁を持った人間に意見が出来るでしょうか。
かけた労力に見合ったモノになれと言われて、軽蔑せずにいられるでしょうか。

自分の身を守るために、あなたの命令を聴いていただけに過ぎません。
私が泣き喚いても、耳をふさいでいたでしょう。

私は逃げました。
見て来たのは逃げるあなたの背ばかりですから、そうすることしか知らなかった。
でも、耳はふさがなかった。
あなたの泣き声。欺瞞に満ちた感情の洪水。
でも、きっとその中にわずかでも、

何年かぶりに顔を合わせて話したのに、またそうやって聞かない振りをするのですね。
いいえ。ここにあるのは抜け殻で、すでにあなたは居ないのかも知れません。
わかっていたから、今日だけは、帰って来ました。

できることなら、こうなる前に話してあげたかったのだけど。

私は少し感情が表現できなくて、少し頭が悪くて、少し猜疑心が強かった。
そしてあなたのことがわからなかった。ただ、それだけのことです。
悲しい事故が起きただけで、誰が悪いわけでもない。
生まれるところを、取り違えてしまったのかも知れませんね。

だけど、大丈夫。
今ではいびつに折れ曲がってしまいましたが、
あなたの思い出の中では、かわいい小鳥のままでいられます。


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このストーリーに関するコメント

15/06/03 光石七

拝読しました。
歪んだ母子関係に、息苦しさと切なさ、哀しさを感じました。
口調は丁寧だし主人公が優しく微笑みながら語っているイメージが浮かぶのですが、どこかぞっとするものがあります。
知らず心を絡め取られるような、不思議な力のあるお話だと思いました。

16/01/08 塩漬けイワシ

>光石七様
大変遅くなりましたが、感想ありがとうございました。
親子関係も時代の違いはあれど、いろいろあるだろうなと思っています。

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