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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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目玉焼き騒動記

15/04/20 コンテスト(テーマ):第八十回 時空モノガタリ文学賞 【 テーブルの上 】 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:2248

時空モノガタリからの選評

主婦の仕事の大変さや微笑ましい家族の様子が、日を追って変化するテーブルの上を通して楽しく描かれていると思います。最初は外食ができて喜んでいたのにだんだん困って行く様子が泡沫恋歌さんらしくコミカルに読みやすく、描かれていますね。典型的な平凡な家族像なのに退屈でなく面白かったです。

時空モノガタリK

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 騒動の発端はテーブルの上の目玉焼きから始まった。

 父は顔を洗うと朝食のテーブルに着く。献立は、ご飯、みそ汁、サラダ、そして目玉焼きだった。突然、父が大声を出した。
「おいっ、俺の目玉焼きが片目しかないぞ!」
 目玉焼きが大好きな父は、二個玉子を使った両目の目玉焼きを毎朝必ず食べている。それが、今朝は片目の目玉焼きが皿に乗っていたのだ。
「会社の健康診断でコレステロールが高いって出たでしょう。これから片目の目玉焼きにします」
 母がきっぱりと宣言した。
 その言葉に父は猛反発! 朝から目玉焼きのことで夫婦喧嘩になった。
「俺は家族のために働いてるんだぞ。好きな物くらい食べさせろ!」
 専業主婦の母に《養ってやっている》みたいなモラハラ発言をした。
 さらに怒った父はテーブルの上の目玉焼きをひっくり返し、それを見た母は食べ物を全て片付けてしまった。気まずい雰囲気がリビングに流れた。
 出勤時間なので父は慌てて出て行ったが、もの凄い怒りのオーラを放ちながら、ガチャガチャと乱暴に茶碗を洗う母の背中を僕は見ていた。


 ■母、不在一日目
 テーブルの上にメモが乗っていた。『しばらく不在します。母』素っ気ないほど簡潔な文章が、母の強い決意を現わしているようだ。
 仕事から帰ってきた父にメモを見せると「勝手にしろっ!」そう言い放って、くちゃくちゃに丸めてゴミ箱に投げ入れた。
 夕食は宅配ピザを頼んだ。節約家の母は滅多にピザを頼んでくれないので僕は大喜び。父はいつも発泡酒一本しか飲めないが、今夜は三本も開けてご機嫌だった。

 ■母、不在二日目
 ファミレスのテーブルの上に僕はハンバーグ、父はステーキ、豪華な夕食だ。
 うちは母が専業主婦なので外食は月に一度しかない。高校の弁当代に父が二千円くれたし、コンビニでパンを買って安く上げる。
 当分、母が帰らなくてもいいとさえ思っている、今の僕だ。

 ■母、不在三日目
 テーブルの上、ほか弁を父と食べる。
 母が家出して、今日で三日目だ。心配になって「メールしようか?」と父に言ったら、「ほっとけっ!」と不機嫌な返事が返ってきた。
 どうやら母の携帯にかけても、メールしても父には返信がないらしい。
 僕がメールしたら『ジョンの散歩と餌お願い、庭の花に水やり忘れないね』ときた。僕らのことよりも犬と花の方が心配らしい。

 ■母、不在四日目
 今夜は父が仕事で遅くなるので、テーブルの上のカップ麺を一人で食べた。
 ジョンの散歩と水やりがあるので部活も休んでいる。そろそろ母に帰って貰わないと不自由で仕方ない。弁当のパンはもう飽きた。

 ■母、不在五日目
 テーブルの上が、ゴミで溢れ返っている。
 父と片付けるがゴミの分別が分からない。着替えがなくなってきたので洗濯しようとしたが、洗濯機の使い方が分からない。僕も父も家事スキルが低過ぎる。
 今まで母が全部やってくれていたので、不在だと男二人で右往左往している。ついに父と口喧嘩になり口を利かなくなった。
 堪らなくなって、『母さん、いつ帰るの?』とメールしたら『もう、ちょっとね』と返事がきた。

 ■母、不在六日目
 夜中にトイレに行こうと階下に降りたら、リビングに灯りが……テーブルの上にウィスキーの瓶を置いて、父が溜息吐きながら飲んでいた。
 昨夜、父と喧嘩になって「母さんが家出したのは、父さんのせいだ!」と僕が言ったことを気にしているのかなぁ……最初は強がっていたが、妻の家出が相当堪えているようだ。

 ■母、不在七日目
 父が憔悴しているのが目に見えて分かる。最近は冷食とインスタントばかり、母さんの作ったご飯が食べたい!
 テーブルの上から、『SOS! このままでは僕も父さんも死んでしまう!』救命メール発信する。


 やっと、やっと母が帰ってきた!

 テーブルの上に、白い恋人とロイズのチョコレート、なぜかマリモが乗っていた。
 短大時代の友人が北海道に嫁いでいるので、そこで世話になっていたらしい。母は「小樽や札幌や函館を観光して周って楽しかったわ。命の洗濯しちゃった」と満面の笑みで語った。――その間、僕と父は地獄だった。
 母が帰ったことを、早速、父にメールで知らせたら『すぐ帰る!』と返信。会社を早退でもしたのか、すぐに帰ってきた。
 久しぶりの家族の夕食は、母が北海道の友人に習ったという、鮭たっぷりの石狩鍋だった。本当に美味しくて、お腹一杯食べた。

 翌朝、両親は仲直りしたみたいで、テーブルの上には両目の目玉焼きがあった。
 隣の駅まで二十分ほど歩いて電車に乗るという条件付きで、父は両目の目玉焼きが許されたようだ。我が家の『目玉焼き騒動』これにて、一件落着! 

 母の手作りのお弁当を持って「行ってきまーす!」僕は元気よく学校に通う。


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このストーリーに関するコメント

15/04/20 鮎風 遊

なるほど。
こういう展開で、再確認。
母は、いや妻はめちゃくちゃ強かった。
しかし、このお父さん、結構幸せですね。
私なんかいつも50秒チン目玉焼きを一人で。
時々、爆発しちゃいますが。

面白かったです。



15/04/21 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

平和なお家で微笑ましいですね、といっては当事者さんたちに叱られちゃうかもですが。苦笑 
ところで、目玉焼きって、やっぱ両目でないとそう呼ばないのですね、私などケチなもので、いつも片目ですわ。もう片方は、ウインナか胡瓜細切りでも代りに置いて、ウインクしていることにでもしておきましょう。
お母さんが戻ってきて良かったですね、お蔭で北海道旅行できてお母さんはラッキーだったかもですね。

15/04/21 たま

恋歌さま、拝読しました。

とってもです♪ 
どこにでもありそうなお話なのにとても新鮮ですね。
いつも、恋歌さんの掌編を拝読して感心するのは、どれもこれも創意工夫に満ちているということです。
読者を飽きさせない、裏切らない、と言うか、またもや恋歌さんの手中に嵌ってしまうのです。
読者はそれを当たり前のように受けとめますが、恋歌さんの努力たるやすごいものがありますね。敬服します。
頑丈な? 恋歌さんですけど、息抜きしながらがんばってくださいね♪


15/04/21 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

目玉ひとつで大変な事態になってしまいましたが、家族って、
こういうささいなできごとの積み重ねで出来ているのではとしみじみと思いました。
コレステロールの敵だと言われていた卵ですが、最近はそうでもないようなことになっているようですね。
といっても、うちはもともと片目です♪

15/04/22 光石七

拝読しました。
息子の視点からの描き方がいいですね。
やはり家の中はお母さんがいないと回らないようで……
なんだかんだでいい家族、微笑ましかったです(地獄を味わった主人公には悪いのですが)。

15/04/28 横須賀 陽夏乃

読ませていただきました。
家族の一つの騒動の発端が目玉焼きで、
それで父子は母(妻)がいないことで
苦労する。
それをテーブルの上の食事内容から
かいま見えたのがリアルで良かったです。
全体を通して面白い物語でした!

15/05/02 ドーナツ

たかが目玉焼き、されど目玉焼きですね。

モラハラ発言はあっても、すてきな奥さんのいる素敵な家庭なんだなと思います。

もうすぐ母の日だもんね。
お父さんから 素敵な目玉焼きのプレゼントがあったりして、なんて、お話をよんだあと、楽しいことを想像します。

15/05/11 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、コメントありがとうございます。

母と妻は強しで、男性軍はタイヘンな思いをしたようです。
こういう専業主婦で家事を負担させていない奥さんが、突然、いなくなったら
残された家族はパニックになると思います。

鮎風さんは家事スキルが高いので大丈夫ですね。


草藍 様、コメントありがとうございます。

うちもだいたい片目の目玉焼きが多いですよ。
私は玉子は好きだけど、2個も要らない。

お母さんとしては北海道旅行もできたし、家族に自分の必要性を
痛感させられて良かったと思う。


たま 様、コメントありがとうございます。

頑丈なだけが取り得の泡沫恋歌です(笑)

仕事と創作の両立は肉体的にも精神的にもシンドイ時もありますが、
苦しいと感じずに、楽しんでいこうと思っています。
作者が楽しんで書いた作品は、読者の方にも必ず楽しんで貰えるという
自分なりの信念を持っています。

15/05/11 泡沫恋歌

そらの珊瑚 様、コメントありがとうございます。

最近の研究で、玉子はコレステロールの敵ではないということらしいです。
もともと、玉子を使ったコレステロールの実験を兎でしたので、兎は草食動物だから
玉子を分解する酵素がなくて、コレステロールが異常に上昇したらしいのです。

実験そのものが失敗だったようです。
人間なら1日2〜3個食べても、ぜんぜん大丈夫らしいよ。


光石七 様、コメントありがとうございます。

何だかんだ言っても、この家はお母さんを中心に回っていたようです。
今回の玉子焼き騒動で、僕もお父さんもそのことを痛感したことでしょう。

まあ、お母さんの強い家は平和な家庭ですよ。


志水孝敏 様、コメントありがとうございます。

お母さんが家出した、一週間のテーブルの上の変化を僕とお父さんの心理を
織り交ぜて描いてみました。
最初は強がっていても、結局、お母さんがいないと・・・ダメなこの二人の男には、
いい薬になったことでしょう(笑)

15/05/11 泡沫恋歌

横須賀 陽夏乃 様、コメントありがとうございます。

初めまして。
家族の騒動の発端が、単なる目玉焼きだったというのがむしろリアルだと
思って書いてみました。
主婦の不満はちょっとした言葉の暴力で爆発するものなのです。
もしかしたら、北海道旅行も以前から練っていたのかも知れないね。


ドーナツ 様、コメントありがとうございます。

目玉焼きが原因で家出するなんて、可愛い話じゃないですか(笑)
あんまり深刻な理由でないので、この話がユーモアだと感じるのだと思います。

シンプルに目玉焼きって、美味しいよね(○>ω・)ь⌒☆

15/06/06 泡沫恋歌

時空モノガタリK 様、コメントありがとうございます。

ごく普通の日本の食卓で起こった、目玉焼きが原因の騒動を
主婦がいないとあんたらが困るんだよ、というメッセージを込めて書きました(笑)

専業主婦は社会的に軽視されがちですが、主婦スキルを育てるのに何年も
費やした職人技なのです。

専業主婦は外でお金は稼がないけれど、家庭内で愛を育てているのです。

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