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中村ゲンキさん

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メタ机上の空論

15/04/08 コンテスト(テーマ):第八十回 時空モノガタリ文学賞 【 テーブルの上 】 コメント:4件 中村ゲンキ 閲覧数:1045

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「あああああ!!!!もう!!終わんないよ〜〜〜〜〜〜!!!!どうしよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」


テーブルの上には、開けっ広げにしたままのパソコンがあり、その周りにはおびただしい数の参考文献が散りばめられていた。

そう、私は大学4年生。この卒業論文を書き終えないと、大学を卒業することができない。締切日はもう一週間を切って、あと5日間。なのに、最低16000字以上書かなければいけないところを、いまだ1200字ぐらいしか書けていない...

「はてさて、どうしたものか...」


とても困ったので、助けを求めて、彼氏の英二にメールしてみる。


「卒論終わらん、どうしよう(;o;)」

「えみこ、つんだな笑」

「チョッwwwwww困ってんだから、助けてよ〜(><)」

「知らん、そんなん自分でやれ(・ー・)」

「うええええええええん!!!!!!英二のばかああああああああああ(;__;)」

「卒論なんてものは、自分の抱える問題意識に対して、自分なりの答えを論文化して、表現するもの。だから、結局は自分の言葉で論文書かなきゃいけんのだ。」

「そうだけど...」

「このままだと今年、留年wwwwww」

「うるさーーーーーーーーーーーーーーい!!!もういい!自分で頑張るから、いじわるしないで!!!」

私の卒論のテーマは、『自分について』。

私、橋本恵美子という人間存在は、いかなるものであったか?その問いを機に、自分の人生を振り返ってみると、平凡な日常生活を過ごす、ごくごくフツーの女の子に過ぎないという結論に達する。
学校の成績はいつも中の中。背丈は列のちょうど真ん中に位置する。運動も逆上がりできたりできなかったりの中途半端さ。就活で訪れた最終面接の際、「君の自己PR、フツーすぎて、つまんないねー」と言われ、その内定をいただいた会社も、評価しようもないほどの良いも悪いもないような中小企業という始末。
そう、私、橋本恵美子は、これでもかっ!ってほど個性がない。これが私の問題意識、すなわちコンプレックスである。
こうした現状を変えようと、心機一転哲学系の大学に進学したわけだが.....相変わらず現状維持のままなのである。

「はぁ...私の人生、このままでいいのかしらん」

ため息ついても仕方がない。ため息ついて、個性が身に着くなら、何度でもため息ついてやろう。さて、卒論書くか。


――あ、英二からメール来た。...あら。

「卒論、ガンバ!(^o^)/」

...なんかちょっとやる気出た。米粒ほどの微々たるものだけれど。

でも、ありがたい言葉に変わりはない。どんな何気ないことでも、褒められたり、励まされたりすると、やはり自分の存在を認めてくれるような感じがして、少し身も心もムズムズっとするのである。


――そのとき、私はハッとした。

そうか。自分の周りには、「恵美子ちゃん、恵美子ちゃん」と呼んでくれている人がいて、そんな人たちに支えられているからこそ、私という自分がいる。こんな個性のない、何気ない私でも、その存在を認めてくれている人がいる。だから、私は私のままであり続けることができる。

個性がないなんて言われたってどうでもいい。
そんなことより、私を慕ってくれる人たち全員に、「ありがとう!」と感謝の気持ちを伝えるべきではなかろうか...それが、自分という存在証明をしてくれた相手に対する、礼儀であり、またそうすることで、自分は相手の存在証明を手助けしているのだ!

そんなことが、頭の中に過ぎった。


「英二、ありがとう!」

「どういた。」

この何気ない会話の中にも、自分という存在証明をお互いにし合っているのだ......。

この時、自分の問題意識=コンプレックスに対する解答が見つかったようで、すごく嬉しかった。



.....だが、このように頭の中の卒論は進むが、パソコンのディスプレイに映る、私の卒論は一向に進まない。

机上の空論以前に、机上にさえ論理を展開することができていない。

いや、むしろ卒論なんてもう書かなくてもいいんじゃないか?

先ほど私の心の中に芽生え、そして華やいだ、私の存在証明論によって、すでに私の心は満たされた。すなわち、自分のコンプレックスは、もう解消されたのだ!これ以上、卒論でもって何を成そうとというのか!いまや私の頭の中の卒論は、卒論以上のものである!



これこそ、「メタ机上の空論」なのである!!!




教授にそういって、卒論ごまかそうかしら...なんて(泣)


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このストーリーに関するコメント

15/04/09 メラ

ゲンキさん、拝読しました。
ショート劇の面白い内容ですね。彼女の心理的な気付き。しかし、卒論は進まない。教授に猫撫で声で甘えるしかないかも。

15/04/09 中村ゲンキ

メラさん、読んでいただきありがとうございます!
やっぱり、小説書くの難しいです!内容もどこか論文調のく癖が抜けない感じがします…ともあれ自分なりになんとか書けたと思います!

15/04/18 滝沢朱音

(もしかして…あのときの方ですか?!違ってたらごめんなさい)

「いまや私の頭の中の卒論は、卒論以上のものである!」
「メタ机上の空論」=テーブルの上ってことなのかあ。哲学ですね!
面白かったです。

15/04/20 光石七

拝読しました。
彼女の気付き、素晴らしいですね。しかし、実際の卒論とは別というのがなんとも……
「メタ机上の空論」、膨らませて卒論に書けるか?
面白かったです。

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