1. トップページ
  2. 渋谷がキャベツ畑になった日

草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

投稿済みの作品

10

渋谷がキャベツ畑になった日

15/03/09 コンテスト(テーマ):第七十七回 時空モノガタリ文学賞 【 渋谷 】 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1167

この作品を評価する

 西暦二千某年、この日の朝、通勤、通学で渋谷へやってきた大勢の人々が目にした光景は奇異なものだった。何と、渋谷のどこもかしこもがキャベツで埋もれていたのだ。スクランブル交差点はキャベツの畝の間を通り抜けて渡らねばならず、109の店内もキャベツで埋め尽くされ、何が何だかわからない店員が洋服を持ってオロオロしているだけ。道玄坂にはキャベツの段々畑が出現。原宿表参道から明治神宮に続く道はにも青々と茂るキャベツが本殿まで実っている状態だった。


 キャベツで埋もれた明治神宮の清正井のはるか天上に国生みの神であるイザナギとイザナミは白い雲に乗り浮かんでいた。イザナミは下界を指しイザナミに話しかけた。

「ほぅ、渋谷もこうなると見事に田舎だ、懐かしいなあ」
「何言ってるのナギ、民どもが通勤や通学するのはもはや無理かも」
「いいんだ、太古の昔から、国を守ってきた神としての任務を遂行したまで、これで良かった良かった」
「何も、清正の力まで借りなくても……」
「彼の井戸は大切なんだ、この地にあれがなければ、私の計画は実現してなかったはず。見事なキャベツ畑はあの井戸の水があったからこそ実現できたんだ」
「でも、なぜ今、キャベツ? 本当に赤ちゃんってキャベツ畑で生まれているっていうの?」
「ナミそうだったんだよ、西欧で言い伝えられてきた説は正しかったんだ。赤ちゃんはキャベツ畑から来るという説はヨーロッパやアメリカのものだとスルーしてしまったことが、この国の危機を引き寄せてしまったのだ。その証拠に平成の頃、キャベツ生産日本一だった、嬬恋って地名には恋という漢字が当てはめられている。キャベツは恋を実らせる貴重な作物に相違なかったはずなのに……。今やこの国はキャベツを全て輸入で賄っている現状だ。これは、今より五年前、キャベツ豊作により、出荷しても運送費だけで損失が出てしまうと、全てのキャベツ廃棄事態をきっかけに起こったこと。あの年より、全てのキャベツ農家がキャベツ生産から撤退してしまった」
「で? それが渋谷キャベツ畑大作戦とどう係るっていうの」
「キャベツは子宝、キャベツ畑で子供が作られるという伝説は絵空事ではなかったのだ、それに気づかず、全てのキャベツ栽培から撤退したことが、この国から赤ん坊が生まれなくなった原因なんだ」
「無誕生化……」
「そうだよ、だから、この国は天地開闢以来の危機に陥ってしまったんだ。今こそ、若者が集う渋谷でキャベツを作る大作戦を実施する時来たりなのだ」
「そう力説されたって信じられないわ? 確か、赤ん坊ってこうのとりじゃなかったっけ、運んで来るとか天上小学校で習わなかったっけ?」
「こうのとり、何を言ってるんだ。だからこの国は子供が生まれなくなったんだよ。こうのとり自体数が減少したってニュースで騒がれていたのはいったい何年前のことだと思っているんだ。百年近く前の事態を放置していた結果がこれなのだ。こうのとりなんて今や世界中に存在していないだろう」
「絶滅危惧種から、絶滅しちゃったとか?」
「その通りだ、こうのとりの次はこの国の民が絶滅危惧になると思われる。すでにこの一年赤子は一人も生まれていない。奇跡に期待することは、宇宙の星が全てダイヤモンドに変わるのと等しい程、有り得ないことだろう」
「ヤダ、何だか、例に持ってくる事柄が生々しすぎるしぃ」
「よくわかるかと、すまん。だが、はっきり言おう、キャベツが実らない国に子供はできないのだ」
「よくわかったよ、ナギ」
「ナミ、お前と築いたこの国が亡びるのは忍びない」
「だよねぇ、私も悲しいもん。ナギ、キャベツ畑で何とかしよう」
「清正の井戸、すなわち、虎狩りの加藤清正の井戸。その水なら、虎の子の出現間違いなしと私は考えたのだ。この作戦が、失敗したら、また二人で一から頑張るしかないかもだぞ」
「えー、そんなあ。老後の生活はゆっくり楽しみたいわ。子育てなんてもう嫌だ」
「だろう、だからキャベツに神頼みするしかない」
「神頼みって? 私達が、神なのよ」
「……」
「黙ってしらばっくれてごまかそうとしているナギ君のその顔、可愛い」
「いや、そうかなあ」
「照れちゃって、可愛い。やっぱナギ君良い」
「ありがとう」
「凄いね、ナギ君、今回の大事業でまたまた、この国を救っちゃったね」
「そうだ、まだまだこの国は大丈夫だ、見よこの蒼く茂るキャベツ畑を!」
「だね、この国をずぅっと、ずっと、二人で見届けていこうね」

 キャベツ畑の渋谷で右往左往する人々には気にも留めず、国生みの神々、イザナギノミコトとイザナミノミコトは笑いながら渋谷の上空に漂う雲間のはるか彼方、日の射すヒカリへと去っていった。 


 了




コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/03/09 草愛やし美

この作品は草藍の創作しましたフィクションであり、実在する、人物・地名・団体、神様とは一切関係ありません。

解説:明治神宮の御苑の中に都会では珍しい湧水の井戸があります。東京都の調査では水温は四季を通じて15度前後と一定していて、毎分60リットルの水量があり、昔から「清正井(きよまさのいど)」といわれ加藤清正が自ら掘ったとされています。 
加藤清正は安土桃山・江戸初期の武将で朝鮮出兵での「虎退治」の話で有名な武将で、この井戸を清正自身が掘ったものかどうかは定かではないですが、近年、パワースポットとして、注目され、人々の行列の絶えないようです。
造営当時すでに横井戸(普通は竪井戸)であることは解っていましたが、水源はどこなのか、またどのようにして流れてきているのかまったく不明で、昔から特殊な技巧で水が湧出するのだと考えられています。清く澄む水は大切に守られるべきものと明治神宮で言われています。

左の画像が、解説にある明治神宮内の清正井(きよまさのいど)、右の画像は、キャベツ人形として有名なキャベツ・パッチドールです。

15/03/09 ナポレオン

草藍様
拝読いたしました。
いきなり渋谷がキャベツ畑に!なかなか突拍子もないストーリーででした神様の漫才的なノリで面白かった出す。
ていうかイザナギとイザナミってものすごく仲悪そうなイメージですがさすがにもう今は仲直りしたんですね。

15/03/09 海見みみみ

拝読させていただきました。
テンポよく進む会話が気持ちのいいお話ですね。
ところどころで挟まれる雑学知識が面白かったです。
果たしてキャベツ畑になってしまった渋谷はどうなるのか。
その光景を想像するとくすりと笑えますね。

15/03/10 ドーナツ

日本書紀のキャラと、現代の若者が集う渋谷のミスマッチ、想像すると、とてもユニークです。

キャベツが恋を実らせて子を増やし豊かな国を作るという発想も面白い。

頑張れ渋谷!!  農業万歳だね。
キャベツ たくさん食べなきゃね。




15/03/10 泡沫恋歌

草藍 様、拝読しました。

渋谷がキャベツ畑!?
だったら、そこでお好み焼きのお店をやろうかなぁー♪

だけど、キャベツって想像以上に身体に良い食べ物らしいよ。
いっぱいキャベツを食べよう(∩´∀`)∩ヤッホー♪

15/03/11 滝沢朱音

やっぱりすごいなぁ草藍さん、のっけから。渋谷が一面キャベツ畑って…!
どうしてそんな風景が思いつけるのでしょう。冒頭で読者は完全に持ってかれちゃいます。
これこそ草藍ワールド、草藍ファンタジーですね。ほんと、すごいです…
最後、ナギ&ナミの渋谷〜で現代風な神カップルが、キャベツ畑を残して
あはは…とラブラブで昇ってゆくイメージが、もう…ある意味、ロックだなぁと!!!

15/03/11 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

いつもながら柔軟な発想力で紡がれたモノガタリ、とっても楽しかったです。
キャベツはたいてい冷蔵庫で常備している頼もしい野菜です。
値崩れを起こすからといって豊作の時は、せっかく出来たキャベツを廃棄するとか。
なんとかならないのかなあって思います。

15/03/11 鮎風 遊

いいですね、すべてがキャベツ畑になれば。
渋谷だけじゃなく、東京中が。
それくらい東京は自然に戻るべきと思ってます。

そんな風景、一度見てみたい!

15/03/12 光石七

拝読しました。
確かに、渋谷も昔は田舎だったわけで……
今どきのギャル風のイザナミと真面目なイザナギの掛け合いがいいですね。
面白かったです。

15/03/17 kotonoha

草藍様、こんにちは。
拝読させていただきました。
結婚しない若者や結婚しても子供を作らない夫婦が増えてきました。
この国はどうなるのだろういつも心配しています。

このお話はイザナギとイザナミの言っている様にキャベツに人口を増やす大きなヒントが秘められているのかも知れません。
「清正の井戸」の水を使ってキャベツを栽培しましょう。

15/04/01 草愛やし美

>ナポレオンさん、お読みいただき嬉しいです、コメントを励みにし創作したいと思います、ありがとうございました。

渋谷も含め、日本での少子化をキャベツが救えばと願っています。昔、流行したキャベツ人形はどこへ行ったのでしょうね。結構、いいお値段してましたので、買わなかったというより、お顔が和風より洋風だったからと記憶しています。あの時、初めて西洋にはキャベツ畑で赤ちゃんが生まれる説を知りました。でも、どうしても「こうのとり」も捨てがたい私は、キャベツ畑で生まれた子をこうのとりが運べばいい、絶対運ぶに違いない──なんて思っていました。苦笑

>海見みみみさん、いつも読んでいただきコメント下さること、とても感謝しています。
現実にキャベツ畑に渋谷がなれば、面白いでしょうね──なんて言ってられないほどパニックになることでしょう。苦笑 コメントありがたいです、毎回、意欲いただいております、ありがとうございます。笑顔

>ドーナツさん、お立ち寄りくださり嬉しいです。
やはり、国の発展には農業ですよねえ、なるべく輸入に頼らないで自給自足できればいいなあと思いますが、狭い国土ですから、なかなか難しい問題だと思います。キャベツは現代は結構な収穫量のある作物のようです。少子化も解決すればと願います。コメントをありがとうございました。

>泡沫恋歌さん、やはりキャベツといえばお好み焼きですよねえ。苦笑 そういえば、数年前にキャベツが不作の時に、安いキャベツ焼き(キャベツしか入っていない120円くらいのお好み焼き)がなくなるのではないかと、凄く心配したものです。何とかやりくりして店は開いていましたが、赤字だったかもと思いますわ。コメントありがとうございました。励みにして頑張ります。

>滝沢朱音さん、ロックっぽいとは嬉しいコメントですね。私はロック風味はたぶん無理だと思っていましたので、驚きました。というか、ロック風味自体わかってないかもですが……。苦笑 (ロックってリズムあってクール?でそれでいてソウル?かなと理解 意味不かあ)
コメントありがとうございます。意欲にかえてまた創作励みたいです。

>そらの珊瑚さん、ですよねえ、よく見聞きする農作物の廃棄問題、悲しすぎます。一時、嬬恋でキャベツをトラクラーで轢いて潰してました、あれは切なかったです。作られた方々の胸の痛みはいかほどだったかと思います。
コメント嬉しいです、ありがとうございました。

>鮎風游さん、東京も大昔は畑多かったことでしょうね、大都会新宿の屋上中で畑を作るって計画あるかもですよ。屋上緑化作戦はかなりの部分で実施されていると聞いたことがあります。コメント感謝、拙作でも励んでこれからも書いていきたいです、ありがとうございました。

>光石七さん、コメントありがとうございます。読んでいただくことがほんとうに嬉しいことです。創作をしていまして、何よりの励みになります。いつも感謝しています。
神様もいまや、こんな風に会話しているかもしれません、なにしろ、世界のメディアがどんどん発達してますもの。苦笑

>kotonohaさん、お忙しいなかをいつも読みにきていただき、とても感謝しております。
少子化はほんとうに心配なことです。清正の井戸水でしたら、「虎の子」間違いなしの良いお子達ばかり生まれるではないかと思って使わせていただきました。コメント励みにしてまた創作していきたいです、ありがとうございました。

ログイン
アドセンス