1. トップページ
  2. ミクと僕と温かい食卓

海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

投稿済みの作品

3

ミクと僕と温かい食卓

15/03/23 コンテスト(テーマ):第八十回 時空モノガタリ文学賞 【 テーブルの上 】 コメント:10件 海見みみみ 閲覧数:1279

この作品を評価する

 彼女、ミクと出会った時、僕の胸は確かに高鳴った。彼女が僕の義妹になると知った時、心から絶望する程に。

 僕が大学を卒業する少し前、父が再婚した。義母となる女性の連れ子。それがミクだった。これからは四人での生活が始まる。そう父は嬉しそうに語っていた。
 しかし再婚してすぐ、父は義母と共に交通事故で亡くなってしまった。残されたのは社会人一年目の僕と、高校生のミクだけ。僕たちは二人ぼっちでの生活を余儀なくされた。

「おかえりなさい」
 その日も仕事から帰ると、ミクが出迎えてくれた。食卓の上には沢山の料理が並んでいる。サラダ、スープ、ハンバーグ、オムライス。どれもミクが作ってくれたものだ。
 父との二人暮らしが長かったため、僕は誰かが作ってくれる料理に飢えていた。そのためミクが手料理を作ってくれるようになって本当に嬉しかったのは言うまでもない。
「「いただきます」」
 二人で手を合わせ、本日の夕飯を食べ始める。温かい食事のなんとうれしい事。何よりミクの作る料理はどれもおいしかった。
「このハンバーグ絶品だね。前より更においしくなったよ」
「ありがとうございます。実はちょっとスパイスを加えてみたんです」
 ミクがうれしそうに料理について語りだす。幸せだな。僕はこの食卓の上に並ぶ料理と、対面に座るミクを見て思わず幸福のため息をついた。

 翌日。今日は会社の飲み会があった。本当は早く帰ってミクの手料理が食べたかったが、付き合いがある以上仕方ない。
「お前は彼女とか作らないのかよ」
 会社近くの居酒屋。同僚の一人が冷やかすように声をかけてくる。それに僕は困ったような笑顔を浮かべ応えた。
 僕には今ミクがいる。彼女ができたらミクと接する時間も減るだろう。ミクに寂しい思いはさせられない。それに本心を言えば、僕は今でもミクが……。
「今日はたくさん飲もうぜ」
 同僚がグラスになみなみとビールをそそぐ。これはずいぶん飲まされそうだな。僕は覚悟を決め、グラスのビールを一気に飲み干した。

 深夜十一時。酔っぱらいながらもなんとか終電前には開放され、僕は家へと帰ってきた。もうミクは寝ているだろうか。そう思いながら自宅のドアを開けると、そこにはミクの姿があった。
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「起きていたのか。先に寝ていてくれて良かったのに」
「兄さんのためにお夜食を用意しておいたんです」
 そう言ってミクは食卓へと案内してくれた。用意されていたのは温かいおかゆ。それを見て心まで温かくなる。
 だがその時、僕の頭の中には酔いのせいか、もう一つ別の事が浮かんできていた。
『お前は彼女とか作らないのかよ』
 本当は作りたいさ。もちろん相手は決まっている。でもそれは踏み出してはいけない一歩、僕は耐えないといけない。いけないんだ。でも、
「どうしました。具合、悪いですか?」
 ふいにミクがこちらの視界に入ってくる。近づくミクの顔。ミクの唇。ミクの……、
「ミク!」
 気がつくと、僕は自然と食卓の上にミクを押し倒していた。ミクは驚いて目を見開いている。
「僕は、ミクの事が……」
 そのまま酔った勢いで唇を奪おうとする。
「嫌!」
 するとミクが暴れだし、食卓の上に置かれていたおかゆが地面へと落下した。食器の割れる音。その瞬間、理性がようやく蘇る。
「……ごめん」
 ミクは目に涙を浮かべるとその場を飛び出した。
「ミク!」
 ミクが家から一人出て行ってしまう。止める事はできなかった。
 僕はなんて事をしてしまったんだ。酔った勢いとはいえ、一瞬でも理性を失った自分を僕は激しく嫌悪した。

 翌日、ミクは帰ってこなかった。夕飯は自然とコンビニで買ってきたカップ麺になる。食卓の上に置かれたカップ麺。その光景はとても寒々しい。昨日まであったはずの温かい食卓はそこに存在しなかった。
 カップ麺をすする度に涙がこみ上げてくる。ミクのいない食卓がこんなに寂しいとは思いもしなかった。もうミクは帰ってこないのかもしれない。そう思うと余計に涙がこみあげてくる。
 すると玄関で呼び出しのチャイムが鳴った。まさか。僕は大慌てで玄関に向かい、ドアを開けた。
 そこには涙を浮かべたミクの姿があった。
「あの……」
 ミクが必死に言葉を紡ごうとする。僕はそれを待った。
「あれから一人でずっと考えて。昨日はびっくりして嫌って言ってしまいましたけど、兄さんとなら私は……」
 ミクが顔を真っ赤にしてそう口にする。そんなミクを見て、僕の中でも気持ちが溢れた。もう耐えるのはやめだ。力強くミクを抱きしめる。
「……まずはミクの手料理が食べたいな。食卓の上にいっぱい温かい料理を並べてさ」
 するとミクは目尻に涙を浮かべ「はい!」と笑顔で答えてくれた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/03/23 海見みみみ

青柳金次郎さま>
ご覧いただきありがとうございます。
大変面白いと言っていただけてとても嬉しいです。
ミクみたいな子がいたら本当にいいですよね。
この主人公は間違いなく幸せ者です。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/23 メラ

拝読しました。
ハッピー・エンドで何より。幸せな男ですね。
しかし「血の繋がってないかわいい妹」という設定は、男性としては王道的な「憧れシチュエーション」の一つ。よって当方、妙な興奮を覚えました。あ、下品ですいません。面白かったです。

15/03/23 海見みみみ

メラさま>
ご覧いただきありがとうございます。
義理の妹って憧れるものがありますよね。
このテーマでもう一本書いてみたいくらいです。
面白かったと言っていただけて何よりです。
それでは感想ありがとうございました!

15/04/04 海見みみみ

志水孝敏さま>
ご覧いただきありがとうございます。
今回は「テーブルの上」というテーマだったので、どう扱うか大変悩みました。
その結果試行錯誤してこのような物語が仕上がりました。
その構成を巧みだとおっしゃっていただけてとても嬉しいです。
それでは感想ありがとうございました!

15/04/18 滝沢朱音

義妹って、とても不思議な存在ですね。
最後「兄さんとなら私は……」で、読んでるほうも思わず赤面しそうでした♪
最後、温かい料理がたくさん並んだテーブルの上。
二人の将来が予感できて、ふんわりと幸せな気分になりました。

15/04/18 海見みみみ

滝沢朱音さま>
ご覧いただきありがとうございます。
義妹……現実にはなかなか無いシチュエーションですよね。
つい色々と想像してしまいます笑
きっとその後二人は幸福になれたのだと思います。
それでは感想ありがとうございました!

15/04/28 横須賀 陽夏乃

読ませていただきました。
血の繋がらない妹との生活は確かに理性を保つのは大変なんだろうな、しかも料理上手で、兄思いで……。
と、にやにやしながら読んでしまいました。
(私は女ですが、こういうシチュエーションも好きなんで……。)
最後は無事ハッピーエンドで良かったです。
これからもこの家庭のテーブルには温かい料理が並ぶといいなあと思う、読後の良い話でした!

15/04/28 海見みみみ

横須賀 陽夏乃さま>
ご覧頂きありがとうございます!
兄と義妹とのドキドキな日々、にやにやしていただけて光栄です。
この二人ならこれからも一緒に温かい食卓を囲む日々を送れそうです。
読後感の良さを褒めていただき、ありがとうございます。
感想ありがとうございました!

ログイン