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アシタバさん

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憧れの展開と事実

15/03/24 コンテスト(テーマ):第七十九回時空モノガタリ文学賞 【 通学路 】 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:1022

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『事実は小説よりも奇なり』 今日こそは起きてくれ。
 通学中、僕はそう心の中で祈っていた。
 朝の通学路では、チュンチュンと雀が鳴き、ごみを出すパジャマ姿の主婦やあくびをするサラリーマンなどが視界に入ってきた。
 本日もドラマティックな出来事など簡単に起こりそうもない雰囲気で、僕自身も何の変哲もない高校一年生だ。
 それでも、高校生になってからというもの、僕は毎朝、通学路を歩くたびに期待に胸を膨らませていた。なぜなら、あることを思いついたからだ。
 入学祝に買ってもらった腕時計にちらりと目をやると、始業ベルが鳴るまで残りわずかとなっていた。それにもかかわらず、十字路の前でぴたりと立ち止まる。
 その十字路は道幅があまり広くない、さらに建物のせいで視界が悪い。気を付けなければ横道から飛び出してきた人間にぶつかってしまうだろう。
 実は、それが狙いだった。
 初めてこの道を通った時に閃いたのだ。少女漫画でお決まりの展開。遅刻しそうな男子高校生と女子高校生が曲がり角で激突して、それがきっかけでロマンチックな恋が始まっていく。ここならそんなことがあるかもしれない。
 そう、それ位なら、この平凡な日常でも起こり得るのではないだろうか? と考えた。わずかな可能性だが、もしかしたらという事もある。いや、あって欲しい。
 この十字路を通り過ぎる際、いつも心の中で願っていた。どうか、素敵な出会いがありますように、と。
 もちろん、未だに叶ったことは無いが、今日こそは、と意気込んで十字路に足を踏み入れようとした。
「ちょっと、よろしいですか」
 声を掛けられて振り向くと、背の低い小太りの中年男性が立っていた。
「僕に何か用ですか?」
 不審に思いながらも、真っ黒いスーツを着たその男に返事をする。
「はじめまして、わたくしあなたの願いを叶えに参りました」
「はい?」
 思わず間抜けな声が出てしまった。にやにやと笑ったその男は、七福神の恵比寿様を彷彿とさせる愛想のよさだ。しかし、今の言動はあやしすぎる。無視して行ってしまおうか悩んだ。
「警戒していますね。無理もない。説明させていただくと、あなたがこの十字路で毎日、心の中でお願いをしているのを知っているのですよ」
 えっ? こいつ、何で知っているんだ? 驚いて声が出なくなった。それは僕以外が絶対に知りえないことである。なぜなら、誰にも話していないのだから。
 現実離れした展開に額から汗が流れてきた。
 にわかに、この人はただの人でない、という考えが頭に浮かんだ。特別な存在。そう、例えば、縁結びの神様とか願いを叶えてくれるランプの精とかの可能性があるのではないだろうか?
 色々と考え込んでいる僕に構わず、男は話を続けた。
「そんなあなたを見るに見かねてやってきました。本来なら、まずあり得ません。が、これも何かの縁でしょう。とっても幸運な大サービスです」
 凄いことでしょう、と言わんばかりの男に「あなたは何者ですか?」ともう一度、質問をぶつけてみるが、男はブンブンと首を横に振った。
「私のことはどうでもよろしい。いいですか。あなたはこの十字路で、願い通りに必ずぶつかりますよ」
「え、本当に!?」
 喜びのあまり声が大きくなる。さっきまでの警戒心やら猜疑心は一気になりを潜めた。
「本当です。但し、どんな人にあたるかはあなたの運次第です」
 男が顔を近づけて注意してきたが、最早、この人が何者かなんてどうでも良かった。
 明るく元気な人にあたるか、物静かで知性的な人にあたるか、やさしく可愛い人にあたるか、頭の中でぶつかる相手に対する想像が膨らんでいく。こうなると、もう歯止めが利かなくなっていた。
「わかりました。是非、お願いします」
 期待に胸ふくらます僕を、男が高級レストランのウエイターのように、十字路へと進むよう恭しく手で促す。
 心臓の高鳴りを感じながら、緊張のあまり目をギュッとつぶって歩き出した。
 数歩進む。すると、何か騒がしい音が暗闇の先から聞こえた。聞きなれたこの音。これは、まさか。
 衝撃とともに訳がわからなくなった。やっと、頭が追いつくと、自分が道端で倒れていることと、体中がひどく傷むことがわかった。
 ぼやける視界にあの小太りの男が映る。
「あらあら、どんな人にぶつかるかわからない、と言いましたが、まさか、『車に乗っている人』とは。運が悪かったですね」
 満足そうに笑いながら去っていく男。その後ろ姿を見ると黒い羽と尻尾がついていた。その風貌は、まるで、そう、あれだ。
「あいつ悪魔だったのか……」
 誰かが呼んでくれた救急車の音を聞きながら思った。事実は小説よりも奇なり。


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このストーリーに関するコメント

15/03/24 海見みみみ

アシタバさん、拝読させていただきました。
こんな十字路での展開は嫌ですね笑
でも、車に乗っていた人が美女ならまだ可能性があるかも!?
なんて思ってしまいました。
それにしてもこの悪魔は狡猾ですね。
自分からは名乗らないあたりが実に悪どいです。

15/04/02 アシタバ

海見みみみさん
コメントありがとうございます。
実は、そんなラストも考えましたが、
2000字にまとめられず、こっちのオチになりました。
悪魔のキャラクターも、もっと個性的を出したかったです。
お話作りは難しいですね笑

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