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浅月庵さん

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嫉妬でダウンでプリーズ

15/03/05 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:1128

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 私が風邪で学校を休んでいる間に、社会科の河西先生がなぜか「Sit down」の発音をみんなにレクチャーしてたらしく、それに踏まえた小話がとても面白かったみたい。
 休み時間にクラスメイトが河西先生の口調を真似してるけど、私は一人取り残されて付いていけない。自分のいない間に面白いことが起こると悔しい、まさに“シット ダウン”だ。嫉妬なんて疲れるし、妬いてる自分がなんだか恥ずかしくて、気持ちが落ち込む。

 ......っていうのはなにも“河西先生のSit down”に限った話だけじゃない。
 私は同じクラスの禄太のことが好きなんだけど、最近、貴子と良い雰囲気になっているのが許せない。禄太は男女問わずみんなに優しいし、禄太のことが好きな女子は他にもいっぱいいると思う。貴子は勿論その中の一人で、この間の席替えで隣りになったのをいいことにイチャコラセッセと甘ったるい声で禄太にベッタリ。それに付き合ってあげてる(?)禄太はみんなに分け隔てなく優しいから仕方ない、って思うことにする。

 ーー放課後。いつも一緒に帰るメンバーは、委員会やピアノの習い事やらで都合が合わなく、私は一人寂しく下校の時間。外靴へ履き替え腰を上げると、禄太が息を切らして私の元へやって来る。
「萌乃さ、一緒に帰らん?」禄太にそう言われて、私は一瞬固まってしまう。「え?」
「禄太、ナンパかよ」「ヒューヒュー」なんて、バタバタと外靴に履き替えながら涼や明斗が冷やかしてくるけど、禄太は「違うよ。ちょっと萌乃に用があるんだ」と言う。すると、途端に二人は聞き分けが良くなり、そうっすかー。そしたら、また明日なー!なんて走って帰っていく。諒と明斗にしつこく茶化されない禄太の人柄もまた、みんなに愛されているなと感じる。

「それで、私に用って?」校門を抜けた辺りで私は、早速禄太に聞く。
「用ってほどのもんじゃないんだけどさ。萌乃、風邪で休んでたじゃん?」
「うん、それがどうかした?」“用ってほどのもんじゃないんだけど”の時点で、私の中に芽生えたほんの小さな期待は打ち砕かれる。はいはい、禄太はどうせ貴子のことが好きなんでしょ、わかってます。
「河西先生のSit downの話、まだ誰にも聞いてない?」
「うん、なんか盛り上がってるみたいだね。私はよくわかんないけど」
「それがめっちゃ面白いから萌乃にも教えたくてさ」禄太の純粋な笑顔を見て、本当に優しいな、と感じる。クラスの一員として、面白かったことを私にも共有させてくれようとする。そりゃあみんなに好かれるわけだ。

 なぁんてしみじみ思っていると、背後から視線を感じる。そーっと後ろを振り返ると、電柱の陰から貴子の姿が見える。禄太と一緒に帰るところを見られてたか。そりゃあ、この状況を快く思うはずないよね。

 そんな気配に感づくこともなく、禄太が話しを始める。
「みんなさ、前の時間が体育だったから席に着くの遅れてて、そしたら河西先生がなぜか英語で『Sit down Please』って言ったんだよ」「うんうん」「それでもみんなガヤガヤしてんの。したっけ、河西先生が大声でゆっくり『シット ダウ〜ン プリ〜ズ』って言ったら、みんな固まっちゃってさ」「なにその言い方?」「ねっ。したら河西先生がSit downとシット ダウンの違い分かりますか?なんてみんなに聞くわけ。全員ハテナだから、河西先生が黒板に『Sit down』と『Shit down』って二つ英語を書いたんだ」「んー?」私は禄太の話の続きも気になるし、背後で私たちを尾行している貴子のことも気になる。

「そしたら『Sit down』は“座って”って意味だけど、『Shit down』はウ◯コしなさいって意味なんだってさ! だから、スィッダンとシッダンの発音の違いには気をつけろよ。って、そこから発音講座の開始ってわけ。超ウケない?」と言われて、ちょっとー! せっかく二人きりなのに「ウ◯コ」とかお下品すぎませんか? ウ◯コでみんな爆笑って小学生かよ、いや実際小学生なんですけども、と一瞬思ったけど、私は見事ツボに入ったように、大げさに笑う。わざとお腹を抱えてヒーヒー笑う。すると、禄太もウケるよなって感じで、つられて笑い出す。
 
 ......私は大爆笑の“フリ”をしながら後ろをチラリ。すると、貴子の悔しそうな表情が目に映る。私が禄太と、とっても楽しそうに笑い合ってる雰囲気だけで、貴子からしたらまさに嫉妬の対象になる。それが例えウ◯コの話だったとしても。

 ーーちょっと諦めかけてたけど、やっぱり貴子だけ禄太と仲良くするのは許せないよ。
「座って」だか「ウ◯コして」だか知らないけど、貴子にも私と同じ気持ちを味わってほしい。
 今だけ貴子にも嫉妬で、ダウンで、プリーズをお見舞いする。ワッハッハ!


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このストーリーに関するコメント

15/03/05 海見みみみ

拝読させていただきました。
嫉妬とsitとshit、この三つが地口になっていてよく考えられたお話だなと思いました。
社会科の先生の話もうんちだけにウンチクとして面白いですし笑
この幼い恋心は果たしてどのような結末を迎えるのか。
つい彼らの将来を想像してしまいます。

15/03/06 須磨 円

読ませていただきました。
とてもユニークで、散りばめられている例の語句たちが目に入るたびに笑ってしまいました。
けれどどこか皮肉が利いていて、語り部である萌乃ちゃんは冷静に物事を判断しているように思えます。頭が良いのだろうなと人間性を想像してしまいました。その対比が面白いですね。
貴子ちゃんという存在もお話のスパイスとなって好きです。
素敵なお話、ありがとうございました。

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