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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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赤いチューリップ

15/03/10 コンテスト(テーマ):第七十九回時空モノガタリ文学賞 【 通学路 】 コメント:16件 海見みみみ 閲覧数:1894

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 高校の通学路の途中に一軒の花屋がある。僕はその花屋の若い女店主に恋をしていた。
 三年間、毎日花屋の前を通っては彼女を見つめる日々。しかし僕は最後まで想いを口にすることができなかった。

 三月。僕は高校を卒業することになった。四月から通う大学は電車通学。もうこの通学路を歩くことはない。
 卒業式を終え、僕は一人通学路を通り家路についていた。あの花屋の前を通る。これでここの前を通るのも終わりか。気分が沈み、自然とため息をつく。せめて一度くらい彼女と話をしてみたかった。そう思っていた時のことだった。
「君、ちょっといい?」
 聞こえてきた声。僕は思わず耳を疑う。それはあの花屋の店主の声だった。
 なぜ僕に声をかけてきたのか。疑問に思いつつも、彼女の元へと向かう。すると彼女は柔らかい笑みを浮かべた。
「君、今日卒業式だったでしょう」
「よくご存じですね」
「君が毎日ここを通って学校に通っていたのを見ていたからね」
 その一言に僕は驚いた。彼女もまたこの三年間僕のことを見ていたのだ。それが嬉しくて頬が熱くなる。
「これ卒業の記念にあげる」
 そう言って彼女は一輪の花を僕に差し出してきた。
「何の花ですか?」
「スイートピー。花言葉は門出」
 それは僕の卒業を祝う花だった。彼女からまさかこんなプレゼントがもらえると思わず、つい泣きそうになる。
「ありがとうございます。大事に飾らせてもらいますね」
「どういたしまして。それとこれは卒業の記念とは別に、私から」
 すると続いて彼女は赤いチューリップを一輪僕に差し出してきた。
「こんなにもらってしまって良いんですか?」
「むしろもらってもらわなきゃ困るな。今日はこれを君に渡すために待っていたんだから」
 そう言って彼女は笑う。それが例え冗談だとしても、僕は心の底から嬉しかった。卒業式の最後の日。彼女とこうして話をすることができた。僕は十分満足だった。

 家に着き、僕はもらったスイートピーとチューリップを花びんにさした。どちらも僕にとって宝物の花だ。大切にしよう。そう心に誓う。
 ふとチューリップの花言葉を聞き忘れたことに気がついた。赤いチューリップにはどのような花言葉があるのだろう。
 僕は進学祝いにもらった電子辞書で花言葉を調べてみた。するとすぐに結果が出てくる。
「赤いチューリップ、花言葉は……」
――愛の告白。
 それを見た瞬間、僕の体の全細胞が一気に震えた。
 いくらなんでもこれは出来過ぎている。それに僕はさっきもう十分満足したはずじゃないか。これでもし僕の勘違いだったらどうするんだ。赤っ恥をかくだけだぞ。でも、でも!
 気づくと僕は家を飛び出していた。もう二度と通ることはないと思っていた通学路を再び駆け抜ける。

 彼女と再会するまで、あと五分。僕が想いを告げるまで、あと十分。二人が抱きしめ合うまで、あと……。


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このストーリーに関するコメント

15/03/10 滝沢朱音

卒業証書と、赤いスイートピー&チューリップ。色彩が浮かびますね。
いつもの通学路を全力疾走する最後のシーン、ドキドキ感がリアルで、青春っていいなぁと…
勘違いだったらどうする、でも…恥をかいても構わない!
こういうひたむきさ、忘れたくないなと思いました。

15/03/11 海見みみみ

滝沢朱音さま>
ご覧いただきありがとうございます!
最後の全力疾走シーンは空気感が出るよう描きました。
そこを褒めていただけて嬉しいです。
こういうひたむきな思いは無くしたくないものですね。
感想ありがとうございました!

15/03/11 草愛やし美

海見みみみさん、拝読しました。

キャー、素敵。こういうお話大好きです。いいなあ、こういうのって、通学路での奇跡? 三年間、彼女もずっと、いつ言おうかと悩み続けていたんですね、最後の日だからこその奇跡。こんな風に青春の出来事が起こって欲しいと、誰もが夢見ることです。だけど、なかなかそうはいかない、だからこそ、お話でも実現できればって思います。とても優しい気持ちになれました。笑顔

15/03/11 南野モリコ

この後、主人公とお花屋さんは恋人になったのでしょうか?

主人公と一緒に
走り出したくなるような、
興奮と幸福感で読み終えました。

15/03/11 海見みみみ

草藍さま>
ご覧いただきありがとうございます。
通学路で起きた奇跡、いい響きですね。
お話の中でくらい、幸せになれたっていいですよね。
そう思いこのお話はこのような終わり方になっております。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/11 海見みみみ

ミナミノモリコさま>
ご覧いただきありがとうございます。
この二人が恋人同士になれたのか?
それは読者の皆様のご想像にお任せします。
でも、きっと皆さんが思っている通りの結果だと思いますよ。
主人公と共に走り出したいとおっしゃっていただけて嬉しいです。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/11 海見みみみ

青柳金次郎さま>
ご覧いただきありがとうございます。
本当にこんなことがあったらいいですよね。
ロマンティックな想いをたくさん込めて執筆させていただきました。
赤いチューリップを想い人からもらったらチャンスです!
それでは感想ありがとうございました!

15/03/11 須磨 円

みみみさま、拝読させていただきました…!
文末まで見事に纏まっている、素敵なお話ですね。
どことなくノルスタジックな雰囲気が感じられて、登場人物の二人が確かにそこに生きているのだと、温かい気持ちになりました。
そして赤いチューリップ…!
まさか本当に花言葉を題材にお書きいただけるとは。
そして素晴らしい出来に感無量です!

15/03/11 海見みみみ

須磨 円さま>
ご覧いただきありがとうございます。
今回は円さんの言葉もあり、花言葉のお話にチャレンジしてみました。
お気に召していただけたようで何よりです。
学生時代の片想いというテーマがノスタルジックな感覚に繋がっているのかもしれません。
それでは感想ありがとうございました!

15/03/16 11doors

>「赤いチューリップ、花言葉は……」
おお、なるほど。
花屋の若い女店主が花言葉を言わずに手渡すところが
何というか、ロマンチックで、見事な展開だと思います。
果たして、花を手渡した青年が、花言葉に気づくかどうか、
彼女自身も、運命に身を委ねるつもりだったのかなと、
その想いが、読後の余韻が残ります。

15/03/17 海見みみみ

さいのめさま>
ご覧いただきありがとうございます。
ご推察通り、花屋の女店主はわざと花言葉を伝えず渡し、運命に身を委ねたのでした。
主人公もそうですが、彼女も自らの恋心に怯んでいたわけですね。
彼女には赤いチューリップを渡すことが精一杯だったのだと思います。
感想ありがとうございました!

15/03/20 冬垣ひなた

海見みみみさま、拝読しました。

学校でなく、愛する人に向かって通学路を駆ける……甘酸っぱい青春ですね。
あれこれ読者の想像が膨らむラストも見事だと思います。
彼女は赤いチューリップを選ぶまで、とても迷ったんでしょうね。
だから、迷いの失せた彼の姿を、一層清々しく感じました。
とても素敵な話でした。


15/03/20 海見みみみ

冬垣ひなた様>
ご覧いただきありがとうございます。
こういう甘酸っぱい青春ものが好きなので気に入っていただけて何よりです。
おっしゃる通り彼女はたくさん悩んだことでしょうね。
その末の赤いチューリップ。
彼に届いて作者である私も安心です笑
それでは感想ありがとうございました!

15/04/08 そらの珊瑚

海見みみみさん、拝読しました。

僕の勘違いでないことを祈りつつ……
赤いチュウリップの花言葉、素敵ですね。
春の庭先に揺れるこの花を見つけるたびに、ほほえましい気持ちになれそうです♪

15/04/08 海見みみみ

そらの珊瑚さま>
ご覧いただきありがとうございます。
そうですね、『僕』の勘違いであることを祈りたいです。
赤いチューリップは実際に告白にも使えるので、覚えていて損はないですよ笑
それでは感想ありがとうございました。

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