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林のりおさん

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性別 男性
将来の夢 喫茶店経営
座右の銘 石の上にも三年

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俺とあいつ

12/07/18 コンテスト(テーマ):第十回 時空モノガタリ文学賞【 自転車 】 コメント:0件 林のりお 閲覧数:1289

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海が見える気持ちのよい坂道。突き抜けるような青空の下、俺はスピードをあげて下っていく。まさに地球とひとつになり、雑念は体をすりぬける風とともに消えてゆき、生きている喜びを感覚で思い知らせてくれる。

潮の匂いが鼻腔をくすぐり青い青い海が眼下に広がる。今日は昨日もいいことはひとつもなかったがそれでもこの世界はなんと素晴らしきかな。

突然ヤツは牙をむいた。無重力、崩壊の予感。

高速で回転する前輪のスポークが右に左に細かく揺れ、うめき声に似た悲鳴を発するのを俺は確かに聞いた。

はじけ飛ぶメタルの欠片、それを瞬間に確認するや否や、俺は宙に投げ出された。勝ち目のないほどの力量で俺は痛めつけられた。頭を支点に前転した気がする。そのまま体は地面をこするように移動した。

さっきまでがまるで夢のよう。

倒れたままあたりを見渡すと俺より五メートルほど後ろに前輪のとれた自転車が確認できた。さっきまで俺に風を感じさせてくれていたアイツ。あんなに楽しかったのに。

自分の状況がはっきりと分かるにつれ痛みが増してくる。そして怒りも増してくる。あんなに楽しかったものだからすっかり忘れていたけどこういうことは前にも何度かあった。あの恐怖、忘れるはずもない。

体をひきずり前輪のとれた自転車のもとまで歩み寄るや否や、俺は思い切りサドルを蹴り付けた。何度も何度も。泣きながら。

そんな俺を見ながら老人が笑っている。くだらねえ世の中だぜ!!

壊れた自転車をそのままに俺は足早にその場を去った。笑うなら笑え。もう世の中なんて信じない。


その晩、自宅で横になりながら歌っていると玄関のドアを誰かがノックした。出てみると若い警官だった。自転車の件で来たようだ。事情を説明すると俺を軽蔑したように眺め苦言を呈し帰っていった。自転車を取りに来いとのこと。


しょうがねえな。むかえにいってくるか!!!へへ!!


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