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松山椋さん

地獄からやってきた文学青年です。結局名前元に戻しました。

性別 男性
将来の夢 涙を流さないようにする
座右の銘 お前の背中はまるででたらめやぞ

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田代くんの帰り道

15/03/13 コンテスト(テーマ):第七十九回時空モノガタリ文学賞 【 通学路 】 コメント:6件 松山椋 閲覧数:10907

時空モノガタリからの選評

予測のつかない田代君のキャラと行動がぶっとんでいて、とてもいいですね。後半になるにつれスピード感を増すストーリー展開と、行動の奇抜さが圧巻で、やりきった感があって楽しめました。ヤクルトとヤクの掛け合わせなども計算されているなと感心しました。

時空モノガタリK

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まさしは3月の初春の日差しの差す商店街を歩いていた。
この物語の主人公、田代まさしくんは小学校3年生である。かつて一世を風靡したドゥーワップグループの一員でありその後芸能界入りした某お笑いタレントと同姓同名である。しかし覚醒剤所持という人として許されざる罪を犯したような男と一緒にされては困る。まさしは厳格な刑務官の父と優しくて美しい母に愛されて育った品行方正で将来有望なエリート小学生なのである。

今日は土曜日。半ドンで学校が終わる日である。午前中の保健体育の授業を受け、全校集会で校長先生の話を聞き、まさしは解放された。本来なら一緒に帰る友達は大勢いるのだが、今日は学校のクラブの活動日なのでみんなそっちの方にいってしまい、クラブに所属していないまさしは一人で帰ることになったのである。そのためまさしは一人で家路を歩いているのであるが、誰の目も無いとついつい悪いことをしてしまいたくなるお年頃。途中の十字路で本来なら右に折れるところを左に曲がり駄菓子屋やたこ焼き屋、喫茶店などが並ぶ商店街に入っていった。懐にはお年玉の使い残し5000円が入っている。だから今日はちょっと通学路無視してどこかで買い食いしていこうと考えたのである。

さまざまな軽食を扱う店を通り過ぎ、一軒の店の前でまさしは立ち止った。少年の目がキラリと妖しく光る。その店の看板には「高級しゃぶしゃぶ・正木道分店」と書かれている。営業中の札が出ていることを確認して、まさしは店の中に入っていった。

1時間後、肉を食いまくって顔をテッカテカに光らせながらまさしが店から出てきた。普通高級しゃぶしゃぶ店で予算5000円というと牛肉ひと切れかふた切れ食うのが関の山だが、お客が小学生という珍しさもあり店のおかみが出血大サービスでお腹いっぱい食べさせてくれたのだ。腹をさすりながら店から出てきて煙草に火をつけると、なにか冷たいものがまさしの鼻頭に落ちた。
「あ、『ユキ』だ。」
この日、まさしの住む岐阜県上空には寒波が到来していた。前線が停滞し、中部地方に雪の予報が出ていたのである。そういえば空には厚い雲が立ち込めている。セーターでも着てくれば良かった。煙草の吸殻をポイ捨てし、まさしは身震いしながら歩き始めた。
立ち並ぶ店を冷やかしながらぶらぶら歩いていると、商店街の中ほどにあるスーパーマーケットの前に人だかりが出来ていた。立ち止まって背伸びをし覗いてみると薄いブルーのシャツを着たおばさんが道行く人に試供品の乳酸菌飲料を配っている。まさしはヤク、ルト、ヤク、ルトとつぶやきながらヤクルトおばさんに近づいていき、見事三本入手した。家に帰って漫画でも読みながらゆっくり飲もう。ランドセルに貰ったものをしまい、まさしは歩きだした。

長い商店街を出て三叉路をまた左に折れ、まさしは広い農道に出た。左手に牧場が見える。この道をまっすぐ歩いて突き当たりの川沿いの道を曲がりだらだら歩けば家に到着である。川にかかる橋を渡れば父の職場にも行ける。手をこすりあわせながら道を歩いているとスピード検問をしているらしい警察官が立っているのに気づいた。こちらを見ているらしい。まさし、以前溢れ出る性欲に突き動かされ衝動的に近所の家の風呂場を覗き(結局入浴していたのはジジイだったが。)補導されて以来警察官が苦手になっていた。つまらないことに巻き込まれそうである。まさしは立ち止まり後ずさりをした。しかしもう遅い、警察官はこちらにつかつかと歩いて近づいてきた。
「きみ、○○小の子?」
「はい・・・そうです。」
「ダメじゃないかこの道は通学路じゃないぞ。」
「すみません・・・。」
「まったく。今から学校に電話するからな。」
警察官は無線を取り出そうとポケットを探り始めた。・・・いまだ!まさしは脱兎のごとく駆け出した。あっ待て!警察官は走って追ってくる。まさしは左手の牧場に駆け込み、小屋につないであった草食動物・ヤクの縄をランドセルから取り出したハサミで切断し、背中に飛び乗って尻を思い切り叩いた。ものすごい雄叫びをあげてヤクが全力疾走する。表の道に飛び出し川の方へ走り出すといつのまにか増援を呼んだらしく10台以上のパトカーがヤクに乗ったまさしを追ってくる。まさしはズボンからベルトを抜きそれをムチ代わりにしてヤクの尻を思いきり叩き、スピードをあげて走った。突き当たりの橋を渡ればお父さんの職場だ。そこに駆け込めばきっとお父さんが助けてくれる。たすけて、お父さん。喉がかわいてきてランドセルを探った。雪の降りしきる中、しゃぶしゃぶでいっぱいになった腹を抱えて、ヤクルトを口にくわえながら、ヤクに乗って、まさしは刑務所向かって突撃していった。


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このストーリーに関するコメント

15/03/13 海見みみみ

松山 椋さん、お話拝読させていただきました。
これはまた凄いお話ですね。
読んでいてその勢いに圧倒されました。
さり気なくタバコを吸っている辺りに田代くんの大物感を感じます。
このスーパー小学生はその後どうなるのか。
ちゃんとエリートの道を進んでくれればよいのですが。

15/03/13 滝沢朱音

だめだ、続けて3作目。何もかもふっ飛ばして、ただ面白いです。
Twitterフォローさせていただきました!(笑)

15/03/19 松山椋

海見みみみさま

いつも丁寧な感想をいただき、恐縮です。ありがとうございます!
僕はどうも勢いに任せて書く癖があるらしく、毎回毎回大味になってしまい恥ずかしい限りです。いやはや、これからはしっかり考えながら書きます。
読んでいただき、ありがとうございました!

15/03/19 松山椋

滝沢朱音さま

読んでいただき、ありがとうございます!いつもすみません。
お褒めの言葉、大変うれしいです。いつも励みになります。
毎回なにも考えずに小説を書いちゃうんですよね・・・。いつかこの癖は直したいです。もう勢いだけですから。
いつもありがとうございます!

15/03/19 松山椋

リュウの助さま

読んでいただき、ありがとうございます!嬉しいです。
本当になにも考えずに小説をかいてしまう癖直したいです。えらく大味な小説になってしまいますから。
ちょっと落ち着いたものを自由投稿スペースにアップさせていただきました。これからもチャレンジしていきたいです。
いつもありがとうございます!

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