1. トップページ
  2. ブラザーズテイル

くにさきたすくさん

電子ショートショート作家  blog:http://taskuni.hatenablog.com/ twitter:https://twitter.com/taskuni

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

4

ブラザーズテイル

15/04/22 コンテスト(テーマ):第八十一回 時空モノガタリ文学賞 【 三匹の子豚 】 コメント:10件 くにさきたすく 閲覧数:1127

この作品を評価する

 俺に何の用だ?
 ああ、オオカミなら確かに俺ん所に来たぜ。でかいのなんのって。吐く息もすげえんだ。家はわらで適当に作ったもんからすぐに吹き飛ばされちまった。
 普段なら返り討ちにするところだが、あいにくその日は寝起きでな。目がまだぼやけてたんだ。ちょっと不利だ。ただ俺も足には自信があるんだ。オオカミにだって引けを取らないぜ。だから、かろうじて窮地を脱することが出来た。
 そして次男の家に行ったんだ。兄弟ってのは助け合うもんだろ? 逃げたんじゃない。反撃するまでの時間稼ぎさ。ただその家にもすぐヤツが来て壊されちまったけどな。ホントしつこいぜ。
 それで次男と一緒にここに来たんだ。ほら見なよ。三男はこんな立派な家を建ててた。まあ俺がそうしろって言ったんだけどな。お前なら出来るってな。
 ヤツはこの家を壊せなかった。で、煙突から入ってきやがった。まったく野蛮なヤツだぜ。
 だがヤツは俺たちの罠にはまった。俺が立てた作戦さ。ぐつぐつ煮えたぎった鍋に自分からどぼーん。あれは傑作だった。くっくっく。ぐつぐつ煮られるヤツの苦悶の表情を見せてアンタにもやりたかったな。
 で、食っちまったのさ。
 絶品だったぜ。
 なんだよその目は。まさか疑ってんのか? ああ、そういやあの後に他にも被害が出たようだが、そりゃ別のオオカミのしわざさ。
 弟に話を聞きたい? 奴らは今ここにゃいないぜ。


 兄貴がオオカミを食ったって?
 出まかせを言ってるだけさ。昔からそうなんだ。だってありえないでしょ。僕たちは肉食じゃないんだから。ほら、この辺に生えてる草を食べるんだ。たまに虫なんかも食べるけど、オオカミを食べるなんて考えたことも無いね。
 兄貴の言うことは信用しないで。ちょっとでも自分を大きく見せようと嘘ばっかりつくんだ。実はすごく怖がりなんだよ。あれから一歩も家から出ようとしないし。
 うん。食べてはいないけど、鍋に落ちて大やけどをしたんだ。もちろんこれを計画したのは弟さ。その時兄貴は震えあがってたし、僕はそこまで賢くない。でもあれはひどかった。僕もちょっとやりすぎだと思ったよ。その後オオカミは僕たちを食べるのをあきらめてどっかに行ったよ。
 行先は知らないなあ。
 だから、お婆さんもこんなところを一人でうろついてたら危ないよ。まだこの辺にいるかもしれない。
 そのオオカミを探してるの? まさか飼い主ってことはないよね。
 そうだ。もしオオカミについて知りたいことがあるなら、向こうの広場に行ってみなよ。いま集会をやってるんだ。弟もそこにいるよ。聞いてみるといい。


 すみませんお待たせしまして。
 私に聞きたいことがあるということでしたね。
 ええ。そうです。兄のいうとおりです。私の家に来たあと、オオカミはどこかへ行ってしまいました。そのすぐ後ですよ。あの事件が起きたのは。やはりあの時に始末しておけばよかったと後悔しています。
 ご存じないですか?
 そのオオカミに子ヤギが食べられてしまったのです。7兄弟のうち、6匹も。
 でも何の拍子に6匹全員吐き出して逃げていったということでした。いやあラッキーでしたね。
 別のオオカミの可能性? それは無いですね。あれは間違いなく同じオオカミのしわざです。母ヤギが、大きなやけどの痕を見たって言ってますからね。間違いないです。
 ただ、その後の行方は分かりません。だからこうして自警団を組織しようとしているのです。その逃げたオオカミのためだけではありません。他にもオオカミはいます。彼らは強い。だから我々の力を合わせて対抗しようというわけです。
 そうですね。母ヤギは参加していません。子供たちと家にいます。しょうがないでしょう。助かったとはいえ、相当にショックな出来事ですから。今はそっとしておくべきですよ。


 もうその話はしたくありませんわ。おそろしい。私の子供を丸呑みにしてしまうなんて。
 自警団? そんなもの作ったってオオカミにはかないっこないわ。弱い動物たちがいくら寄ってたかったって無駄。
 私は大丈夫。オオカミなんか怖くないわ。
 何でかって? ふふふ。そうね。お婆さんになら話してあげるわ。皆には内緒よ。私の子供たちを食った報いなのよ。ふふふ。皆は知らないけど、ヤツは死んだわ。ヤツが寝ている隙に腹から子供を取り出して石を詰めてやったのよ。そして井戸に落っこちた。溺れて死んだの。ふふふ。もうヤツは現れない。ふふふ。
 何よ。
 何なのよ。その目は。
 オオカミには兄がいるって?
 知らないわそんなこと。何の関係があるのよ。
 行方不明になったオオカミを兄が探してる?
 何であなたがそんな話をするのよ。
 お婆さん。
 ねえ、お婆さん。
 何でそんなに怖い目をするの?
 何でそんなに口が大きいの?
 何で――


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/04/22 戸松有葉

これはすごいです。2000文字でもここまで多くの展開を書けるものなのですね。お婆さんが何者かは気になっていました。「童話が三匹の子豚だけではない」「狼といえば」で推測できるはずでしたが、わからずに最後に「やられた」と思いました。

15/04/22 くにさきたすく

>戸松有葉 様

ありがとうございます。
2000字ギリギリですが、何とか書き上げました。(^^;)
やられてくれましたか。こちらの思惑通りに読んでいただけることほど嬉しいことは無いです。

15/04/27 久我 伊庭間

この結末は予想できませんでした!
最後の有名なフレーズが利いてますね。
読み終わった後ふと、母ヤギだけでなく三匹の子豚たちも……と思ってゾッとしました。
断片的なだけに、想像が膨らみます。

15/04/28 くにさきたすく

> 久我 伊庭間 様

ありがとうございます。
オオカミが登場するお話が結末まで奇跡的に組み合わさってくれました。
土台となった三つの物語に感謝です。

15/05/02 くにさきたすく

> 志水孝敏 様

ありがとうございます。
ほぼ元々のストーリーをなぞっているので、そこで飽きられるのはいやだなあと、キャラクターで引きを作ってみました。
なかなか計算通りに読ませるというのは難しいところもありますが、計算しながら書くというのは楽しいものですね。

15/05/02 くにさきたすく

> 志水孝敏 様

わざわざコメントまでありがとうございます。恐縮です。(汗)

15/05/06 光石七

拝読しました。
二人称のみで語り手が交代していくスタイルが作品全体の雰囲気を効果的に演出しているように思いました。
オオカミつながりのオチもお見事です。ラスト3行を読むまで聞き手の“お婆さん”の正体に気付けませんでした。
こういう書き方もあるのだと勉強になりました。
何よりも、文句なく面白かったです。

15/05/06 くにさきたすく

> 光石七 様

ありがとうございます。
三匹のこぶたにインタビューする話を書こうと思っていたのでこんな形になりました。
結局インタビューではなくなったんですが、いい感じにまとまってくれました。
楽しんで頂けたようで良かったです。

ログイン
アドセンス