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松山椋さん

地獄からやってきた文学青年です。結局名前元に戻しました。

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跋丸くんの跋文

15/02/27 コンテスト(テーマ):第七十八回 時空モノガタリ文学賞 【 嫉妬 】 コメント:14件 松山椋 閲覧数:13668

時空モノガタリからの選評

嫉妬丸出しの跋文、面白かったです。これだけ共通項の多い友人に芥川賞作家がいたら、普通は嫉妬してしまうものなのかもしれませんね。でも、この跋文のお陰で跋丸君の単行本自体を読んでみたくなりました。「犬を飼うという行為は果たして……」、「強盗に身ぐるみはがされ……」という内容、一体どんな小説だろう、ととても気になって仕方ないです(笑)。

時空モノガタリK

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 さて、私(松山)は跋丸昌也くんの第153回芥川賞受賞作品『狂気の太陽』単行本の跋文(あとがき・解説)をこれから書かせていただくわけですが、まずこの場を借りて跋丸くんの受賞に心からお祝い申し上げたいと思います。本当におめでとうございます。
ところで、受賞作単行本のあとがきを書くというのは大変重要な仕事なわけなのですが、なぜ無名作家である私にお鉢が回ってきたのか、読者諸賢はきっと不思議に思っているでしょう。実は私と跋丸くんは同じ年に同じ岐阜県で生まれ、同じ小中高に通いまたまた同じ京都の大学の政治科を卒業して、これまた同じ文筆活動で飯を食っている幼なじみというわけなんです。私と跋丸くんは同い年24歳なわけですが、かたや芥川賞作家、そして私はしがない同人作家、ということでいわば『志あれど金なし』の私に解説を書かせることによって意図的に跋丸くんの才能の非凡さを演出しようという出版社の汚い戦略なのでしょうね、私に仕事を回すということは。言っておきますけど私のほうが高尚な文学を書いてますからね。芥川賞を受賞すれば専業でも年収5000万円を超えるそうですが、私のように働きながら(えーっと、まあ工場で働いてます。刺身にタンポポを乗せる仕事なんだけど。)文学を書くほうがえらいに決まってるんです・・・。まあ、愚痴はこの辺にして『狂気の太陽』の作品論に入ります。

 まず目を引くのが冒頭のエピグラフ。シェイクスピアの『慢心は人間の最大の敵だ』という言葉が引用されています。この言葉ひとつで『狂気の太陽』全体を包括せんとする文学的な意味は・・・ないと思う。なぜ跋丸くんがこれを引用したかというと、たまたまシェイクスピア全集のこの言葉のページを持っていたからなんですね。ええ、私、跋丸くんが大学図書館の閲覧室で全集のこの言葉が載っているページをカミソリで切り取ってポケットに入れているところを見てしまったんです。法律に詳しい友達に話を聞いてみると、この行為は刑法261条器物損壊罪、露見すれば3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処される犯罪。ええ、跋丸くんが破った本をみなさんに見せてもいいんですが、まあ友達のよしみでやめておきます。読者のみなさんも警察に通報するのはやめてあげてくださいね。
次。21ページ2行目の、主人公である竜子と近所のおやじとの会話。犬を飼うという行為は果たして人間存在にどのような影響を及ぼすかという議論に、竜子が「あなたには、わかるわけがないわ。」と啖呵を切るシーンです。これによって含みを持たせ、物語の深遠さを演出する文学的な意味は・・・ない。私が考えるに竜子はトイレに行きたかっただけだと思いますね。ほらやっぱりそういう時は人と話してる余裕ないし。このあたりが真実でしょう。
そして43ページの食事シーン。料亭での会食が描写されているわけなんですが、どうもリアリティが足りない。高級感が演出されていない。なんでこうなったかというと跋丸くんが貧乏人だったからなんですね。学生時代に跋丸くんがブーの恋人(目はつり上がって口はやたら大きく、しかも太っているしょうもない女ですよ。)と学内のベンチに座ってなにか食べてるんで覗いてみたら190円の極貧弁当だったということがありまして、要するに彼は豪華な食事を食べ慣れていないからこのようなショボい描写になったんですね。かたや私はバイト先で気に入られてリーダーに登用されて時給5000円もらってましたから毎日学食でグランドリッチ定食食ってましたよ。1食3000円でした。1時間働けば食べられますね。ああそう、バイトは卒業後にこっちから辞めてやりました。クビになったわけじゃないよ。
そして最後。141ページの、強盗に身ぐるみをはがされた全裸の竜子が明け方の街へ向かって歩き出すラストシーン。読者に強い印象を持たせ読後の余韻に浸らせる意味・・・ではない。きっと全裸のままで満員電車に乗るんでしょう。はい、竜子は痴女ですよ。絶対痴女なんだと思いますね。間違いない。きっとそうだ。

さて、作品論は以上です。最後に私の著書の宣伝をさせてください。11月に私の初の自費出版作品『岐阜羽島の狂った果実』がメケメケ社より刊行されます。定価は、えーっと、4800円。まあ1時間バイトすれば買えますよ。跋丸くんの本書みたいに1冊1300円の安物じゃありません。なんたって私は跋丸くんとは格が違うわけなんですから。ええ、みなさん、絶対に買ってください。本当に面白いですから。間違いないですから。
ふぅ、長くなりましたがこのあたりで私松山は筆をおきます。粗末な跋文でしたが、読んでいただいてありがとうございます。それと、今度から跋丸くんの本は図書館で借りるようにするんだぜ。絶対買うなよ。―――平成27年9月、作家。


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このストーリーに関するコメント

15/02/27 海見みみみ

拝読させていただきました。
作中の松山さんの嫉妬がユーモアと共に伝わってきて笑わせてもらいました。
こんなあとがきが載っていたら余韻台無しですね。
ある意味松山さんの作戦通りです。
しかし松山さんの4800円する本が売れるかと言うと……です笑
とても愉快な作品をありがとうございました。

15/02/27 松山椋

海見みみみさま

読んでいただいてありがとうございます!嬉しいです!
テーマが「嫉妬」ということで考えたあげくこのような形式の小説を書いていみました。実際にこんな跋文を書いたら文壇から干されてしまいますね笑
最後の宣伝の部分も主人公である松山のいやらしさを演出するために入れてみました。しかし、本当に僕の著作を宣伝しているようにモノガタリ運営の方にとられてしまわないかと不安になってきました。運営の方、メケメケ社なんて出版社ありませんし僕には自費出版なんかする資金的余裕なんかありませんよ!フィクションです!笑
いやはや、コメントをいただけて嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

15/02/28 水鴨 莢

読ませていただきました。
もう少し嫉妬心や攻撃性みたいなのが巧妙に隠されていて、行間からにじみで
てる書き手の葛藤が悲しい・・・って感じのほうが個人的には好きだったかも
と思いました。
こういうしょうもない人間ってきらいじゃないんですけど、悲哀の強いほうが
より好めるものでして。いや、まったく贅沢な注文なんですけども。
個人の意見にすぎないのでお聞き流しください。
とはいえこれはこれで面白く読めた作品でした。

15/03/03 松山椋

水鴨十一さま

返信大変遅れてしまい申し訳ありませんでした。以後は迅速な返信を心がけますので、どうかこれからもよろしくお願いいたします。

おっしゃる通りです。行間からにじみ出るような嫉妬心を演出したかったのですが、なにぶん初心者ゆえこのようなわかりやすすぎる表現になってしまいました。水鴨さまのおっしゃられるようなものもいずれ力量をつけ、チャレンジしてみます。読んでくださりありがとうございました!

15/03/03 松山椋

リュウの助さま

返信大変遅れてしまい申し訳ありませんでした。これからは素早い返信を心がけますゆえ、どうか今後ともよろしくお願いいたします。

うれしいです!大型新人なんて・・・まだ小説書き始めの素人ですが、このサイトでいろいろな方の小説を読ませていただいて成長したいです。またちょくちょく投稿させていただこうと思っていますので是非今後ともよろしくお願いします。読んでいただき、ありがとうございました!

15/03/12 滝沢朱音

前作につづいて、ついつい読ませていただきました。
面白い!!!羨ましくて嫉妬してしまいます(笑)
うまくいえないけど、頭で考えて書ける小説ではないなと。
すごいなぁ…タイトルのセンスも抜群だと思いました。

15/03/12 ナポレオン

拝読いたしました。
前作同様とても面白かったです!
狂気的でありながらユーモラスであまり毒のない印象を受けました。松山くん実は跋丸くんのこと少し好きなのでは!?

15/03/15 松山椋

滝沢朱音さま
読んでいただきありがとうございます!嬉しいです!
そんな、羨ましいなんて・・・照れてしまいます。
これからもよろしくお願いします!

15/03/15 松山椋

滝沢朱音さま
読んでいただきありがとうございます!嬉しいです!
そんな、羨ましいなんて・・・照れてしまいます。
これからもよろしくお願いします!

15/03/15 松山椋

ナポレオンさま
読んでいただきありがとうございます!嬉しいです。
確かに意図的に毒を抜きました。みなさんに楽しんでいただけるように工夫してみました。
松山は跋丸くんのこと好きですよ!
ありがとうございました!

15/03/20 草愛やし美

松山椋さん、拝読しました。

ですよねえ、芥川賞作家ですから作家としては、嫉妬の極みです。ここまでスカッと書ける技量が素晴らしい。後書きに極楽的地獄を垣間見たような面白さで楽しめました。

1冊、4800円の自費出版本、時給5千円、笑いをこらえながら夜中に読み終えました。 今、午前1時です、どうでもいいことでしょうが、書き添えますね。苦笑

15/03/23 松山椋

草藍さま
読んでいただき、ありがとうございます!うれしいです!
いやはや、僕はどうもくだらないギャグにいつも走ってしまう癖があり、本当に恥ずかしいです。自給5000円・・・。
真夜中、深夜のテンションでしたら笑っていただけるかもしれません。これからも小説に磨きをかけていきます。
本当にありがとうございました!

15/03/24 光石七

拝読しました。
笑わせていただきました。「文学的な意味は……ない」とか、そのあとの考察(?)とか、ラストの宣伝とか、ここまでされたら「お見事」としか言いようがありません。
案外このあとがきがウケて、跋丸くんの本のあとがきは全部松山さん担当になったりして。
面白かったです。

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