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ポテトチップスさん

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目覚めぬ 悪夢

12/07/21 コンテスト(テーマ):【 花火大会(花火) 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1614

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川沿いの道路を武部と竹下と一緒に、西に向かって全力で走った。後ろを振り返る俺に、武部が「いいから走れ!」と怒鳴った。
俺達3人は、夜空に輝く星ぼしから身を隠すように、川に架かった橋の下に隠れた。
満月の月の光が橋の下まで差していて、顔を歪めながら荒い呼吸をしている武部の額に浮んだ汗を、照らしていた。
砂の上に胡坐をかいて、うな垂れている竹下に視線を向けると、目を瞑って必死に何かを思案しているようだった。その目が開き、竹下と目が合った。今にも泣き出しそうなその目。
遠くの方からサイレンの音が聞え出し、段々と音が大きくなって聞えてきた。
俺達3人は、橋の下で悪夢から目覚めるのを膝を抱えて待った。
昼間の真夏の大気が幾分か冷やされ、涼しいはずなのに汗が止らなかった。腕には鳥肌がたっているのに。
一刻も早く、こんな悪夢から目覚めたくて、俺は膝に顔を埋め目を瞑った。
橋の上を、けたたましくサイレンを鳴らした車が走って行った。
少しして、もう一台が。さらにもう一台が橋の上を走って行ったような気がするが、意識が朦朧としていたので、夢かもしれなかった。

体を揺さぶられ目を開けると、武部と竹下が俺を見ていた。
『あー、やっぱり夢ではなかったのか』と落胆した。
腕時計で時刻を確認すると、早朝4時。真夏の早朝は、ヒンヤリとした大気に包まれ、寒さを感じた俺は、腕を掌で擦った。
武部が「どうする?」と言った。
竹下は「俺達、絶対警察に捕まるよ。それに高校も退学処分になるよ」と、泣き声を含んだような声で言った。
どうしたらいいのか、俺には分からなかった。17歳になって、体は大人の体つきになっているのに、心はまだ子供のままだなと思った。そんな自分が情けなく思い、すぐさまそんな事を考えている場合じゃないと思った。
「とりあえず、あの場所に確認しに行ってみないか?」
武部と竹下が小さく頷いた。

俺達3人は立ち上がり、ジーンズについた砂を手で払って数時間前に来た道を歩いて戻った。
誰も口を閉ざし、足取りも重かった。
俺達の横を、車が数台行き来していたが、早朝のこの時間は人気がなく静かだった。
しばらく進むと、焦げ臭い匂いが鼻をついた。
その匂いで、間違いない事を確信した。おそらく武部も竹下も同じだろう。
墓地の横を進み、そこを左に曲がると愕然とした。
家が焼け落ちていた。火はとっくに消火されてはいたが、まだ消防車両と警察車両が前の道路に止っていて、複数の制服に身を包んだ人間が動きまわっていた。
俺達3人は、黙って今来た道を戻った。
あの焼け落ちた家の前にある公園で、花火をしようと言ったのは俺だった。
高校が夏休み中の俺達3人は、夜遅くまでゲームセンターで遊んでいた。閉店の時間になり店を出た俺達はまだ遊び足りなく、夜の街を彷徨っていた。この公園を通りかかったのは、日付が変わる少し前だ。
公園の周りには、先ほど焼け落ちた民家が1軒と、あとは墓地と幼稚園、それに中型のスーパーが1軒あるだけだったので、この時間に騒いでも大丈夫だろうと思ったのだ。
俺が武部と竹下に、花火をやらないかと言うと、2人は「やろうぜ!」と乗ってきた。
駅前のコンビニに花火セットを買いに行き、公園で花火を始めたのは日付が変わった時間だった。

満月の月明かりが薄っすらと差す薄暗い公園で、青や黄色、緑色の華やかな閃光と煙を出す花火に、幼児のように俺達ははしゃぎ、歓声を上げた。
花火を楽しんでいる俺達に、寝間着姿の老人がどこからかやって来て、「うるさい! 今、何時だと思っているんだ!」と怒鳴った後、公園の前に建つ民家に帰って行った。
その後ろ姿を黙って見ていた俺達だったが、武部が
「ムカつかね! あの家にロケット花火打ち込んでやろうぜ!」と言った。
武部も竹下も俺も、口元に笑みを浮べながらロケット花火を3本、民家に向けセットした。
竹下が「悪者は退治しないとね」と言うと、武部は「正義は勝つ」と言ったので、俺も「ジジイのくせに、偉そうに」と言って、俺がライターでロケット花火に点火した。
ロケット花火は、「ピュー!」と乾いた音を真夜中に響かせ民家に飛んで行った。
俺達は大声で笑いあった。
本当に愉快で、本当に悪者を退治したようで、爽快感が胸を満たした。
俺達は、残った線香花火に火を点け、しゃがんでその綺麗な閃光を放つ花火を見つめていると、突然竹下が俺の後ろを指差して、「屋根に小さな火が出てる!」と言った。
その後、俺達は走ってその場を逃げたのだ。


焼け落ちた家を見た後、俺達は黙って駅に向かって歩いた。
「あの爺さん、死んでないよね・・・」
「やめろ竹下!」
「でも・・・」
「やめろって言ってるだろ!」
武部が竹下の胸を押し、竹下は後ろに転んだ。
黒猫が俺達を離れた所からじっと見ていた。




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